解く(読み)トク

デジタル大辞泉 「解く」の意味・読み・例文・類語

と・く【解く】

[動カ五(四)]
結んだりしばったりしてあるものをゆるめて分け離す。ほどく。「帯を―・く」「包みを―・く」
縫い合わせてあるものの糸を抜き取って離す。また、編んであるものをほどく。「着物を―・く」「セーターを―・く」

㋐もつれたものをもとに戻す。ほぐす。「からまった釣り糸を―・く」
㋑(「梳く」とも書く)もつれた髪にくしを入れて整える。とかす。すく。「乱れた髪を―・く」
着ていたもの、身に取り付けたものをはずす。「旅装を―・く」
命令・束縛・制約などから解放する。「鎖を―・く」「統制を―・く」「契約を―・く」
任務・職をやめさせる。免じる。「任を―・く」
拘束していた態勢を崩してもとの状態に戻す。「警備を―・く」「武装を―・く」
心のわだかまりや緊張状態をほぐす。ふさがっていた気持ちをすっきりさせる。「怒りを―・く」「疑いを―・く」「誤解を―・く」
筋道をたどって解答を出す。「問題を―・く」「なぞを―・く」
[可能]とける
[動カ下二]と(解)ける」の文語形
[用法]とく・ほどく――「帯を解く(ほどく)」「もつれた糸を解く(ほどく)」「着物を解く(ほどく)」など、ばらばらにする意では相通じて用いられるが、「ほどく」の方が口語的である。◇「問題を解く」「謎を解く」「誤解を解く」「禁止を解く」「武装を解く」「警戒を解く」「緊張を解く」など、結び目、縫い目をばらばらにする意以外の場合は「解く」だけを用いる。◇類似の語に「ほぐす」がある。解けた状態、ほどけた状態にする意で、「からんだ糸をほぐす」のほか、「緊張をほぐす」「肩のりをほぐす」などと用いる。
[下接句]印綬いんじゅを解くおとがいを解く帯を解く帯紐おびひもを解くかつさんの紐を解くじゅを解くじんを迎えて解くなぞを解く
[類語](1ほどくほぐす解けるほどけるほぐれるときほぐすふりほどく/(6免職解任解職罷免無職無業離職解雇馘首首切りくびお払い箱失業失職食い上げ破門お役御免リストラ食いはぐれるあぶれる免ずる暇を出す暇を遣る首になる首を切る首が飛ぶ

ほど・く【解く】

[動カ五(四)]
結んだり、縫ったり、もつれたりしたものをときはなす。とく。「荷物を―・く」「着物を―・いて洗い張りする」「からんだ糸を―・く」
迷いや疑いをはらす。正しく判断する。
「日頃は道理を聞き―・き給はざりける」〈沙石集・三〉
神仏にかけたがんがかなったとき、お礼参りをしてかけた願をとく。
「王子王子の御前にて宿願を―・き候ふべし」〈義経記・三〉
[用法]
[可能]ほどける
[動カ下二]ほどける」の文語形。
[類語]解く解けるほどけるほぐすほぐれるときほぐすふりほどく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「解く」の意味・読み・例文・類語

と・く【解】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. 結んであるもの、縫ってあるものなどをほどく。
      1. [初出の実例]「太刀が緒も いまだ登加(トカ)ずて 襲(おすひ)をも いまだ登加(トカ)ねば」(出典古事記(712)上・歌謡)
      2. 「『これを形見にしたまへ』とて、帯をときてとらせけり」(出典:大和物語(947‐957頃)一六九)
    2. 束ねたものをばらばらにしたり、封じたものを開いたりする。
      1. [初出の実例]「白玉の五百(いほ)つ集(つど)ひを解(とき)も見ず吾れは寝かてぬ逢はぬ日待つに」(出典:万葉集(8C後)一〇・二〇一二)
      2. 「判官あまさへ封をもとかず、いそぎ時忠卿のもとへ送られけり」(出典:平家物語(13C前)一一)
    3. 乱れもつれたものを分けて整える。
      1. [初出の実例]「御髪(ぐし)手づからけづり給ふ。〈略〉ときはてたれば、つやつやとけうらなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
    4. 車などにつける飾りや身にまとう着物などをとり除く。
      1. [初出の実例]「只今なん、御車の装束ときて、み随身ばらも、みな乱れはべりぬ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    5. 腹立ち、不機嫌、恨み、悲しみ、疑いなど、心のわだかまりを消してさっぱりさせる。「疑いを解く」
      1. [初出の実例]「せめては、婦女の職分をも尽して、世間の誤謬を解(ト)かん者と」(出典:妾の半生涯(1904)〈福田英子〉七)
    6. 役目、責任、契約、制限など、束縛となるものを除く。解任、解約、解禁などをする。
      1. [初出の実例]「憎み思ひし官長は、遂に旨を公使館に伝へて、我官を免じ、我職を解いたり」(出典:舞姫(1890)〈森鴎外〉)
    7. 防備、警戒、包囲などのためにとっていた態勢をくずす。「警戒を解く」「囲みを解く」
      1. [初出の実例]「遂に函館の固めを解(ト)き」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉一二)
    8. 魚や鳥獣を刃物で切り裂く。包丁を入れて料理する。また、解剖する。
      1. [初出の実例]「行賢即解鯉」(出典:台記‐仁平二年(1152)二月二六日)
    9. 疑問や問題に対する答えを出す。解答する。
      1. [初出の実例]「近習の人ども、なぞなぞを作りてとかれける処へ」(出典:徒然草(1331頃)一〇三)
      2. 「代数をやったり、幾何の問題を解いたり」(出典:彼女と少年(1917)〈徳田秋声〉五)
    10. あたえられた方程式、不等式を満たす未知数の値の範囲を求める。解(かい)を求める。
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙とける(解)

ほど・く【解】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. 結んだもの、結ったもの、縫ったものなどをときわける。ときはなつ。はなつ。とく。
      1. [初出の実例]「夢にだに見えむと吾れは保杼毛(ホドケ)どもあひし思はねばうべ見えざらむ」(出典:万葉集(8C後)四・七七二)
    2. 神仏にかけた願(がん)がかなった後、お礼参りしてその願をとく。願ほどきをする。
      1. [初出の実例]「王子王子の御前にて宿願をほどき候べし」(出典:義経記(室町中か)三)
    3. 疑問をとく。理解する。思いほどく。
      1. [初出の実例]「一二の句にて、不審を立てて、三四の句にて、ほどいた也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
    4. 魚の身をひらく。
      1. [初出の実例]「まがきまで津浪の水にくづれ行〈荷兮〉 仏喰たる魚解(ホド)きけり〈芭蕉〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙ほどける(解)

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