磁気あらし主相の中低緯度地域における磁場変化の原因となる,地球をとり巻く西向きの電流系をいう。磁気圏には,放射線帯粒子に代表される高エネルギー荷電粒子が磁場に捕捉されている。これらの粒子は,磁力線に沿って南北に往復運動するとともに,磁場のこう配によって正の荷電粒子は西向きに,電子は東向きにドリフト運動する。このような運動の結果,粒子の圧力分布のこう配とローレンツ力が釣り合うように地球をとり巻く形で電流が流れる。圧力こう配が外向きの場合は,西向きの電流による力と釣り合う。磁気圏では,おもに10~100keVのエネルギーをもつ陽子により赤道環電流が形成されており,電流の中心は3~4RE(REは地球半径)の領域にある。この環電流による地球上での磁場変化は,磁気圏に存在する荷電粒子の全エネルギーにほぼ比例することが理論的に求められる。大きな磁気あらし中には,中低緯度で250nT程度の南向き磁場が観測されるが,これに寄与する粒子の総エネルギーは約1024ergになる。磁気圏の捕捉粒子はつねに存在するので,地磁気が静穏な場合でも,数十nTの南向き磁場が環電流効果として残っていると考えられている。環電流の効果を量的に表す指数として,緯度30°付近での地磁気観測を基にして作成されたDst指数(単位nT)が用いられている。
執筆者:国分 征
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