精選版 日本国語大辞典 「豚肉」の意味・読み・例文・類語
とん‐にく【豚肉】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
食用肉の一種。ハム、ソーセージなどの加工原料としての用途も大きい。脂肪はラードとして利用される。
[河野友美]
ブタの先祖である野生のイノシシは、アジア、ヨーロッパに広く分布していた。そのため、イノシシを食用にすること、また、イノシシを捕らえて飼育することは早くから中国やエジプト、ギリシアなどで同時発生的に行われている。中国では紀元前2200年ごろにはすでにブタが飼育され、豚肉は羊肉とともに重要な食肉となっている。また、古代エジプトの原始農耕時代(前5000以降)に養豚が行われていたことが壁画にうかがえる。古代ギリシア(前2000ころ)では豚肉を食べることが一般的に広がり、ハムやソーセージのような肉加工品もつくられている。一方、イスラム教やユダヤ教、ヒンドゥー教では豚肉をタブー視し、徹底して豚肉を避けている。中国のように豚肉を多く食べる国では、イスラム教徒専門の飲食店が存在し、主として羊肉や牛肉を用いている。
日本では、縄文・弥生(やよい)時代の貝塚からイノシシの骨が出土しており、なかには鏃(やじり)の刺さったままの骨片もあった。銅鐸(どうたく)には、イヌを使い、弓矢でイノシシを狩る図も描かれている。この時代、イノシシの肉はシカの肉とともにもっとも多く食用とされていた獣肉である。『古事記』には、天皇の食事を奪った山代(やましろ)の猪甘(いかい)の伝承があり、猪甘(猪飼)部の部民がイノシシを飼養しながら天皇の食事にも奉仕していたことを思わせる。このとき飼養された「猪(いのしし)」が、家猪(かちょ)すなわちブタ(豚)であったか、野猪すなわちイノシシであったのか諸説あるが、おそらくはイノシシは家畜化に至らず、したがってブタの飼養も行われなかったと思われる。中国の影響を受けて、沖縄地方で早くから豚肉が食用とされていた(室町中期には豚肉を用いた沖縄料理のあったことが記録にある)。江戸時代には、沖縄から養豚が鹿児島に伝わり、鹿児島でも豚肉を食用とすることになった。また、とくに長崎では中国から養豚が伝わり、長崎に在留する外国人のためにも養豚と豚肉を食べることがかなり一般化していた。明治になって肉食が奨励されたが、豚肉よりも牛肉が中心で、豚肉が全国的に普及したのは明治中ごろからである。
[河野友美]
豚肉は淡紅色で肉質が柔らかく、脂肪が肉と層状になっている。牛肉や鶏(とり)肉に比べ一般に脂肪が多いと思われているが、近年は嗜好(しこう)の変化から脂肪の少ない品種に改良され、ヒレ、もも肉など部位を選べば、むしろ他の肉より脂肪は少ない。豚肉の脂肪は融点が低いので、口中で滑らかな感触がある。脂肪層が白くて餅(もち)状のものがよい豚肉である。部位は通常、かた肉、かたロース、ロース、ばら肉(三枚肉ともいう)、ヒレ、もも、そとももに区分される。ヒレはもっとも柔らかい部分で、脂肪も少ない。ばら肉は脂肪がもっとも多く、ベーコンに加工される部分である。中国、沖縄など豚肉の利用の多い所では、以上の肉のほかにあらゆる部分が利用される。あばら骨(スペアリブともいう)、足、頭、皮、耳、鼻、内臓、血液などいろいろに特有な料理にされる。
[河野友美]
脂肪、タンパク質のよい給源で、ビタミンでは牛肉や鶏肉に比べB1が多い。とくにヒレ、もも肉など脂肪の少ない部位にビタミンB1が多く、牛肉や鶏肉の約10倍含まれる。脂肪は牛肉に比べ、リノール酸が多いのが特徴。
[河野友美]
有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)などの寄生虫の心配があるので生食を避け、よく火を通す必要がある。料理にはカツレツ(とんかつ)、ステーキ、ローストポーク、バター焼き、しょうが焼き、焼き肉、酢豚、豚汁、炒(いた)め物、煮込みなどが一般的。焼き豚(または焼き肉)は、しょうゆ、酒、スパイスで調味したロースまたはもも肉をあぶり焼きしたもの。沖縄料理には数多くの豚肉料理があるが、代表的なものは、らふてー(沖縄風ブタの角煮)、コンブとあばら骨を煮込んだそーき骨の汁物、足てびち(足とコンブを薄味に煮込んだもの)などがある。また、保存のため塩漬け豚肉をつくり、これを料理に用いる。ドイツ料理のアイスバイン(もも肉の塩漬け)、アメリカ料理のポークビーンズなど各国に豚肉料理がある。
[河野友美]
『畑田勝司監修、食肉通信社出版局構成・編『豚枝肉の分割とカッティング 豚肉を商品化するまで』(2002・食肉通信社)』▽『石川楨三著『豚肉を極める――おいしい豚肉づくりに賭ける』(2004・グラフ社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…このような家畜の徹底的収奪は他の地域にはあまりみられない。中国では牛は耕作用として盛んに利用されてきたが,伝統的な中国料理は豚肉が中心で,原則として牛肉は登場しない。牛は人間のために働いてくれたので,食肉にするにはしのびないとする。…
※「豚肉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
冬期3カ月の平均気温が平年と比べて高い時が暖冬、低い時が寒冬。暖冬時には、日本付近は南海上の亜熱帯高気圧に覆われて、シベリア高気圧の張り出しが弱い。上層では偏西風が東西流型となり、寒気の南下が阻止され...
11/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/26 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典を更新
10/19 デジタル大辞泉プラスを更新
10/19 デジタル大辞泉を更新
10/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
9/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新