和装用具の一つ。着物の袂(たもと)を紐(ひも)でからげて、仕事の能率をあげるために用いられるもの。「襷」は国字で、古くは手繦とも書いた。現在では袂を始末する用具の一つであるが、古墳時代の人物埴輪(はにわ)の女子像には筒袖(つつそで)の小袖に掛けている姿がみられるところから、神事の際の神に奉仕する意味が含まれていたことを物語るものであろう。後世になって、小袖の袂が長く大きくなるにつれて、本来の意味は失われ、仕事の能率をあげることへ、つまり儀礼から実用へと変わったのである。襷の材料は、古代には木綿(ゆう)があり、江戸時代には縮緬(ちりめん)、木綿(もめん)などの絎(くけ)紐、あるいは絹糸、木綿糸を編んでつくった組紐、よしの竹を約15ミリメートルに切ったものを糸で通した竹襷や、ガラス玉を通した水晶襷、数珠(じゅず)玉を通した玉襷などがある。農家では多く藁(わら)襷をする。襷の掛け方は、1本の紐の両端を結んで、一ひねりして左右の袖を通すか、さらに一ひねりして、8字形の中に通したりする。また紐を結ばずに首に掛け、両わきの下を通してから、首の紐を上から通して左右に出してこれを花結びにした例が『法然上人(ほうねんしょうにん)絵伝』の絵巻や名古屋城の屏風(びょうぶ)のなかにみられる。そのほか、襷の一端を口にくわえて袖下を通して別の袖の上から下に回して襷の両端を結ぶ方法、また京都壬生(みぶ)狂言では、踊りながら目にも留まらぬ速さで結ぶ方法などもある。
[遠藤 武]
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…今では外出着の意味に用いるが,本来はハレの日に着る着物で,礼装,式服,正装,盛装,忌衣などの意味に用いる。祭日や冠婚葬祭,誕生から成人式までのたびたびの祝日や年祝の日は,ふだんとは違うハレの日で,その日に着る着物が晴着である。ハレの日に対して普通の日をケ(褻)といったが,この語は早くすたれて,日常の着物は常着,ふだん着,野良着などと呼んでいる。地方によっては,節日に着る着物という意味で,晴着を〈せつご〉(東北地方),〈盆ご〉〈正月ご〉〈祭ご〉(和歌山,兵庫,岡山,香川),また生児の〈宮まいりご〉(岡山),娘の〈かねつけご〉(岐阜),嫁入りの〈よめりご〉(岡山),年祝の〈やくご〉〈祝いご〉(香川,鳥取,岡山)ともいった。…
※「襷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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