装飾(読み)ソウショク

デジタル大辞泉 「装飾」の意味・読み・例文・類語

そう‐しょく〔サウ‐〕【装飾】

[名](スル)飾ること。美しく装うこと。また、その装い・飾り。「店内を装飾する」
[類語]飾り修飾文飾虚飾粉飾化粧

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精選版 日本国語大辞典 「装飾」の意味・読み・例文・類語

そう‐しょくサウ‥【装飾・荘飾・粧飾】

  1. 〘 名詞 〙 美しくみえるようにさまざまな加工を加えること。飾り整えること。また、その飾りつけたもの。よそおい。
    1. [初出の実例]「九月十四日荘飾度会宮、十五日奉御像、同日荘飾大神宮」(出典:権記‐長保二年(1000)九月五日)
    2. 「就其蔵経并装飾等、可奉書由白之」(出典:蔭凉軒日録‐文明一九年(1487)八月三日)
    3. 「丹青にて彩画し、一時の粧飾とせしのみなれば」(出典:文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉五)
    4. [その他の文献]〔南斉書‐武穆裴皇后伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「装飾」の意味・わかりやすい解説

装飾 (そうしょく)

工作品の面(表,裏,側),人体の部分,あるいは一定の広い空間に人為的に加工し,視覚や触覚を通じて美的快感をおこさせるようにしたものの成果をいう。工作品は小は日常の器物,武具,図書の類から大は船首や各種の建築に及んでいる。図書の装飾は装丁,建築のそれは建築装飾と呼ばれている。中世写本の彩画装飾はイルミネーション(写本画)であり,日本の写経にはとくに装飾経なるものがある。工作品の面はたとえば壺の取手のような立体的な部分の外面をも含む。人体の装飾は膚に直接加工される〈入墨〉や〈つけほくろ〉のほかに,部分に取り付けられる髪飾(冠,鉢巻,櫛,簪(かんざし),笄(こうがい)),イアリング,首飾,腕輪,指輪などがあり,民族によっては鼻飾や足飾をつける風習をもつものがある。これらの装身具は帯留(おびどめ)やスカーフや各種のアクセサリーとともに〈服飾〉という語の中に含められている。広い空間の装飾としては住居内部や墓室の室内装飾,劇場内の舞台装飾,ショーウィンドーを含む店舗装飾,植込みや泉池の間に天然の石や人工品(灯籠(とうろう),彫像,腰掛の類)を配置する庭園装飾,街路を美化するための街頭装飾(広場の花壇,彫像,並木,モザイク舗装,広告塔)などが数えられる。

 これらの装飾は,(1)装飾される主体において安定していなければならない。たとえば,装飾として描かれた絵はその描かれる面にうまくおさまっていることを要する。(2)主体の功利性または特質と調和しなければならない。壺の取手を装飾することは,取手の機能を損ずることになってはならないし,イアリングは耳の存在を生かすものであることが望ましい。住居の室内装飾は住むための利便と感覚的な愉楽とを調和させることが必要である。

 装飾は装飾される主体の功利性と調和して美的快感をおこさせる役目のほかに,装飾自体の目的をもつことがある。たとえば,入墨や服飾には呪的な目的をもつものや威儀を整えたり階級を表示したりするものがある。室内に肖像画をかけることは祖先を記念する目的をもつことがあるので,その目的に沿うような位置をえらんで飾らなければならない。店舗装飾やネオンサインは客の誘致や商品の宣伝を目的とするので,構成の感覚美はこの目的と不分離の一体であることが望まれる。これらの目的を達成するために,あらかじめ紙上に図案または設計図を作製し,あるいは模型として試作し,それを実材によって実現することが一般に行われる。実材は工芸に用いられるあらゆる材料が任意に選択されて利用されるほか,灯火やネオンも用いられることがある。加工の技法としては,塗装,線描,彩色,陽刻,陰刻,焼付,張付,はめ込み,染め,刷りなどがある。

 美術上の装飾は再現美術representative artに対する装飾美術decorative artを意味するが,再現的な絵画も壁とか障屛とかの実用体に適用されて室内装飾に使用された場合には装飾美術としての役目を果たしているということができる。泉池や建物に適用された彫刻の場合も同じである。ジョットの壁画や光琳の屛風絵は〈与えられた面〉において安定していて美しいので,再現美術であると同時に装飾美術としての特質をも備えている。建築の垂直線に調和したシャルトル大聖堂の円柱型彫像も再現的であるとともに装飾的である。近代には,表面装飾を抑制し,機能の追求から必然的に導き出された抽象形体そのものの均衡,色沢,明暗などの総合を新しい装飾美とする傾向が強くなった。
建築装飾 →室内装飾 →身体装飾 →装身具
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「装飾」の意味・わかりやすい解説

装飾
そうしょく

語義的には、事物を飾ること、装うこと、またそれに用いるものをいう。英語のデコレーションdecorationがだいたいこれにあたるが、たとえば建物の内部を彫刻・絵画・調度品・敷物などで全体的・組織的に飾ることをデコレーションというのに対し、壁面や柱・置物など特定の対象の表面を模様などで飾ることをオーナメントornamentとよぶこともある。しかし両者の区別はかならずしも明快ではない。

 装飾は本来何かを飾るのであるから、それだけで独立できる存在(または行為)ではないが、それでも単なる添え物の域を超えて重要な意味をもつものとなる場合がある。人間の身体に施される直接的な飾りの一つである化粧や服飾を考えてみても、それが自と他との心理的関係を超えて、行儀作法と同じように社会的意味をもつようになることは、種々の儀式などをみれば明らかである。他方、たとえば洋服の袖(そで)のボタンや襟、靴の飾り紐(ひも)、下着に使われるレース、髪飾りのリボンなどは、もともとそれぞれ固有の用途や目的や機能をもっていたものが、しだいに発生当初の意味を失って転化したものである。また、人体に直接施される飾りであるいれずみも、もとはそれを施した人物の所属集団や階級を表す機能をもっていたものが、同じく転化したものである。

 このように被服の一部が機能性を失うことで装飾に変わったものがある一方、織物陶磁器の場合のように、偶然もしくはやむをえず他の材質が混入して予期せぬ効果が現れたことに触発され、それ以後意図的に美的様式の形成が図られたものもある。このような例からも明らかなように、現在みることのできる種々の装飾が、機能性の喪失によるものか、あるいは創造的展開の結果であるかの区別も容易ではない。

 装飾は、それがあることによって、対象自体の特徴を強調する作用、形式美を与える作用があるほか、対象自身の動機を発展させ、ときにはそれによって対象が形成されていく場合さえあることは、種々の模様や文様の展開によっても理解されよう。これら装飾における美の原理は、美学でいう美的形式原理と同じく、多様の統一、調和、均斉、比例、対照、リズムの反復などと強く関連する。そしてこれらの装飾形成のプロセスでは、何かを対象の表面に付加するばかりでなく、表層の一部分を取り去ることも行われている。

 また、装飾芸術decorative artということばは、広くは建築物の外部および内面を飾る彫刻(レリーフ)や絵画の類(フレスコ画、モザイク、ステンドグラスなど)をさすが、それより、室内に場所を占める敷物、壁掛け、家具、調度品、食器をはじめ、人体に着ける装身具のような「飾りのための美術」をさし、これはほぼ工芸と同じと考えても誤りではない。しかし、装飾ないし装飾芸術を、建築、絵画、彫刻などと並んで造形芸術(美術)の一つのジャンルとして位置づけるには、概念のあいまいさがあり、他と明確に区別しにくい。

[鹿島 享]

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普及版 字通 「装飾」の読み・字形・画数・意味

【装飾】そう(さう)しよく

飾る。〔後漢書、逸民、梁鴻伝〕孟氏に女り。、肥醜にしてし。~鴻、聞きて之れを娉(へい)す。~嫁するにんで、始めて以て裝して門に入る。七日にして鴻答へず。~乃ち(あらた)めて椎髻(たいけい)を爲し、布衣を(つ)け、操作して(すす)む。

字通「装」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の装飾の言及

【絵画】より

…素地としては紙,羊皮紙,牛皮紙,麻布(キャンバス),絹布,板,ガラス等のほか,壁画や襖絵の場合のように,壁,天井,建具などの建築の一部が用いられることがあり,また壺絵,蒔絵,染織等のように工芸品も用いられる。そのためモザイク,ステンド・グラス,タピスリー(壁掛綴織),陶器,家具,什器などの装飾も,広い意味で絵画に属すると考えられることがある。また木版画,銅版画,石版画などの版画,あるいはその応用としての挿絵,ポスターなども,色と形による平面の造形芸術であるかぎり,絵画の一分野と考えられる。…

※「装飾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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