ぎょう ギャウ【行】
[1] 〘名〙
① 仏語。
(イ) (saṃskā
ra の
訳語。
造作(ぞうさ)の意)
十二因縁の一つで、
善悪のいっさいの
行為をいう。転じて、いっさいの移り変わる存在の意にも用いる。
※
秘蔵宝鑰(830頃)中「煩悩生
因縁者謂不正思惟。以
レ此為
二其因
一無明為
レ縁。無明為
レ因行為
レ縁。行為
レ因識為
レ縁」
(ロ) (cari
ta の訳語。行為、実践の意) 悟りに到達するための
修行。
※
法華義疏(7C前)一「但就
二第四嘆徳
一開為
レ四。第一正嘆徳。第二従
二供養無量
一以下嘆
レ行。第三従
二以慈修身
一以下嘆
レ体。第四従
二名称普聞
一以下嘆
レ名」
※
平家(13C前)五「那智ごもりせんとしけるが、行の心みに、きこゆる滝にしばらくうたれてみんとて」
(ハ) (gamana の訳語) 住、坐、臥と共に
四威儀の一つで、歩くこと。〔
観経疏‐散善義〕
② 令制で
官位を称する際、
官職と位階が相当せず、位階が官職より高すぎる場合、位階と官職名の間に挿入する語。→
守(しゅ)。
※令義解(718)
選叙「凡任
二内外文武官
一而本位有
二高下
一者。若

事卑為
レ行。高為
レ守」
※尋常小学
読本(1887)〈文部省〉四「
一行の鴈、田に下りんとして、に
はかにおどろき、行をみだして飛び去るを見たり」
④ 文字の縦または横の並び。くだり。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
⑥
雅楽の楽器、笙
(しょう)の管名。また、その管の出す音名で、高いイ音。さらに、この音を根音とした五つの音で構成された一つの
和音の名をもいう。
⑦ 雅楽の
琵琶で、第三弦の放弦音。
楽譜では「行」の扁の略記である「ク」を書く。
※才葉抄(1177)「真の筆は立つべき也。行の筆はひらむべき也」
⑩ (
行書のように柔らかみがあるところからいう) 神伝流泳法の一つ。
[2] 〘接尾〙 文字などの縦または横の並びの数を数えるのに用いる。
※夜鶴庭訓抄(懐中抄)(1170頃)「歌を書く様。
二行ならば五七五 一行
七七 一行
三行ならば五七 一行 五七 一行 七 一行」
こう カウ【行】
[1] 〘名〙
① 行くこと。出かけること。旅。旅ゆくみち。たびだち。
※曾我物語(南北朝頃)四「千里のかうは、一歩よりはじまる、といふ老子のをしへも」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「暗夜途に迷て殆んど行(カウ)を失し」 〔孟子‐公孫丑・下〕
② 昔の中国における楽曲の名称。また、その歌詞である楽府(がふ)の題名に用いられ、のち詩題に多く用いられた。「短歌行」「琵琶行」など。〔文体明弁‐楽府〕
③ つらなること。また、そのもの。特に、文字などの縦または横のならび。連(つら)。列(れつ)。くだり。〔温故知新書(1484)〕
※中華若木詩抄(1520頃)中「其なりは、旅雁の飛をくれて、行をなさずして、独り雲路に迷に似たそ」 〔春秋左伝‐隠公一一年〕
④ おこない。ふるまい。行動。行為。
※太平記(14C後)三〇「元来仁者の行を借って、世の譏(そし)りを憚(はばか)る人也ければ」
⑤ 中国、隋・唐時代、都市内の商業区域に業種ごとに集められた同業商店のならびをいう。「銀行」「薬行」などと使う。
⑥ 中国、宋以後、都市の商人の同業組合。狭義に「牙行(がこう)」、すなわち仲買商をさすこともある。
⑦ 位と官とを併せ示すとき、官名に冠して、位が高く、官の低いことを表わす。ぎょう。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「従五位下、行(カウ)対馬嶋守」
[2] 〘接尾〙
① 文字や列などのつらなりを数えるのに用いる。ごう。
※名語記(1275)四「ふみの一かう二かう如何。カウは行也」
② 銀行の数を数えるのに用いる。
※法人資本主義の構造(1975)〈奥村宏〉三「短期では富士銀行、第一勧銀、三和銀行の三行が主力で」
おこな・う おこなふ【行】
[1] 〘他ワ五(ハ四)〙
① 順序、方式にしたがって、しごとをする。挙行する。実行する。
※書紀(720)天武一一年一二月(北野本訓)「然る後に其の状を斟酌(はか)りて、処分(オコナヘ)。因りて官判を承けよ」
② 修行する。ことに仏道修行をする。勤行(ごんぎょう)をする。
※書紀(720)天智一〇年一〇月(北野本訓)「吉野に之(まか)りて、脩行(オコナハ)む、と請したまふ」
③ あたえる。配分する。わりあてる。
※土左(935頃)承平五年二月九日「このあひだにわだのとまりのあかれのところといふところあり。米(よね)、魚(いを)など乞(こ)へば、おこなひつ」
④ 食事をする。食べる。
※実隆公記‐長享二年(1488)三月二一日「早朝行二朝膳一、進発可参江州御陣之由也」
⑤ 処理する。指図する。
※宇治拾遺(1221頃)一〇「頭中将、『さりとてあるべきことならず。これ、諸司の下部めして、かきいでよ』とおこなひ給」
⑥ 処罰する。制裁する。助動詞「る」を伴った受身の形も多い。
※説経節・説経さんせう太夫(佐渡七太夫正本)(1656)上「此事ぢとう聞召、しょせんやどかす物有ならば、となり三げん、ざいくゎにおこなふべきと有により」
⑦ 女を自由にする。手ごめにする。
※滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)三「ここには女房がないそうだから、きゃつめをおこなってゐるに違ひはねへ」
[2] 〘自ハ四〙 順序どおり進行する。
※徒然草(1331頃)一五五「生・住・異・滅の移り変る実(まこと)の大事は、たけき河のみなぎり流るるが如し、暫(しばし)も滞(とどこほ)らず、ただちにおこなひゆくものなり」
おこない おこなひ【行】
〘名〙 (動詞「おこなう(行)」の連用形の名詞化)
① おこなうこと。行動。ふるまい。
※書紀(720)允恭八年二月・歌謡「我が夫子(せこ)が 来べき宵なり ささがねの 蜘蛛(くも)の於虚奈比(オコナヒ)今宵著(しるし)も」
② 仏道修行。勤行(ごんぎょう)。
※書紀(720)天智一〇年一〇月(北野本訓)「吉野に之(まか)りて、脩行(オコナヒ)せむ、と請したまふ」
③ 特に、年頭の仏事勤行(修正月)。
※蜻蛉(974頃)下「などいふほどに、おこなひのほどもすぎぬ」
④ 神事をつとめること。
※讚岐典侍(1108頃)上「あしたの御おこなひ、夕の御笛の音」
⑤ 年頭または春先に行なわれる祈祷行事。近畿地方を中心にいう。もと農事祈願の神事であったが、仏教の感化を受けて修正会(しゅしょうえ)や修二会(しゅにえ)の行法に似たものがおこなわれている。寺や堂、または村人が当屋(とうや)組織でおこなう。
⑥ 道徳的な見地から見た人の行状。身持ち。品行。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※開化のはなし(1879)〈辻弘想〉上「表面(うはべ)の虚飾もなく行状(オコナヒ)正しきをこそ文明とも開化とも云へる事でござる」
い・ける【行】
〘カ下一〙 (「いく(行)」の可能動詞)
① 行くことができる。
※和英語林集成(初版)(1867)「コノ ミチワ ikeru(イケル)カ」
② することができる。やっていくことができる。特に、うまくできる。じょうずにやれる。→
いけもしない。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「それ、渋と脂とに固まる松。いけるものじゃない」
※婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「学位は持っちゃ居らんけれど、独逸のいけるのは僕が知ってるからね」
③ なかなかいいものである。多く、美しい、おいしい、すばらしいなどの意に用いる。→
いけもしない。
※洒落本・辰巳之園(1770)「『すかねヱ子だがねヱ』『まだなれねヱからさ』『いけるのじゃねヱ』」
※鱧の皮(1914)〈上司小剣〉四「鱧の皮、細う切って、二杯酢にして一晩ぐらゐ漬けとくと、温飯(ぬくめし)に載せて一寸いけるさかいな」
④ 酒が、相当の量飲める。また、食物が相当の量食べられる。→
いける口。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「未だ腹(おなか)が能(いい)かと思って、食て見たら、又いける」
ぎょう‐・ずる ギャウ‥【行】
〘他サ変〙 ぎゃう・ず 〘他サ変〙
① 物事を行なう。する。ふるまう。
※今昔(1120頃か)二九「然て媱(いん)を行じつる時に」
② 仏道などの修行をする。
※観智院本三宝絵(984)中「孔雀王咒をならひ行じて」
③ 行く。歩く。
※今昔(1120頃か)一「四方に各七歩を行(ぎゃう)ぜさせ奉る」
ゆ・ける【行】
〘カ下一〙 (「ゆく(行)」の可能動詞)
① 行くことができる。また、することができる。いける。
※受胎(1947)〈井上友一郎〉「『そいで、飯が食てゆけるんか』『そら、あかん。当分まだこっちゃから持ち出しや』」
② 酒が相当の量飲める。また、食べ物が相当の量食べられる。いける。
※歌舞伎・傾城魔術冠(1766)二幕「この辛子漬では、何杯も行(ユ)ける」
いき【行】
〘名〙 (動詞「いく(行)」の連用形の名詞化)
① 行くこと。また、出て行く時。行く途中の道。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)五「いきに騒でへこたれる野かけ道」
② 行く先。
※浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)四「衒(かたら)れた金のいきは、詮義しぬいて御損はかけぬ」
ごう ガウ【行】
[1] 〘名〙 縫い合わせて袈裟を作る細長い布。
※玉塵抄(1563)一六「沙彌の袈裟わ、がうも条もないぞ」
※天草本平家(1592)一「チュウモン ノ ラウ ニ nigǒ(ニガウ) ニ チャクザ セラレタ」
ゆこ【行】
動詞「ゆく(行)」の連体形に当たる上代東国方言。
※万葉(8C後)一四・三五四一「崩岸辺(あずへ)から駒の由胡(ユコ)のす危(あや)はども人妻児ろを目(ま)ゆかせらふも」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「行」の意味・読み・例文・類語
ぎょう〔ギヤウ〕【行】
[名]
1 文字などの、縦または横の並び。くだり。「行を改める」「か行う段」
2 仏語。
㋐《〈梵〉saṃskāraの訳》十二因縁の一。過去に身・口・意の三業によってなした善悪すべての行い。
㋑《〈梵〉saṃskṛtaの訳》因縁によって作られた、一切の無常な存在。
㋒《〈梵〉carita, caryāの訳》僧や修験者の修行。
㋓《〈梵〉gamanaの訳》住・座・臥とともに四儀の一。歩くこと。
3 哲学で、行為。実践。
4 数学で、行列または行列式で横の並び。
5 表計算ソフトやリレーショナルデータベースにおける、横一列のデータの単位。複数のデータの組み合わせをひとまとめにしたもの。ロー。⇔列。
6 「行書」の略。「楷、行、草」
7 律令制で、位官を連ねて書く際、位階が高く官職が低いときに位官の間に置いた語。⇔守。
「正三位兼―左近衛大将」〈宇津保・内侍督〉
[接尾]助数詞。文字などの縦または横の並びの数をかぞえるのに用いる。「16行目」
くだり【▽行】
《「下り」と同語源》
[名]
1 着物の縦のすじ。
「袂の―まよひ来にけり」〈万・三四五三〉
2 上から下までの一列。文章などの行。
「―のほど、端ざまに筋かひて」〈源・常夏〉
[接尾]助数詞。文章の行を数えるのに用いる。「三行半」
こう〔カウ〕【行】
[名]
1 どこかへ行くこと。旅。「行をともにする」「千里の行も一歩より起こる」
2 人のすること。おこない。ふるまい。行動。
3 楽府の一体。もとは楽曲の意。唐代以降は、長編の叙事詩的なものが多い。「琵琶行」
4 中国の隋・唐時代、営業を許された同種の商店が集中している区域。
5 中国で、唐・宋以後発達した業種別の商人組合。西洋のギルドに類似。
[接尾]旅に行くことの意を表す。「単独行」「逃避行」
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行
こう
中国で商人ギルド、また商店の業種をさす。日本の銀行という語はこれに由来する。中国ではすでに戦国(前403~前221)のころ、各地の市場地で肆(し)、次(じ)、行列(こうれつ)などの名で同業商店が軒を並べる習慣が生じた。秦(しん)・漢から唐まで国の商業統制の強い時期に、都市に置かれた市(し)で、こうした習慣をもとに魚行、肉行、衣行、金銀行などが配列され、行老、行首が選ばれ、成員の行戸(こうこ)、行人(こうじん)を統率する組織があった。唐・宋(そう)の変革期に国の統制が緩むと、自律性と競合性を増した行は、実質的にギルドに転生し、価格統制、品質管理、徒弟店員の規律、対官折衝、福祉、祭神などの活動を多彩に行うようになった。宋代では行役(こうえき)という官庁用度の納入が有力な行に課されていたが、明(みん)・清(しん)時代になると、辺地の大商業都市では少数の有力な行がギルド・マーチャントをつくり、防衛を含む市政を牛耳(ぎゅうじ)るようになった。広東(カントン)の公行(こうこう)、張家口の保正行(ほせいこう)、台南の三郊(さんこう)、湖南の十館首士、重慶の八省会館などである。
[斯波義信]
『加藤繁著『唐宋時代の商人組合「行」を論じて清代の会館に及ぶ』(『支那経済史考証 上』所収・東洋文庫)』
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行
こう
hang
中国の商人組織。漢以来,都市の商業区域である市には,同業商店ごとの並び (列,肆) があり,この同業者の並びおよび仲間組織を唐代に行と呼んだ。行頭,行老が一般の行戸,行人を代表,管理する。行は長安で 220行,洛陽で 120行あったと伝えられる。宋代に入ると市の制度がくずれ,営業場所は自由となったが,行は同業組合的機能を強くして存続,官の必要とする物資の調達まで引受けるようになった。行が同業商人のギルド組織であったのに対し,手工業者もこれにならって同職ギルドを組織するようになり,これを作といった。近世になると仲買,問屋 (→牙行 ) のことを行と呼ぶのが一般化し,免許料 (牙税) を納官して官許の牙帖を給された商人とそのグループが行になった。有力な行組織はギルドとみてよく,広東貿易の特別御用商人団「公行」もその一種。
行
ぎょう
仏教用語。 (1) サンスクリット語 saṃskāraの訳。過去の行為の結果と,新たな状態を条件づける経験。特に十二因縁の第2にあたると解されることもある。また五蘊の第4にあたる。行蘊 (ぎょううん) に同じ。また「 (諸) 条件」または「条件づけられた (存在の) 状態」の意から,すべての,つくり上げられた存在を意味する。 (2) サンスクリット語 caryāの訳。身体的,あるいは言葉による,あるいは心理的な行為をいう。また,特に求道者である菩薩の行為 (あるいは修行) をも意味する。 (3) 浄土真宗では,阿弥陀仏の救済を信じて,念仏することをいう。
行
ぎょう
「こう」ともいう。律令制上,令 (りょう) には官位相当の定めがあるが,官位が相当しない人の位署書きの場合,位が高すぎるとき,位と官の間に加える字。官位相当の場合は,「大納言正三位」などと書くが,位が高い場合には,たとえば「従二位行大納言」というように書いた。
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行(こう)
①中国では古来法制的に,都市内の商業を商業区域(市)に限定して許し,時間,場所,営業を統制(市制)したため,市内部は同業商店別に区画され,この同業商店町を行と呼んだ。
②唐宋以降,市制が崩れると,都市内に散在する商人は,営業独占と互助の目的で商人組合を結成し,これを行と呼んだ。以後,行は商業の業種別に分化発達した。清の公行(こうこう)は一種の特許商人ギルドである。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
行【こう】
中国において隋唐以前,都市内での商業区域を同業商店ごとに区画した。その区画を〈行〉といい,薬行,酒行などと呼んだ。唐末以降は商業に対する国家の規制が崩壊するに及び,新たに商人たちが結成したギルド的な自主的組合をいう。これに対し手工業者組合を〈工〉または〈作〉といった。
→関連項目ギルド
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こう【行 háng】
中国で商人組合をさし,また商店,商社名をも意味する語。最近では商店名は記とか号とか呼ぶ方が多い。起源は,戦国期の市で,同業商店が集まったものを列とか肆(し)とか廛(てん)とか称したのに始まるという。列・肆が集合する慣行は,秦・漢時代に先秦の市を県に再編,整理したときにもひきつがれ,各県城の一郭に官設の市を設け,商人を市籍に登記して市租を徴するかたわら,市の町並みを整えて同業商工業者を業種別に配列した。
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行
こう
中国の同業者組合
中国の都市では,秦・漢代から同業商店が集まって肆 (し) ・列などと呼ばれたが,隋・唐では商業地域を市と呼んだ。市は職種別の同業組合であるいくつかの行で構成され,長安には肉行・鉄行など220行があった。宋代には市制がくずれ,行はギルド的同業組合として広汎に発展した。なお清代には幇 (ぱん) と呼ばれた。
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行
ワープロソフトや表計算ソフトにおける、ページ上の横方向の並び。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
世界大百科事典内の行の言及
【市】より
…市は,交換の比率が需要と供給によって決定される場であるが,交換原理が卓越して,ものに限らず土地・労働力も商品化され取引されるようになり,価格決定の場としての市場体系が,社会をあるいは経済を決定するようになったのが近代西欧的な社会である。 アフリカ社会の市の人類学的研究を行ったボハナンPaul BohannanとダルトンGeorge Daltonは,売買取引の特定の場である〈市場market place〉と,需給関係によって価格が決定される〈市場交換原理principle of market exchange〉とを区別し,近代社会以外にも市場交換原理の作用する場合が見いだされることを指摘し,場としての市と市場交換原理が果たす役割に基づいて,社会を次の三つに分類した。(1)市場欠如型社会 場としての市がなく,市場交換原理も作用するとすれば個人間にあらわれるにすぎない。…
【ギルド】より
…古ゲルマン語には供犠,貢納,税を意味したゲルトgild(貨幣)の語があり,それと同語源のギルドは〈貢納・供犠団体Zahl‐ und Opfergemeinschaft〉であったと考えられる。779年のヘルスタールの勅令においてカール大帝が契約ギルドを禁止し,契約を結ぶことなしに難破や火災の際に相互扶助を行う団体のみ承認している。これはフランク族におけるギルドに関する最古の文書史料であり,ギルドが相互扶助団体であったことを示している。…
【商業】より
…漢字の〈商〉の第一義は,〈はかる〉であるが,日本語の〈あきない〉も,収穫の秋に飽き満ちた作物を互いに交換すること,すなわち交換を営むことを意味するとされている。いずれにしても,商の現象は,恵むこと,施すこと,盗むこと,奪うことではなく,己の物を他に与え,同時に他の物を己に受けて,自他ともに満足するところの取引行為を表している。商が取引行為にあるならば,商すなわち取引を業とするのが商業となる。…
【宋】より
…しかし太平になれた政府は,これに対して無為無策であったから,社会矛盾は年とともにはげしくなった。そこで1043年,范仲淹(はんちゆうえん),欧陽修らは仁宗の信任をえて行政改革を試みたが,多くの反対にあってわずか1年で挫折した。事態がいっこうに改善されないうえに,英宗朝になると,英宗の生父を礼法上いかに処遇するかをめぐって,朝廷を二分する大論議(濮議(ぼくぎ))が起こり,いたずらに政治の空白が生じた。…
【坊郭戸】より
…農村と同様,主戸・客戸に分けられ,主戸は10等級に戸等化された。屋税・地税など城郭の賦のほか,官庁の必要物資を調達する科配,王安石の新法による免行銭や助役銭を負担した。州県城郭内の商業地域に実施されていた坊制(坊)が宋に入って崩壊し,営業上の地域・時間の制約がなくなると,商工業者は同業商人組合〈行(こう)〉や職人組合〈作〉を組織した。…
※「行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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