(読み)キョ

デジタル大辞泉 「許」の意味・読み・例文・類語

きょ【許】[漢字項目]

[音]キョ(漢) [訓]ゆるす もと がり ばかり
学習漢字]5年
〈キョ〉
願いを聞き入れる。ゆるす。「許可許諾許否許容允許いんきょ官許裁許聴許特許認許免許黙許
おおよその数量を表す語。ばかり。「許多きょた少許
〈もと〉「親許口許国許枕許まくらもと目許
[名のり]ゆく
難読許多あまた許婚いいなずけ許嫁いいなずけ幾許いくばく

がり【許】

《「かあ(処在)り」の音変化という》
[接尾]人を表す名詞または代名詞に付き、その人のいる所へ、…のもとに、の意を表す。
いも―と馬に鞍置きて生駒山いこまやまうち越え来ればもみち散りつつ」〈・二二〇一〉
[名]形式名詞化したもの》人を表す名詞に助詞」を介して付き、その人のもとに、の意を表す。
約束の僧の―ゆきて」〈宇治拾遺・七〉

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精選版 日本国語大辞典 「許」の意味・読み・例文・類語

がり【許】

  1. [ 1 ] 〘 接尾語 〙 ( 「が‐あり」または「か(処)‐あり」の変化した語 ) 代名詞または人を表わす名詞に付き、その人の許(もと)に、その人の所に、の意を表わす。格助詞「に」や「へ」を伴わないで、移動の意を含む動詞に直接に続く。
    1. [初出の実例]「広橋を馬越しがねて心のみ妹我理(ガリ)やりて我(わ)はここにして」(出典万葉集(8C後)一四・三五三八)
    2. 「典薬頭、清麿がり行きてしかじかと歎きいひければ」(出典:御伽草子・福富長者物語(室町末))
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( [ 一 ]用法から変化したもの ) 人を表わす名詞に、格助詞「の」を介して付き、その人の許(もと)に、その人のいる所に、の意を表わす。形式名詞のように使われるようになったもの。
    1. [初出の実例]「つとめてもなほいみじう降るに、ある人のがりやりし」(出典:阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)A)
    2. 「這ひ起きて約束の僧のがりゆきて、物をうち食ひてまかり出でけるほどに」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)七)

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百科事典マイペディア 「許」の意味・わかりやすい解説

許【ゆるし】

日本の伝統芸能用語。技芸技能伝承において,その相伝内容に初許(はつゆるし)・裏許・中許・奥許などの段階を設け,各段階ごとに,師匠から弟子伝授の印可証明(免状)を与える制度。とくに江戸時代中期以降,家元制度の確立に伴って,素人の被教習者が多い芸能諸種目において,免許組織の体系化が進んだ。免状取得には金銭授受が伴ったが,免状は,被教習者にとっては個々の技芸の到達度と,同門の仲間内での位置を明確にするものであり,一方の教授者にとっては,自らの知的所有権の確保と経済保護につながるものであった。また,免状を与えられた弟子は,さらに自分の弟子に同様な免状を与えることができるようになり,家元制度をより確固たるものにすることにつながった。こうした免許制度は,謡曲・地歌・箏曲をはじめ,茶道・花道・香道・囲碁・将棋など,数多くの実演芸能種目に及んだ。とくに地歌・箏曲などでは,免許に対する金銭的謝礼を〈許し金〉などといい〈曲許し〉と称して,場合によっては1曲だけの伝授も行われた。

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