世界大百科事典 第2版 「裁かるるジャンヌ」の意味・わかりやすい解説
さばかるるジャンヌ【裁かるるジャンヌ La Passion de Jeanne d’Arc】
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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フランス映画。1928年作品。29年(昭和4)日本公開。監督はデンマークのカール・テオドール・ドライヤー。主演はフランスの舞台女優ファルコネッティ。オルレアンの少女ジャンヌ・ダルクの奇跡と宗教裁判を扱った芸術作品は多いが、この映画は裁判の法廷と処刑のいわゆる「受難」の場面に限られ、しかも画面は大写しの連続に終始する、ハンガリー出身のルドルフ・マテの撮影は、多様なカメラ・アングルで豊かな構図と優れたモンタージュによってスタイルを統一し、迫力に富み、見る者を圧倒する。セットの法廷と刑場の漆食(しっくい)をすべてピンク色に塗って撮影し、人間の肌との微妙なコントラストをねらうなど斬新(ざんしん)なくふうに満ちている。ほとんど字幕はないが、表情の描出はそれ以上に多くを物語り、サイレント末期を飾る傑作の一つと評価される。
[登川直樹]
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…いずれにしても,クローズアップを〈モンタージュ〉の一環として使い,映画を空間的束縛から解放したという意味では,グリフィスこそ真のクローズアップの創始者ということができる。カール・テホ・ドライヤー監督《裁かるるジャンヌ》(1928)は,クローズアップを最大限に活用した作品(ラストの処刑と群衆のシーンを除けば,全編ジャンヌ・ダルクと司祭たちとの顔のアップの対決になっている)として知られている。【柏倉 昌美】。…
…戦後の混乱したドイツに生まれた〈表現主義〉の映画《カリガリ博士》(1919)が世界の注目を浴びたころ,ドイツの哲学者コンラート・ランゲは《現在および未来における映画》(1920)の中で,芸術は〈静〉で〈動〉を表現するというイリュージョンで成り立つものであるから,映画が〈動く画面〉を基礎とするかぎり芸術とは無縁であると映画の芸術性を否定したが,20年代を通じて世界の各国で〈サイレント映画〉の芸術性が追究された。例えばフランスでは,アベル・ガンスが《鉄路の白薔薇》(1923)をつくり,グリフィスのモンタージュを視覚的なリズムによる心理的なモンタージュに発展させ,カール・ドライヤーは《裁かるるジャンヌ》(1928)で大胆なカメラアングルと,クローズアップを最大限に活用したモンタージュでそれまでの常識を破り,〈サイレント映画〉形式の一つの頂点を示した。また,ドイツ映画の黄金時代(古典時代)を代表するフリードリヒ・W.ムルナウの《最後の人》(1925)は,文学的な借物であるタイトル(字幕)を排除し,カメラを自由奔放に駆使して映画以外の手段では不可能な映画的表現を開拓した。…
…デンマークの映画監督。デンマーク映画最大の巨匠であり,ジャンヌ・ダルクの苦悩と殉教の意義をクローズアップの連続で彼女の内面に分け入るようにして描き〈サイレント映画最後の傑作〉とされる《裁かるるジャンヌ》(1928),魔女狩りの犠牲となる女性を主人公に17世紀の社会を精神史的に再現した《怒りの日》(1944),狂人と思われていた男の祈りによって一人の女性が死からよみがえる《奇跡》(1955)など,人間の精神の営み,とりわけ信仰について探求した作品は映画史上の特異な存在となっている。 コペンハーゲン生れ。…
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