学習の成立について、アメリカの心理学者ソーンダイクが動物実験に基づいて主張した解釈。すなわち、動物が問題状況に置かれるとさまざまな行動をおこすが、そのうち、たまたま問題解決を結果した行動、また、それに近づく行動は、その結果が満足を与え、快をもたらしたことによって強められ、状況と行動との結合を生じ、学習を成立させるというものである。
[小川 隆]
ソーンダイクは1898年『動物の知能』のなかでこの解釈を表明したが、たとえば、ネコを空腹の状態で問題箱puzzle boxの中に入れると、ひっかいたり、かんだり、さまざまに反応をするが、たまたまその反応のどれかが仕掛けに触れて脱出に成功する。彼はこれを「試行錯誤と偶然の成功」といっているが、こうした試行を重ねるうちに、しだいに脱出までの時間が短縮することが示され、これが学習成立を反映することになる。
試行のたびごとに問題箱の中の刺激作用も反応も同じではないが、効果的な結果をもたらすか否かについては、共通な面をもっている。ソーンダイクは、(1)満足を伴うかそれに近づく反応は、その刺激作用との結合を強め、不満足を伴うかそれに近づく反応は、その刺激作用との結合を弱める結果、満足に至る反応が選択されるという「効果の法則」law of effect、また、(2)満足を伴うかそれに近づく反応は、繰り返されることによって生じやすくなり、不満足を伴うかそれに近づく反応は、繰り返されればそれだけ生じにくくなるという「練習の法則」law of exercise、のちには、(3)刺激作用と反応との結合が用いられるだけ強められるという「使用の法則」law of useと、(4)用いられないと消失するという「不使用の法則」law of disuseとに分けた。刺激作用と反応との結合を強調することで、この主張は結合主義connectionismともいわれる。
[小川 隆]
試行錯誤による学習が学習成立の唯一の過程とみられないのは、ドイツの心理学者ケーラーのチンパンジーの問題解決についての研究で明らかにされた。ソーンダイクの問題箱では、問題解決の目標をネコがあらかじめ発見することはできないので試行錯誤による探索がなされる。ケーラーのチンパンジーの研究では、檻(おり)の中から手を伸ばしただけでは外のバナナがとれない状況で、チンパンジーは檻の中に置かれた棒に気づいて、突然、これをとって外のバナナをかき寄せることに成功する。この成功は、1回だけで同じ状況で再現するので、練習の法則は必要でない。ケーラーはこのような学習を「見通しinsightによる学習」と名づけたが、これに対してソーンダイクの問題箱の学習は「試行錯誤による学習」といわれる。
[小川 隆]
E.L.ソーンダイクが,動物や人間の学習を最もよく特徴づけるとして唱えた説。その後これを〈選択と結合の学習〉と呼びかえた。彼は猫用問題箱で実験をしたが(1898),この箱の外側のかんぬきは,内側の紐を飢えた猫が正しく操作すればはずれて扉が開き,箱から脱出でき,餌が食べられる仕組みになっていた。猫ははじめ脱出したい衝動から可能なあらゆる反応をでたらめにおこすが,しだいにうまく脱出し餌を食べるようになる。この試行を繰り返させ時間を記録すると,脱出所要時間は短縮されて不必要動作は消失し,目標達成に有効な一連の動作がすばやく続くだけとなり,学習は完成する。その結果,不満足な反応は起こりにくくなり,偶然の成功に導いた反応が次の試行におこりやすくなる。この現象を彼は〈効果の法則law of effect〉(有効な反応が他の反応を退けて学習が成立するとする説)で説明し,この過程を試行錯誤と呼んだ。これに対して〈洞察(見通し)〉〈あっそうか体験〉〈潜在学習〉などを学習の本質として強調するゲシュタルト心理学派やE.C.トールマンなどの立場もある。
→学習
執筆者:梅津 耕作
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