改訂新版 世界大百科事典 「語孟字義」の意味・わかりやすい解説
語孟字義 (ごもうじぎ)
江戸前期の儒者伊藤仁斎の著書。最古稿本は1683年(天和3)5月に成立し,最終稿本は原文の成立時期が未確定であるが,仁斎の補正は死去直前まで続行された。内容は南宋の朱子学者陳淳(北渓)の《北渓字義》に対抗した,仁斎学の基本的な諸概念の規定集。〈序〉で述べている意味血脈論・意思語脈論は仁斎学の方法論を定式化したものとして著名。主著《論語古義》《孟子古義》の成果をふまえた著作であるが,項目化されて便利であるため,長い間仁斎学研究上の第一文献的扱いを受けた。刊本は江戸で95年(元禄8)に無断出版されたものが最初で,荻生徂徠はこれを読んで仁斎に感激の手紙を送った。古義堂蔵版のものは,仁斎死後,伊藤東涯などが最終稿本に僅少の訂正を行って,1705年(宝永2)に2巻2冊で刊行した。《日本の思想》11(最終稿本を使用),《日本思想大系》33(刊本を使用)所収。
執筆者:三宅 正彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報