西ヨーロッパ連合(読み)にしよーろっぱれんごう(その他表記)Western European Union

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西ヨーロッパ連合」の意味・わかりやすい解説

西ヨーロッパ連合
にしよーろっぱれんごう
Western European Union

略称WEU西欧同盟ともいう。イギリス、フランス、ベルギーオランダおよびルクセンブルクによって1948年に設立された西ヨーロッパ五国同盟(ブリュッセル条約による)に、旧西ドイツとイタリアが加わって1954年に成立した地域的集団自衛機構(パリ協定による)。1947年以来東西の対立が厳しくなり、1949年にNATO(ナトー)(北大西洋条約機構)が成立した。西側は東側への対抗上、西ドイツ再軍備を強く望んだ。もともと五国同盟はドイツによる侵略戦争の復活に備えるものであったが、フランスの対独警戒心は強く、西ドイツの再軍備を認めるかわりに、それに対する統制をねらって、超国家的な防衛共同体の創設を提唱したが失敗に帰した。そこで、それにかわるものとして、同同盟は条約の改正によって西ドイツとイタリアを加入させ、WEUに衣替えしたのである。その後、1990年にスペインポルトガル、1995年にギリシアが加盟した。WEUは基本的人権および民主主義の諸原則の保持を目的としており、そのために経済的、社会的および文化的関係を強化し、集団的自衛を計り、ヨーロッパ統合の促進を掲げている。1993年11月に発効したヨーロッパ連合条約マーストリヒト条約)では、同連合の防衛に関して、WEUとの連携を規定している。さらにEUをヨーロッパ全体の防衛の中心として機能させるために、加盟国以外に、準加盟国(ノルウェーアイスランドトルコなど6か国)、オブザーバーオーストリアデンマークフィンランドなど5か国)、および準パートナー(中・東欧7か国)の参加を認めたが、これらのうちアイスランド、ノルウェーおよびトルコを除く国々は、EUに加盟している。機関としては、加盟国の外相による理事会と総会がおかれた。

 1995年5月に発効した、EUの基本的枠組みを定めたアムステルダム条約の主な内容の一つは、ヨーロッパの一体性と独立を強化する共同防衛政策を枠組のなかに含む共通外交安全保障政策の遂行を確認したことである。これにより西ヨーロッパ連合の機能および能力はEUに移ることになった。さらに、2009年12月発効のリスボン条約で、EUの共通外交安全保障政策をより一層強化した。このように、EUがWEUの機能を肩代わりするようになったこともあり、イギリス、ドイツ等が西ヨーロッパ連合脱退を表明したことにより、2011年7月5日をもって同連合は解消されることとなった。

[岡村 堯]

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改訂新版 世界大百科事典 「西ヨーロッパ連合」の意味・わかりやすい解説

西ヨーロッパ連合 (にしヨーロッパれんごう)
Western European Union

1954年10月に結成された西ヨーロッパの経済,社会,文化および軍事安全保障にまたがる政府間同盟組織。西欧同盟とも訳す。略称WEU。1948年のブリュッセル条約機構を修正拡大して成立した。加盟国は,ブリュッセル条約機構のときは,ベルギー,フランス,ルクセンブルク,オランダ,イギリスの5ヵ国であったが,これに新たに西ドイツとイタリアとが加わることとなった。その後89年にスペイン,ポルトガル,92年にギリシアが加盟した。アメリカ,カナダは連携国の地位にある。本部はブリュッセル。

 西ヨーロッパ連合の誕生は,欧州軍の創設をめざすヨーロッパ防衛共同体(EDC)が1954年に挫折した結果と深く関係している。EDCは,とくにその超国家的性格と西ドイツの再軍備を懸念したフランス国民議会によって葬り去られた。WEUは,〈ヨーロッパの統一を促進し,その漸進的統合を助長すること〉(条約前文)をめざしているが,EDCのように超国家的な性格をもったものではない。西ヨーロッパ連合は,北大西洋条約機構(NATO(ナトー))と一体的な関係におかれている点に特色をもっている。その兵力は,NATO軍最高司令官の指揮下に入っている。WEUは,深まりいく当時の東西冷戦の国際政治状況に対応する目的をもって,なによりも西ヨーロッパの防衛体制を強化しようとする組織化の試みであった。2000年ヨーロッパ連合(EU)に統合され,03年にはEUの緊急対応部隊が発足した。
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百科事典マイペディア 「西ヨーロッパ連合」の意味・わかりやすい解説

西ヨーロッパ連合【にしヨーロッパれんごう】

Wstern European Union,略称WEU。西欧連合,西欧同盟とも。1948年のブリュッセル条約によって,ベルギー,フランス,ルクセンブルク,オランダ,イギリスの5ヵ国が組織したブリュッセル条約機構を前身とする集団防衛組織。1954年に西ドイツ(現ドイツ)とイタリアが参加して改称,1955年発効。ヨーロッパの団結と統合を目的とし,特に西独の再軍備と制限を定め,ソ連に対抗する組織としてNATOに兵力を提供。1988年スペイン,ポルトガルが,1992年ギリシアが加盟し,10ヵ国。1999年ヨーロッパ連合(EU)の首脳会議でWEUのEUへの統合が決まり,2000年12月統合された。EUの軍事部門として2003年独自の〈緊急対応部隊〉が発足し,マケドニアでの平和維持活動をNATOから引き継いだ。
→関連項目ヨーロッパ防衛共同体条約ワルシャワ条約機構

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旺文社世界史事典 三訂版 「西ヨーロッパ連合」の解説

西ヨーロッパ連合
にしヨーロッパれんごう
Western Europe Union

1954年10月のパリ協定にもとづいて組織された,西ヨーロッパ諸国の集団防衛組織。「西欧連合」「西欧同盟」ともいう。略称WEU
1948年3月に調印された,イギリス・フランス・ベルギー・オランダ・ルクセンブルク間の相互援助同盟条約であるブリュッセル条約(西ヨーロッパ五か国同盟)を改組して西ドイツ・イタリアを加盟させ,アメリカとカナダを連携国として加えて成立,1955年5月に正式発足した。1988年にはスペイン・ポルトガルが加盟。同盟諸国間の共同防衛・経済協力を約し,理事会・総会・軍備管理機関の組織をもち,兵力は北大西洋条約機構(NATO)軍の指揮下にはいっている。

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