デジタル大辞泉 「規格」の意味・読み・例文・類語
き‐かく【規格】
2 物事の基準となる、社会一般の標準。「
翻訳|standard
物質,エネルギー,行為,サービス,現象,抽象概念について,用語,記号,定義,種類,等級,形状,寸法,成分,組成,構造,装備,性質(信頼性,安全性を含む),性能,動作,方法,手順,手続き,方式,状態,条件その他の技術的事項を定める取決めをいう。規定する内容,目的によって,(1)基本規格--基礎的,総括的な事項について定めるもの,(2)製品規格--品物の性質,性能などの要求事項について定めるもの(寸法規格,性能規格などのように部分的に定めるものもある),(3)サービス規格--いわゆるサービス業が提供するサービスに対する要求事項について定めるもの,(4)用語規格--専門用語とその定義を定めるもの,(5)品種規格--種類の減少,すなわち単純化を目的とするもの,(6)互換性規格--部品などの互換性の確保を目的とするもの,(7)両立性規格--システム,設備などの両立性の確保を目的とするもの,(8)安全規格--安全の確保を目的とするもの,(9)試験規格および検査規格--品質保証を目的とするもの,(10)製造規格--品質の確保,製造コストの低減,能率の向上を目的とするもの,などに区分できる。
また規格は,それを定める機関によって,(1)国際規格--国際的な協定,条約に基づいて設けられた,政府または非政府の国際機関が定めるもの(この機関の会員資格は世界的に公開),(2)国家規格--国家的に認められた国家規格機関が定めるもの,(3)団体規格--国家的に認められた学会,協会,業界団体が定めるもの,(4)社内規格--企業が定めるもの,に区分できる。このほかに,(5)地域規格--地理的,政治的,経済的に密接な連係をもつ国々の協力によって設けられた,政府または非政府の地域的な国際機構が定めるもの,(6)官公庁規格--国または地方の政府機関が,物品,サービスの調達に当たって用いることを目的として定めるもの,があるが,(5)は国際規格の変形といえ,(6)は社内規格の変形といえる。
人類が集落生活を営み,かつ道具を用いるようになったころから,道具の材料,形状,製法などについて現在の規格に相当するものがあった。すぐれた工人が作り上げたものを見本(基準)として他の者がまねて作るという形で,規格が広まっていったに違いない。その後,文字が生まれ,数の概念が確立し,これに続いて測定技術が発達するにつれて,規格は文章によって,しかも客観性に富む表現形式をもつ文書としてまとめられるようになり,また規格を定める仕事が,権威をもった組織的な活動として行われるようになった。前1500年ころのものといわれる《パピルス・エーベルス》には,医薬の処方,用法についての記述があり,もっとも古い規格と見なされている。日本では,正倉院文書の《造仏所作物帳》(734)に各種の器物に用いる白銅(スズを多く含む青銅)の合金比率(成分)を示す記述,また《延喜式》巻三十四木工寮(927)に,くぎ,かわら,その他各種の器物の形状,寸法,材料(原単位),日産量などの規定の例がある。
規格を定め活用することは,産業革命を契機として格段に進展し,産業の発達に大きな貢献をしてきた。19世紀の終りころ,イギリスでは橋,船舶,建物などの構造材として,従来の鋳鉄品にかえて形鋼を用いるようになったが,この鋼材の使用者である建設業者,造船業者は,自分たちの個別の要求にこだわり,個々別々の形状,寸法の形鋼を注文していた。このため,製造コストが非常に高いものとなり,一般新聞紙上で大きな問題として取り上げられ,これに関連して1901年1月の土木学会の総会席上で,形鋼の規格を定めることが決まった。これが,現在のイギリス規格British Standardへと発展した。またアメリカでは,南北戦争の経験に基づいて,1881年創立のアメリカ機械学会の第1回総会で〈ねじ山〉の規格を決めることを議決している。これが,現在の〈ISOインチねじ〉の祖先である。日本では,明治時代の初期からセメントが用いられ,また製造されていたが,鉄道企業熱の台頭,濃尾地震(1891)による煉瓦造りの建物の脆弱(ぜいじやく)性の実証などによって,セメントの需要は急速に増えた。しかし,需要者は各自独特の試験方法を定めて検査をするという状態で,セメント製造業者ははなはだしい不便をこうむっていた。そのため,試験方法の規格を決めることが再三試みられたが成功しないで,やっと1905年2月に農商務省からセメント試験方法の規格が公布になった。これが,現在の日本工業規格(JIS)への発展の礎となった。自動車の製造規格の統一による量産方式の採用は,1894年の西ドイツのベンツ社のベロ号が最初といわれているが,アメリカのフォード社は一元的な製造規格および流れ作業生産方式を1908年開発のフォードT型に適用して,10年未満で価格を850ドルから360ドルに低減することに成功している。
日本の貿易で用いているおもな規格を表に示す。ここに示したように,日本だけでも各種の規格を貿易で用いている。この事情は他の諸国でも同様であり,これが円滑な貿易を阻害しているとして,GATTの東京ラウンドで〈貿易の技術的障壁に関する協定〉(いわゆるスタンダード・コード)を定める作業が続けられ,1979年12月17日に調印をみた。この協定は,国際規格が定めてあるものについては各国の規格および取締技術基準(取締法規に基づく技術基準)においてこれを適用すること,国際規格を作成しようとする場合には各国は能力範囲内で十分な役割を果たすべきこと,国際規格の内容と本質的に相違する規格および取締技術基準を定めようとするときはGATT事務局を通じて他の締約国に通報し,要請に応じて案を提供すること,また必要に応じて関係国と協議し,協議の結果および書面による意見について十分に配慮することなどを,締約国に義務づけている。また各国は,供給者が証明書,マークなどで規格および取締技術基準に適合していると証明することを第三者機関である認証機関が認める制度,すなわち認証制度を実施しているが,これがまた貿易障壁となるので,スタンダード・コードでは,各国は自国の制度を他国の供給者に対しても開放することを義務づけている。1980年代に入り規格も国際化時代に入ったといえる。
執筆者:東 秀彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生産や使用に便利なように、主として生産品に対して定めた技術的な標準をいう。この標準化は、物質について、その形状・重さ・成分などを対象とする場合、行為について、その動作・方法・資格などを対象にする場合、および計量単位・用語など、物質ならびに行為に関する基礎的事項を対象とする場合など、さまざまな場合に行われる。その結果を文章、式、表その他の具体的方法を用いて定義し、また、要求条件を指示するものが、規格ないし標準とよばれるものである。
企業経営にとって、単純化simplification、専門化specialization、標準化standardizationのいわゆる「3S」の重要性がしばしば強調される。一般に、製品・材料・部品など物品の形式・サイズ・等級などについて、特殊なあまり用いられない種類をやめ、標準化を進め、それらについて専門的な生産を行うことによって、品質の向上、安定供給(生産の向上)、コストの低減などが期待されるからである。
規格には標準化の及ぶ範囲によって、個々の企業ないし工場内だけで決める社内規格、業界や協会などで制定される団体規格、国家的規模で行われる国家規格、さらに、国際的組織によって制定され、国際的に適用される国際規格がある。
[高橋三雄]
社内標準化は、(1)製品規格、部品規格など、製品についてその形状・成分・構造などの仕様を規定したり、(2)設計基準、製造作業標準、品質管理標準など製品の設計・製造・管理などについて規定する技術的な規格と、(3)組織図、職務権限規定など職制・職務についての規定や、文書規定・経理規定など管理部門・事務部門の行う業務について、その方針・手続などについて規定する経営的な標準化がある。
以上のような社内規格は、会社の内外の技術的・経済的に即したものであり、かつ、単純化された、管理しやすい、使いやすいものであることが要求される。社内標準化を進めるにあたっては、標準の立案・制定・登録・配布などに関する事務を担当する公的な組織単位を決定することが必要で、さらに標準化のための規定を設けることも必要となろう。
[高橋三雄]
団体規格は、各企業の社内規格が業界内で標準化されたりする結果として制定され、国家規格と社内規格の結び付きを図る点で重要な役割を果たしている。
団体規格の例としては、アメリカにはASTM規格(ASTMインターナショナル)、ASME規格(アメリカ機械学会)などがある。日本では、JEC規格(電気学会)、建築工事標準仕様書(略称、JASS。日本建築学会)、JEITA規格(電子情報技術産業協会)などがある。
[高橋三雄]
国家レベルでの標準化は、産業の発展、国民経済の成長などの面で寄与するところが大きく、先進諸国では古くから国家的規模の標準化が進められてきた。たとえば、ANSI規格(アメリカ)、DIN規格(ドイツ)、NF規格(フランス)、BS規格(イギリス)、GOST規格(旧ソ連邦)などがある。
日本では1902年(明治35)に軍用材料に規格を定めたのが始まりで、1921年(大正10)商工省に工業品規格統一調査会が設けられ、工業品についての規格設定が開始され、1933年(昭和8)に日本標準規格(JES)が定められた。これは1943年に戦時規格である臨時日本標準規格(臨JES)に改定された。第二次世界大戦後、日本規格(新JES)が制定されたが、1949年(昭和24)工業標準化法が制定され、これに基づいて日本工業規格(JIS(ジス))が定められた。2019年(令和1)には工業標準化法の改正によって法律名が産業標準化法に改まり、それに伴い日本工業規格も日本産業規格となった。なお、英語名称のJapanese Industrial Standards(JIS)は継続される。JISのほかに、国家規格として日本農林規格(JAS(ジャス))がある。
[高橋三雄]
国際規格には、1928年創立のISA(万国規格統一協会)と、アメリカ、ソ連など18か国によって組織されていたUNSCC(国際連合規格調整委員会)が1946年に統合されてできたISO(国際標準化機構)があり、日本も1952年にこれに加入している。
[高橋三雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
字通「規」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
…同法は,屠(と)畜場以外での獣畜(牛,馬,豚,ヤギ,メンヨウ)の屠畜を禁止しているが,さらに屠畜場において獣畜およびその肉に対し特定の疾病に関する検査を義務づけている。(2)の場合は,農産物の標準化をすすめるため,その種類,形態,品質等に関する標準(規格とよばれるが,農産物では複数の階級から構成される場合が多い)が定められ,それに合致するかどうかをみる検査が行われる。規格や検査方法は生産者団体等が自主的に定めることが多いが,政府が価格支持等で市場に介入する場合,商品生産の初期において政府が政策的にその改善をはかる場合,また輸出農産物に関する場合等は,政府が法令等に基づいて規格や検査方式を定める,さらにはみずから検査を行うときがある。…
※「規格」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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