隋・唐の制にならった称号。親王の語は,《日本書紀》天武4年(675)にはじめて見えるが,親王の称が制度的に定められるのは,大宝令においてであると考えられる。すなわち,天皇の兄弟および皇子を親王と称し,また女は内親王と称することが規定された。親王には一品から四品までの品位が授けられ,品位に応じて太政大臣,左右大臣,大納言,大宰帥,八省卿などの官職に任ぜられ,また品田・品封を給され,文学および家令以下のいわゆる家司が付属することとなった。ただし実際には,奈良時代前半に親王が相次いで任ぜられた知太政官事(ちだいじようかんじ)を除くと,参議以上のいわゆる議政官に親王が任ぜられた例は見られない。しかし,《続日本紀》天平宝字5年(761)の勅や《延喜式》には,議政にあずかる親王に対する季禄支給のことが定められているから,知太政官事以外にも親王が議政にあずかる場合のあったことが知られる。758年(天平宝字2)淳仁天皇即位の際に,詔によりその兄弟姉妹を親王と称せしめてから,親王宣下(せんげ)の制が行われ,皇子であっても宣下を受けてはじめて親王となり,また皇孫以下であっても宣下があれば親王となる慣行が成立した。後白河天皇の皇子以仁王は,皇子にして親王宣下を受けなかった例であり,三条天皇の皇孫たる敦貞王らが親王宣下を受けたのは,皇孫が宣下を受けた初例である。親王宣下の制はさらに発展して,いわゆる世襲親王家の成立を見るに至った。世襲親王家は,代々嫡子が親王宣下を受けて宮家を継承するもので,伏見,桂,有栖川,閑院の4宮家は四親王家と称された。1889年皇室典範が制定されると,親王宣下の制にかわって永世皇族の原則が定められ,皇子により皇玄孫までの男を親王,女を内親王と称し,また天皇が支系より入って大統を継いだ場合は,皇兄弟姉妹の王・女王に親王・内親王の号を宣賜することとなったが,1947年の皇室典範においては,親王・内親王は皇子および皇孫に限ると定められた。
→皇族 →法親王
執筆者:柳 雄太郎
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皇族の身位(しんい)の一つ。またその称号。令制(りょうせい)では天皇の皇子女および兄弟姉妹をいい、そのうち女子は内親王(ないしんのう)と称した。平安時代以降は、親王となす宣旨(せんじ)を下されなければ、皇子でも親王と称することができなくなった反面、皇孫なども親王宣下(せんげ)を受け、さらに代々親王宣下を受ける世襲親王家も出現した。また親王で出家した場合は入道親王、出家後、親王宣下を受けた場合は法親王(ほうしんのう)と称する例も生じた。親王は一品(いっぽん)から四品(しほん)までの品位を与えられ、それに応ずる田地や俸禄(ほうろく)を給与され、専属の職員もつけられた。明治の皇室典範では、皇子より皇玄孫(こうげんそん)までを生まれながら親王・内親王となすと定めたが、現制では嫡系の皇孫までに限られた。
[橋本義彦]
律令制以降,皇族の身分を表す呼称。もともと大王の子や兄弟も,他の王族とともに「王(おおきみ)」または「王子(みこ)」と称されていたが,天武朝に至り,天皇の子と兄弟に限り「皇子(みこ)」と称するようになった。701年(大宝元)に制定された大宝継嗣令は,天皇の兄弟と皇子を「親王」と称することを規定し,官位令で親王独自の品位(ほんい)を制定した。奈良時代には令制どおり天皇の皇子・兄弟は自動的に親王とされたが,平安時代の嵯峨天皇以降,皇子の臣籍降下が頻繁になると,皇子は誕生後あらためて宣下をうけて親王となり,また2世王以下の皇親でも宣下をうければ親王となりうるようになった。
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… 皇族の範囲は,大宝令で初めて法定された。すなわち中国の制に倣って,皇兄弟姉妹および皇子・皇女を親王とし,皇孫・皇曾孫・皇玄孫を王とし,皇玄孫の子たる五世王は,王名を称することはできるが,皇親の範囲に入らないと定め,女子については内親王・女王の称も用いた。また二,三,四世王を親王に対して諸王と総称した。…
※「親王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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