襲名(読み)しゅうめい

精選版 日本国語大辞典 「襲名」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐めい シフ‥【襲名】

〘名〙 子や弟子が、親または師匠などの名跡を継ぐこと。〔音訓新聞字引(1876)〕
茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉璃寛襲名「嵐徳三郎が、璃寛を襲名(シウメイ)するについて」

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デジタル大辞泉 「襲名」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐めい〔シフ‐〕【襲名】

[名](スル)親や師匠などの名前を受け継いで自分の名とすること。「六代目菊五郎を襲名する」「襲名披露」
[類語]親譲り世襲

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「襲名」の意味・わかりやすい解説

襲名
しゅうめい

古典芸能や伝統的な特殊技術を要する職業で、先祖父兄、師匠その他先人の名跡を継ぐこと。能、狂言、歌舞伎(かぶき)、人形浄瑠璃(じょうるり)、邦楽、邦舞、落語、講談などの芸能や、刀鍛冶(かじ)、陶工、細工師などの世界でも行われる。名と家を重んじ、技芸の伝承を神格化する日本人の国民性を表し、古来の家父長的な家族制度や、それに関連して成立した家元制度などとも深い関係をもつ。芸能の世界では、当人に責任をもたせ発奮させる目的のための襲名が多く、直接に技芸を伝承されていない故名人の名を復活して継いだり、他家の名前養子になってその家の芸名を継ぐこともある。もっとも大掛りなのは歌舞伎俳優の名家の襲名で、興行者の商業政策にも影響され、とくに重々しく儀式的に扱い、華やかに披露興行を催し、その公演では披露のための「口上(こうじょう)」を設け、当人は大役を勤める。興行に先だっても、各方面への配り物と挨拶(あいさつ)とか、父祖・先代たちの墓前への報告など、いろいろの行事を行う。

[松井俊諭]

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知恵蔵 「襲名」の解説

襲名

歌舞伎俳優が父や兄、師匠や先代の名前を継ぐこと。まれにその家の名前ではなく、廃絶された故名優の名前を継ぐことや、死後に追贈されることもある。年齢や技芸が上がるにつれて、出世魚のように数段階の名前を継ぐことが多い。襲名により本人の自覚が高まり、配役も名前にふさわしく大きな役を手がけるようになり、観客も新しい名前に期待することから、役者ぶりが大きくなる効用がある。興行会社側には、襲名を機会に景気のてこ入れをしようとするねらいもある。

(山本健一 演劇評論家 / 2007年)

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世界大百科事典 第2版 「襲名」の意味・わかりやすい解説

しゅうめい【襲名】

個人名の継承形態の一つ。一般的には家族もしくはこれに類似する集団(芸能の流派など)において,その代々の代表者が以前の代表者の個人名の全部を継承する形態である。したがって襲名の対象となる個人名は原則的に各世代の代表者1人に単系的に継承される。先祖の個人名を子孫が継承する祖名継承法は日本においても活発に行われているが,日本の祖名継承法には単系型と双系型の二つの型があり,襲名は単系型の祖名継承法の一形態である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「襲名」の意味・わかりやすい解説

襲名
しゅうめい

先人の由緒ある名跡を継ぐ行事。能楽・文楽・落語家など,さまざまの芸能で行なわれるが,歌舞伎役者のそれが最も豪華で,社会的影響も大きい。当事者はそれまで名乗っていた名より高い名を継ぎ,本人も観客もそれによって芸格の飛躍的向上を期待する。興行的にも話題づくりとして,最良の手段とされている。

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世界大百科事典内の襲名の言及

【歌舞伎】より

…芸名は幼名にはじまり,あたかも出世魚のごとく一定の段階を踏んで次々と改められていく例が多い。そのほとんどの名前(名跡(みようせき))は世襲で,実子,養子,兄弟,実力のある高弟などによって襲名される。役者は年齢的にも,芸の実力や人気の面でも成長したと認められたとき,あるいは父の急死によって後継者の成長が待望されるときなどに,一段上の芸名をつぐ。…

【名びろめ(名弘)】より

…名広目,名披露目とも書き,名前を世間に広めることをいうが,とくに芸人・芸妓の改名や襲名また商人の新規開業や祖名襲名にあたり,芸名や屋号などを広く喧伝させるため関係者を集め宴を催したり挨拶回りを行ったりすることを指す。芸妓の新造出しや店出しには姉芸者や芸者の三味線などをもって歩く箱屋が付き添い,出入りの茶屋や芸者屋に挨拶回りをし,名刺代りと称して名入りの手拭などを配った。…

※「襲名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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