足摺(読み)あしずり

精選版 日本国語大辞典 「足摺」の意味・読み・例文・類語

あし‐ずり【足摺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 足を地にすりつけるようにじだんだを踏むこと。嘆いたり、怒ったりする時の動作にいう。
    1. [初出の実例]「立ち走り 叫び袖振り 返側(こいまろ)び 足受利(あしズリ)しつつ」(出典万葉集(8C後)九・一七四〇)
    2. 「あしずりといふ事をして泣くさま、若き子供のやうなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
  3. 足がもつれること。
    1. [初出の実例]「跎 タフル マロフ タカヒニ ヒサマツク アシスリ」(出典:観智院本名義抄(1241))

足摺の語誌

あしずり」の動作の実態については一般に「じだんだ」と解されている。これに対して、倒れた状態で泣きながら足をこすり合わせる、子供などの動作を表わすという説がある。また、「あしずり」の「摺」の動作に着目し、足と足とを摺り合わせたり、足を地面などに摺り合わせ、こいまろぶ動作や倒れ伏す動作を表わすとする見方もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「足摺」の意味・わかりやすい解説

足摺 (あしずり)

平曲曲名。平物(ひらもの)。フシ物。平氏政権転覆の謀議の罪で鬼界ヶ島に流されたのは,俊寛僧都・丹波少将成経・平判官(へいはんがん)康頼の3人だった。清盛の娘の中宮が懐妊し,安産祈願特赦で使いが島に赴く。だが赦免状に自分一人の名だけがないと知り,俊寛は夢かとばかり嘆き悲しむ(〈三重(さんじゆう)〉)。すでに舟は島を離れ,俊寛は浜辺足摺りをして乗船をせがむ。遠ざかる舟影を求め,俊寛は高所に登って見送るが(〈三重〉),とうとうそこで夜を明かしてしまった。〈三重〉が聞き所。能《俊寛》の原拠
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