表意文字(読み)ひょういもじ

精選版 日本国語大辞典 「表意文字」の意味・読み・例文・類語

ひょうい‐もじ ヘウイ‥【表意文字】

〘名〙 ことばを主として意味の面からとらえて、一定の意味をもつ語のそれぞれに対応させた文字。絵画文字・象形文字漢字の類で、その字形には、事物形象をかたどったもの、符丁的な図形を用いたもの、またそれらを組み合わせたもの、それらに表音的な符号を添えたものなどがある。意字表音文字に対していう。
※赤えんぴつ(1956)〈加藤康司活字と取組む人「何といっても表意文字である漢字はわずらわしい」

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デジタル大辞泉 「表意文字」の意味・読み・例文・類語

ひょうい‐もじ〔ヘウイ‐〕【表意文字】

文字の分類の一。一つ一つの字が一定の意味をもっている文字。漢字や古代エジプトの象形文字など。意字。→表音文字
[類語]文字文字もんじ鳥跡ちょうせき鳥の跡用字表記点画てんかくレター邦字ローマ字アルファベットハングル梵字ぼんじ大文字小文字頭文字イニシャル英字数字漢字仮名真名片仮名平仮名万葉仮名字母表音文字音字意字象形文字楔形くさびがた文字甲骨文

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「表意文字」の意味・わかりやすい解説

表意文字
ひょういもじ

各字の示す単位が語形段階にとどまり、それよりさらに細かく分割して示すことのない文字体系。いわゆる象形文字hieroglyph、すなわちシュメール文字エジプト文字に加えて漢字もそれにあたるとされる。ところが、漢字は一面からみれば、音節文字である。漢語の基本語彙(ごい)はすべて一音節語で、したがって漢字の各字は音としては1音節を表示する(ゲルブI. J. Gelbのいう表音文字である)。しかし、古代文字の解読者たちは、漢字やシュメール文字やエジプト文字の字源の表意的な特徴をとらえて、とくに表意文字ideographとよんだのである。それに伴って表音的な特徴をも認め、表音文字phonographとした。それらは、古代文字の体系のなかで字源のあり方を対比させたものである。後漢(ごかん)の許慎が『説文(せつもん)解字』に示した字源説、六書(りくしょ)のうち、象形・指示を「文(すがた)」とし、形声・会意を「字(とりあわせ)」とする。さらに、転注は「文」や会意とともに表意に、仮借(かしゃ)は形声とともに表音にあたり、表音が圧倒的に多い。しかも、表意文字も語を表す限りにおいて表音機能を併せ維持している。しいて純粋な表意文字を求めるなら、文字以前の絵文字pictographの段階に立ち戻らなければなるまい。文字ともなれば、すでに、(a)一定の語形との結び付きと、(b)表音的な当て字(すなわち仮借)とに踏み込んでいるからである。

[日下部文夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「表意文字」の意味・わかりやすい解説

表意文字
ひょういもじ
ideogram

広い意味では,事物の概念を表わす文字をいう。厳密な意味では文字は言語単位に対応するものであるから,絵文字などは含まれない。この場合の言語単位とはほとんどの場合単語なので,その観点から表語文字ともいう。シュメール (スメリア) 文字が,知られるかぎり最古の表意文字で,そのほかエジプトの象形文字,ヒッタイト象形文字,中国の漢字がよく知られている。エラムの原始エラム文字 (前 3000~2200) ,インダス川流域で発見された原始インド文字 (前 2200) ,クレタ島などのクレタ象形文字 (前 2000~1200) も表意文字であるが,解読は完成されていない。これら表意文字は,程度の差はあってもすべて表音主義 (→表音文字 ) も併用している。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「表意文字」の解説

表意文字(ひょういもじ)
ideographs

表語文字ともいう。漢字ヒエログリフ楔形文字,古代アメリカ文字のように,絵文字から発生し語の意味を表現する文字。表意文字のみで一つの言語を表記しつくすのは困難なので,表意文字の一部は表音的に運用されるようになり,やがて表意文字の字形を母胎とする表音文字の体系(アルファベット,仮名など)が生まれた。ただしこの最後の過程は,表意文字の発生地ではなく周辺部において起こった。

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世界大百科事典 第2版 「表意文字」の意味・わかりやすい解説

ひょういもじ【表意文字】

絵文字が発展して象形文字になり,ついで1字形が言葉の一つの概念あるいは一つの意味単位に対応する段階になって,表意文字は成立した。漢字は代表的な表意文字であるが,多くの場合1字形が1単語を表記するため,表語文字logogramとも呼ばれる。表意文字は,言葉の意味単位を表記する点で,音声面を書き表す表音文字に対立する。一方,象形文字と呼ぶのは,字形の作り方から分類した名称で,必ずしも象形文字すなわち表意文字とは限らない。

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百科事典マイペディア 「表意文字」の意味・わかりやすい解説

表意文字【ひょういもじ】

漢字や象形文字などのように,意味を表す機能を強くもっている文字。表音文字の対。絵文字から発達したもの。1字が1語を表すことが多いので,表語文字,あるいは単語文字と呼ばれることもある。→文字
→関連項目漢字

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旺文社世界史事典 三訂版 「表意文字」の解説

表意文字
ひょういもじ
ideograph

1字で意味を表している文字
事物の形を簡略化して眼で理解させるため,絵文字から発達した。エジプト文字・楔形 (くさびがた) 文字・漢字・マヤ文字などが有名。

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世界大百科事典内の表意文字の言及

【漢字】より

…過去3000年にわたって同じ文字が断絶することなく用いられてきたことは,中国文化の特異な一面を物語っている。
【漢字の特質】
 通説によれば漢字は他の古代文字と同じく表意文字ideographの段階にあるといわれる。表意文字とは1字がある音を表す表音文字に対して,1字がある観念ideaを表す文字で,たとえば漢字の〈日〉は太陽の観念を表すようなものである。…

【文字】より

…文字が(音声)言語を表記するものであるといわれるのはこのような意味においてである。したがって,文字の分類として常識的に行われている〈表意文字〉と〈表音文字〉との別は,後にも述べるように,〈文字〉の性質を正しく表すものといえない。表意的とか表音的とかいう性質は体系としての〈文字〉についてみられるのではなくて,それぞれの体系を構成している個々の要素である〈字〉についていわれることなのである。…

※「表意文字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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