覚書(読み)おぼえがき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「覚書」の意味・わかりやすい解説

覚書(日本史)
おぼえがき

自身の備忘を目的として作成された文書、または記録。前者は一つ書(がき)の形式で記される古文書の一様式をいう。後者は備忘とともに特定の目的をもって記述された記録をいい、とくに近世初期に多く成立し、書上(かきあげ)、聞書(ききがき)、留書(とめがき)などの形式で、自・主家および自身の功労、体験などが記述されており、子孫にその栄誉を認識させるとともに発展を期待するものであったということができる。そのため個々の内容が誇張される場合もあるが、戦国時代から近世初期の社会の変革を示す貴重な歴史的史料となるものも少なくない。現存するおもな覚書には『石川正西聞見集(いしかわしょうさいぶんけんしゅう)』『可児才蔵誓文日記(かにさいぞうせいもんにっき)』『九鬼四郎兵衛働之覚(くきしろびょうえはたらきのおぼえ)』『信長公記(しんちょうこうき)』『三河(みかわ)物語』など多数がある。

[久保田昌希]


覚書(外交用語)
おぼえがき

外交用語としての覚書は、メモランダムmemorandumとよばれ、国家間の外交交渉や国際会議での議事内容を議事要録として相手方に手渡す場合に用い、宛名(あてな)も署名もない略式のものをいう。しかし、問題になっている事態や主張に対して、自国の意思を相手方に通告する一方的文書も(通告)覚書とよばれ、駐在する自国の外交使節(大・公使)を経由して、相手国の政府(外務省)に伝達される。この場合は、自国の大・公使の署名を伴い、国家の正式な外交文書とされる。また、国家間の条約締結交渉にあたり、論題や内容を限定するための約束で、非公式ではあるがその約束に法律的効力を認める合意文書も、(了解)覚書とよばれる。

[經塚作太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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