日本大百科全書(ニッポニカ) 「言語境界線」の意味・わかりやすい解説
言語境界線
げんごきょうかいせん
違うことばを使う所との境い目に引かれる線。次のような場合がある。
(1)どんな言語・国語を使っているかの境界線。国境や海・山・川と一致することが多いが、そうでないときもある。別の言語を話す集落が飛び地として混在する場合や、一集落内や都市に異なった言語の話し手が混住する場合、住民の大多数が2か国語を話す場合などは、1本の線ではくぎれない。さらに、住民の言語と公用語とが食い違う場合もある。
(2)一言語内の方言の境界線にもいうことがある。個々の単語における言語地図上の境界を「等語線」といい、多くの単語で同じ場所を通るときに「等語線の束」というが、そこに1本の線として設定するのが「言語境界線」である。「方言境界線」ともいう。日本語の方言では、糸魚(いとい)川と浜名湖を結ぶ線が東西を分ける境界線とされる。ただ、北アルプスのあたりでは、多くの語で一致するが、東海道沿いでは、伊豆半島から関ヶ原にかけて扇のように開き、1本の線では表しにくい。
[井上史雄]