(1)平曲の分類名。書状その他の長い文書を読み上げる部分を重点とした曲。木曾義仲の命で大夫房覚明が八幡社へ願書を捧げる《願書》(《木曾願書》とも),文覚(もんがく)が神護寺復興の寄進勧誘状を読み上げる《勧進帳》,源義経が鎌倉入りを拒まれて釈明文を書く《腰越(こしごえ)》など13曲ある。読物は,〈チラシ〉〈下音〉〈上音〉〈ハコビ〉など,一般の平曲とは著しく異なる曲節の小段を含む伝授物だが,伝承が絶えたためにその詳細はわからない。
(2)能の部分名。能の中で,文書に曲節をつけ,拍子にのせて読み上げる部分。《安宅》の〈勧進帳〉,《正尊(しようぞん)》の〈起請文(きしようもん)〉,《木曾》の〈願書〉があり,これを三読物(さんよみもの)というが,《木曾》は,読物を独立させて謡うだけで,能は演じない流派や,まったく奏演しない流派がある。読物は,漢文読み下し体の散文の詞章なので,七五調を基本とする一般の部分と同じ拍子の取り方ができないために,むずかしい謡として伝授物(習(ならい))とされる。
執筆者:横道 万里雄
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