言付ける(読み)イイツケル

デジタル大辞泉 「言付ける」の意味・読み・例文・類語

いい‐つ・ける〔いひ‐〕【言(い)付ける】

[動カ下一][文]いひつ・く[カ下二]
命令する。「用事を―・ける」
告げ口する。「先生に―・けてやる」
言い慣れている。いつも言って慣れている。「―・けない言葉を使う」
言って頼む。ことづけする。
「かの人の―・けしことなど、染め急ぐを見るにつけても」〈手習
名づける。言いなす。
妹背いもせなど―・けて語らひ侍りけるに」〈後拾遺・雑五・詞書〉
しかる。厳しく言い聞かせる。
「あのやうなる事を申す程に、―・けて下されい」〈虎明狂・連尺〉
[類語](1頼む命令申し付ける申し渡す申し聞かせる言い渡す仰せ付ける言い付けめいれい指令下命指示指図さしず号令発令沙汰さた主命君命上意達し威令厳令厳命仰せ尊命懇命命ずる/(2密告裏切り内応内通気脈を通じる背信背徳背任変心寝返りおためごかし讒言讒訴誣告告げ口垂れ込み

こと‐づ・ける【言付ける/託ける】

[動カ下一][文]ことづ・く[カ下二]
人に頼んで伝言品物を取り次いでもらう。「明日来るように―・ける」「手紙を添えて新築祝いを―・ける」
かこつける。口実にする。
「なやましきに―・けて、夜深う出で給ひて一条の宮におはしぬ」〈狭衣・三〉
[類語]預ける託するゆだねる任せる寄託する預託する信託する委託する委任する付託する頼む

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「言付ける」の意味・読み・例文・類語

いい‐つ・けるいひ‥【言付】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]いひつ・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
  2. 物事を人に頼む。命じる。
    1. (イ) 言って頼む。ことづける。付託する。
      1. [初出の実例]「宮の御かへりも人々の消息も、いひつけて又遣りければ」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)
    2. (ロ) 目下の者に命じる。申し付ける。また、物を注文する。
      1. [初出の実例]「ソレ チャウチャク セイト iytçuqeraruru(イイツケラルル) ホドコソアレ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
      2. 「むく起に物いひつけて亦睡り〈野水〉」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
  3. その人にとって好ましくないことを他に告げ知らせる。
    1. (イ) 無実のことや不都合なことを人に言い知らせる。作りごとをして言いふらす。
      1. [初出の実例]「なに事をいひつけんと、眼をつけて見給へど、いひつくべき事もなし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
    2. (ロ) 人の秘密や過失、行ないなどをこっそり人に告げ知らせる。密告する。
      1. [初出の実例]「此間孝助が殿様に云付(イイツケ)るのを聞て居たら」(出典:怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一一)
  4. あだ名などを付ける。命名する。
    1. [初出の実例]「大宰相の君などいふ人、おばおとどなどいひつけ給ひ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)日蔭のかづら)
  5. いつも言っている。言い慣れる。
    1. [初出の実例]「ここもとにいひつけたることくさ、物の名など」(出典:徒然草(1331頃)七八)
  6. 叱りつける。きびしく言いきかせる。注意する。
    1. [初出の実例]「歌を一首つつよませて、そのうへでいひ付うと思ふが汝はよまふか」(出典:虎明本狂言・竹の子(室町末‐近世初))

こと‐づ・ける【言付・託】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ことづ・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ( 古くは「ことつける」 )
  2. 他のことにことよせる。口実を設ける。かこつける。託す。
    1. [初出の実例]「はかなき事にことつけて世中をうしと思て」(出典:塗籠本伊勢物語(10C前)二一)
  3. 人に頼んで、先方にことばやものなどを伝えてもらう。伝言する。依託する。
    1. [初出の実例]「おぼつかな我がことつけし郭公はやみの里をいかて鳴くらん」(出典:実方集(998頃))

い‐つ・ける【言付】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙 「いいつける(言付)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「又車屋の神さんにいつけられますよ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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