中世・近世における種々の契約の保証人。古代の保証人は,律令に債務者の逃亡に際して代償責任を負う〈保人〉の規定があったが,《令義解》では債務者の死亡も含むものと拡大解釈している。また《正倉院文書》の中にみられる貸借文書には,一般的に債務者が債務不履行の場合に代償責任を負う保証人として〈償人〉がみられる。このほか売買貸借の取引の周旋・媒介を業とする口入人(くにゆうにん)が,保人・償人と同様の代償責任を負う場合もあった。平安時代後期以降,中世を通じて保証人は一般に請人とよばれたが,公家法系においては一貫してこの請人を保人として解釈しつづけた。しかし現実にはむしろ請人は償人の性格を継承するものとして行われるケースが圧倒的に多く,事実上保人・償人の厳密な区別は不分明になる傾向にあった。請人の保証義務としては,(1)売主とともに,明沙汰(あきらめさた)(売買契約が正当であることを証言すること)をする義務,代価を弁償する義務,買主の差押えに対して抵抗しない義務などがあり,また,(2)貸借契約の支払義務,年貢徴納を請け負った所務代官の年貢納付義務,あるいは年貢負担者の納付義務を保証する場合があり,そのおもな保証義務は,債務者が債務を履行しない,あるいはしえない場合に債務者に代わって債務を弁済することであった。中世の保証人として他に口入人があり,その主たる職分は依然として取引契約の周旋・媒介にあったが,口入によって成立する債務について,慣習上請人と同等の保証義務を負った場合があり,また逆に請人が取引契約の媒介的業務を行う場合もあった。したがって中世においては請人と口入人の区別は存したものの混同されやすい側面もみられたのである。請人や口入人は,契約の証文に債務者とともに加判したので判形人(はんぎようにん)などと呼ばれたが,加判に際しては判料を徴取する場合もあった。
→証人
執筆者:小田 雄三
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…しかし1704年(宝永1)の評定所一座の取決め以後,証人は死失文言の有無にかかわらず,債務者がその債務を弁済しない場合はもちろん,その死亡失踪の場合にも責任を負うべきものとされ,両系統の保証人が一本化した。なお証人の語は江戸の奉行所で用いられ,京都,大坂の町奉行所ではこれを請人と称し,証人は原則として単なる証明人とみなされた。しかし大坂の請人は江戸の証人と若干異なる面もあったようである。…
※「請人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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