精選版 日本国語大辞典 「袖」の意味・読み・例文・類語
そ‐で【袖】

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元来、衣手(そで)であり、外手(そで)であるともいう。衣服の身頃(みごろ)の外にあって腕を覆う部分をいい、別に袂(たもと)ともいう。たもとは元来、手元(たもと)からきている。また袖の字は、通す意味の抽(ぬく)からきており、衣の手を通す部分の意、袂の夬(けつ)はひらく意からきており、衣の口のひらいているところの意味とされる。洋装用語ではスリーブである。
[石山 彰]
(1)長袖 袂袖ともいい、広袖、筒袖に対し、袖口下を縫い合わせたものをいう。広義には振袖などの長い袖も含まれるが、普通は狭義に、女物の袖丈50センチメートル内外の袖をさす。若い女性用、訪問着などは5~10センチメートル長くする。(2)振袖 大振袖は花嫁用で袖丈は115センチメートル内外。中振袖105センチメートル内外、小振袖85センチメートル内外、未婚女子の正装用。(3)元禄(げんろく)袖 江戸時代初期から用いられた大きい丸みの袖で、明治になってこの名がついた。女性の日常着用は袖丈45センチメートル内外。また女児用のもの。(4)留袖 詰(つめ)袖ともいう。既婚女性は振袖の丈を短くし、脇(わき)あきを詰めたのでこの名がある。その後、帯幅が広くなり、袖付けがつれないように、身八つ口をあけて振りのある袖にしたが、この名称だけが残り、黒地五つ紋付、江戸褄(づま)模様の礼装をさす名称となった。(5)広袖 ひら袖ともいう。袖口は袖丈全部あけた袖。新生児用肌着・長着、半纏(はんてん)、長襦袢(じゅばん)、半襦袢、丹前、夜着などの袖である。女性用襦袢は振り八つ口をあけ、男性用は人形(にんぎょう)(袖付けから下の縫いふさいだ部分)がつく。(6)角(かく)袖 丸みの小さい、または角型の袖。男性用の長着の袖には人形があり、羽織は人形がなく、袖丈全部が身頃につく。防寒用の角袖外套(がいとう)の袖は、袖付けが曲線になっている。(7)筒袖 袖口下がなく、袖下が斜直線になっている。斜直線でなく、緩やかな曲線になっているものを、舟底袖または薙刀(なぎなた)袖という。男児用と男女仕事着用。(8)細袖・鉄砲袖 袖丈が短く細長い形。袖付け止まりに正方形の襠(まち)がつく。手首のところにあきをつくり、こはぜ、ボタンがけにする。仕事着用。(9)巻袖 もじり袖、むきみや袖、かもや袖ともいい、後ろ袖の一部を前袖下に三角に折り上げたもの。仕事着用。(10)半幅袖 袖幅を半幅でつくったもので仕事着用、肌繻袢用。(11)鯉口(こいくち) 袖口を補強のため別布でくるみ、覆輪(ふくりん)をとったもの。労働着用。
[岡野和子]
古墳時代の袖は人物埴輪(はにわ)にみられるような北方系の筒袖であった。これはその後も、庶民の労働着として、引き続き着られている。奈良時代は唐風を取り入れた衣服形態である。儀式用の礼服(らいふく)は大袖ともいい、袖丈全部が袖口あきとなっていて、袖付けの下方が丸くくられている。出仕用の朝服は筒袖で、幅広の奥袖に鰭(はた)袖を縫いたし、裄(ゆき)が非常に長い。平安時代の中期ごろから国風化した装束は、寛裕、長大である。公家(くげ)の女子は晴(はれ)のとき、女房装束の単(ひとえ)、袿(うちき)、打衣(うちぎぬ)、表着(うわぎ)など、いずれも丈長の広袖となった。男子束帯の袍(ほう)の袖も同様である。
鎌倉時代に勢力を得た武家の服装は活動性が重視され、しだいに格式あるものとなった。狩衣(かりぎぬ)、直垂(ひたたれ)など広袖の袖口には袖括(そでぐくり)がつけられ、必要に応じて、これを絞って用い、大紋には露(つゆ)のみがある。また袖付け止まりや鰭袖の縫い目には補強のため菊綴(きくとじ)がつけられ、のちには装飾化した。室町時代になると、武家の女子は袴(はかま)を略し、小袖に帯をつける着流しの服装となり、筒袖は袂袖に変化した。一方経済力をもつに至った庶民の間にも、筒袖から、薙刀袖、元禄袖、振袖が広まり、桃山時代から江戸初期にかけては、1尺5寸(約57センチメートル)の振袖が未婚の女子に着られた。これはのちにさらに丈長となり、大振袖、中振袖が生まれた。帯との関係で振り八つ口があけられ、脇明(わきあけ)小袖と名づけられ、これに対して既婚者には留袖、脇詰(わきつめ)小袖が用いられた。元禄時代には明治になって元禄袖といわれた丸袖が流行し、さらに後期になると茶碗(ちゃわん)袖や銭丸(ぜにまる)も生まれた。男子には人形がついた角袖、女子は振り八つ口をあけた袖を用いるようになり、現在に至っている。
[岡野和子]
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