覚書(読み)オボエガキ

デジタル大辞泉 「覚書」の意味・読み・例文・類語

おぼえ‐がき【覚(え)書(き)】

忘れないように書き留めておくこと。また、その文書。メモ。備忘録。覚え。
条約に付帯した、あて名も署名もない略式外交文書。条約の解釈・補足、また、自国の希望・意見を述べたもの。外交使節の署名のあるものは正式な外交文書となる。了解覚書
契約をする者同士が交わす、契約の補足や解釈などを記した文書。
[類語](1書き付けメモ雑記ひと筆一筆手控え備忘録/(2コミュニケ声明ステートメント宣言

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精選版 日本国語大辞典 「覚書」の意味・読み・例文・類語

おぼえ‐がき【覚書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 後々の記憶のために書いておくこと。また、その文書。メモ。
    1. [初出の実例]「杉風方に前々よりの発句文章の覚書可之候」(出典:芭蕉遺状(1694))
  3. 法律用語。
    1. (イ) 条約に付帯する簡単な外交文書。条約の解釈や補足または自国の意見、希望などを述べたもの。メモランダム。〔仏和法律字彙(1886)〕
    2. (ロ) 第二次世界大戦後、連合国最高司令官が日本政府にあてた、占領管理に関する指令の一形式、およびその文書。立法や行政などの命令ほか、個別的な承認、処分など、広い範囲にわたる。
    3. (ハ) 契約の当事者が、契約の解釈を明らかにしたり、これを補足するために取り交わす文書。

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改訂新版 世界大百科事典 「覚書」の意味・わかりやすい解説

覚書 (おぼえがき)

歴史の記録的史料の一種。(1)ある種の古文書の俗称。正しくは手日記,条目,条書という。当事者間ではすでに理解しあった事柄を,備忘のため記録した書付,使者の口上によって詳しく説明する予定の事柄を個条書きにした文書などを指す。一般に〈〉と書き出し,事柄を〈一……事〉と個条書きにし,書止めは敬語を添えず〈已上〉で終わり,月日,筆者(差出人),宛先などを書くこともある。古文書学上の用語ではない。(2)ある種の記録の総称。自己あるいは自家,主家の伝統や功業などを同世代の人々や後世に伝える目的で記し,同時にその繁栄・栄達を期待する。戦国時代や安土桃山・江戸時代初期に多く記録されている。聞書,留書,置文,書上などの形をとることが多いが(《渡辺勘兵衛武功覚書》など),現在はむしろ文学作品として扱われている覚書も多い(《信長公記》《三河物語》など)。筆者には,文筆に秀でた御伽衆(おとぎしゆう)などの武士が多い。
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覚書 (おぼえがき)
memorandum

ある事柄の基本的事実の要約あるいは論点を相手方に伝える外交上のノート。通常,三人称で書かれ,宛名も署名もないのが原則であり,一般に派遣国の外交使節から接受国の外務省に渡される。覚書は正式の条約そのものではないが,たまたまその内容が意思の合致を必要とする場合に,相手国がそれに同意する旨の覚書を送ってきたときには,それらの国の間において合意が成立したということができ,広義の条約の一種とみなされうる。また,国家間の意思伝達の方法ではないが,複数の国家の民間団体相互間における合意を文書にまとめたものを覚書ということがある。たとえば,日中覚書貿易などがそれである。1958年以来の日中貿易中断のあとを受けて,63年に廖(りよう)=高碕覚書によるLT貿易が開始され,68年にはLT貿易は覚書貿易とその名称を変えて,1年ごとの取決めで行われるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「覚書」の意味・わかりやすい解説

覚書(日本史)
おぼえがき

自身の備忘を目的として作成された文書、または記録。前者は一つ書(がき)の形式で記される古文書の一様式をいう。後者は備忘とともに特定の目的をもって記述された記録をいい、とくに近世初期に多く成立し、書上(かきあげ)、聞書(ききがき)、留書(とめがき)などの形式で、自・主家および自身の功労、体験などが記述されており、子孫にその栄誉を認識させるとともに発展を期待するものであったということができる。そのため個々の内容が誇張される場合もあるが、戦国時代から近世初期の社会の変革を示す貴重な歴史的史料となるものも少なくない。現存するおもな覚書には『石川正西聞見集(いしかわしょうさいぶんけんしゅう)』『可児才蔵誓文日記(かにさいぞうせいもんにっき)』『九鬼四郎兵衛働之覚(くきしろびょうえはたらきのおぼえ)』『信長公記(しんちょうこうき)』『三河(みかわ)物語』など多数がある。

[久保田昌希]


覚書(外交用語)
おぼえがき

外交用語としての覚書は、メモランダムmemorandumとよばれ、国家間の外交交渉や国際会議での議事内容を議事要録として相手方に手渡す場合に用い、宛名(あてな)も署名もない略式のものをいう。しかし、問題になっている事態や主張に対して、自国の意思を相手方に通告する一方的文書も(通告)覚書とよばれ、駐在する自国の外交使節(大・公使)を経由して、相手国の政府(外務省)に伝達される。この場合は、自国の大・公使の署名を伴い、国家の正式な外交文書とされる。また、国家間の条約締結交渉にあたり、論題や内容を限定するための約束で、非公式ではあるがその約束に法律的効力を認める合意文書も、(了解)覚書とよばれる。

[經塚作太郎]

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日本歴史地名大系 「覚書」の解説

覚書(三島町外万覚帳)
おぼえがき

一冊

成立 未詳

原本 三島市郷土資料館

解説 近世前期からの三島町・三島宿について詳細に記述し、ほかに三島代官覚、伊豆諸島、伊豆国内寺社朱印地などにも言及する。

活字本 「静岡県史」資料編一〇

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世界大百科事典(旧版)内の覚書の言及

【覚】より

…文書の一様式。備忘のために記したものはすべて覚・覚書であるが,狭義には,使者または当事者が,相手への要件を表だたずに備要に記せば〈口上覚〉であり,文書にして手渡せば口上書となる。請渡しの品・用件などが簡単であれば覚を必要としないが,数多くあれば個条書き(一つ書)にして,遺漏のないように配慮され,本人が記して託することになる。…

【書付】より

…とくに江戸幕府が大名らに指令を下す場合,初期には老中奉書をもってなされたが,元禄時代ごろになると,より簡便な様式を有する老中御書付がこれに代わっていった。老中御書付は奉書紙を横半截した切紙の形をもち,伝達内容のみが記され差出・宛所の記載も省略されており(宛所の必要なものは文書の袖に記される),老中よりの口頭伝達を文字化した覚書としての性格をもっていた。幕府の触(ふれ)や達(たつし)はこの形式の文書をもってなされるのが一般的となっていった。…

【外交】より

… ノートnotes通牒ともいわれ,外交文書中最も重要なもので,使節団長が相手国政府にあてたものである。外交文書にはこのほか,口上書note verbale,覚書mémoireがあるが,それぞれフォーマルな程度を低くする。 なお,〈覚書〉〈外交特権〉〈共同宣言〉〈交換公文〉〈高等弁務官〉〈在外公館〉〈最後通牒〉〈条約〉などについては各項目を参照されたい。…

【条約】より

…国際社会の組織化に伴って,国際機構が当事者となって締結する条約の数が増加する傾向にある。 具体的な条約は個々の場合に必ずしも〈条約treaty〉と呼ばれるわけではなく,〈取極arrangement〉〈協定agreement〉〈憲章charter〉〈規約covenant〉〈規程statute〉〈交換公文exchange of notes〉〈往復書簡exchange of letters〉〈議定書protocol〉〈覚書memorandum〉などさまざまな名称が付せられる。これらのものは名称の差異にかかわらず実質的には条約と同意義であり,その内容によって名称が一定しているわけでもない。…

※「覚書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」