貸す(読み)カス

デジタル大辞泉 「貸す」の意味・読み・例文・類語

か・す【貸す】

[動サ五(四)]
自分の金や物などを、ある期間だけ他人に使わせる。「友人にお金を―・す」「本を一日―・す」「タバコの火を―・す」⇔借りる
使用料をとって、ある期間他人に利用させる。「アパートを―・す」「土地を―・している」⇔借りる
能力労力などを他人に提供する。「手を―・す」「肩を―・す」「耳を―・そうともしない」「お力を―・して下さい」⇔借りる
[可能]かせる
[類語]貸し出す用立てる貸し切る貸し付ける貸し渋り貸与貸し付け融資金融融通又貸し転貸賃貸前貸し貸し金貸し切りローンレンタルリース

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精選版 日本国語大辞典 「貸す」の意味・読み・例文・類語

か・す【貸】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. あとで返してもらう約束で、一時的に他人に金銭物品を渡す。また、ある期間、場所を使わせる。
    1. [初出の実例]「奈呉の海に船しまし可勢(カセ)沖に出でて波立ち来やと見てかへり来む」(出典万葉集(8C後)一八・四〇三二)
    2. 「一年(ひととせ)にひとたび来ます君まてば宿かす人もあらじとぞ思ふ」(出典:伊勢物語(10C前)八二)
  3. 遊里で、ある客の相手をしている遊女を、他の客に回す。遊女、または先客からいう語。
    1. [初出の実例]「一時程のうちに、七八度宛(づつ)かす程に、さてもはんじゃうの所ぞ、馴染の客数も有かと下を睨(のぞ)けば」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)五)
  4. 体の一部を人のために使わせる。労力、能力、時間などを人に提供する。仮す。
    1. [初出の実例]「彦様 一寸(ちょっと)耳かしトささやき」(出典:洒落本・当世嘘之川(1804)四)
    2. 「敢て拯(すくひ)の手を藉さんと為るにもあらで」(出典:金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉続)
    3. 「何ぞ智恵貸してくれへんか」(出典:卍(1928‐30)〈谷崎潤一郎〉一五)
  5. ( 動詞の連用形に助詞「て」を添えた形に付いて補助動詞のように用いる ) 相手にしてやる。また、してくれる意を表わす。
    1. [初出の実例]「こなた何ぞ落したか、尋ねるのなら、火をともしてかしてやりましょ」(出典:浄瑠璃・奥州安達原(1762)四)

貸すの補助注記

( 1 )近世以前は「借」の字を用いることが多かった。
( 2 )用法は連用形が命令法として用いられ、「…てくれ」の意となるが、「かしんか」「かしい」となる場合もある。「十界和尚話‐五」の「咄してかしんか」、「浪花聞書」の「何何してかしいはしてくれ也」など。


いら・す【貸】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙
  2. 貸す。貸し付ける。⇔借(いら)う
    1. [初出の実例]「中戸より以下に与貸(イラシ)たまふ応し」(出典:日本書紀(720)天武四年四月(北野本訓))
  3. ものを貸し付けて利益を得る。利子をかせぐ。
    1. [初出の実例]「酒を作り、利(うまはし)を息(イラシ)〈国会図書館本訓釈 息 イ良之〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)

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