浮世草子。1766年(明和3)刊。5巻。上田秋成の処女作であるが,和訳太郎の戯名で発表。気質物(かたぎもの)の形式をうけ,15話より成る。当時の京坂の各方面に対する作者の見聞を材料として,これを特殊な性格の人物に戯画化し,失敗しかつしぶとく生きる様を,皮肉な筆致で描破している。兵法家,神道者,道具目利,相撲取,信心者,能楽師,女武道,軽業口上師,芸妓,祈禱師など諸芸諸道の徒を題材としたものが多いが,その書き方は在来の気質物とまったく異質で,〈のらもの〉的発想や荒唐世説(とりじめもなきよそごと)を生かしている。正統と異端,価値的なものと反価値的なもの,真性と疑似,善悪の変換などが,重要な特徴となる。詐術を一種の生活の知恵とし,騙(かた)ることを生活に変化あらしめる工夫としながら,封建社会の閉鎖的現実を巧みに生きぬいてゆく人物像を描いた傑作。
執筆者:森山 重雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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