精選版 日本国語大辞典 「身上」の意味・読み・例文・類語
しん‐しょう ‥シャウ【身上】
〘名〙 (「しょう」は「上」の漢音)
※田氏家集(889‐898頃)上・春日野寺道心「此外更無二身上事一」
※こんてむつすむん地(1610)三「しんしゃうのなげきをしっかい御身にまかせ奉らぬものは、あやうからずといふ事なし」
※滑稽本・岡釣話(1819)「ありやを落したへ、とんだしんしゃうをしたの」
※寸鉄録(1606)「ちいんのぎりなりとおもひて、かたはなをもちて、そのもののしんしゃうもわれも、はつるをけっこうとをもふつれぞ、これを『非義ノ義』といふなり」
※申楽談儀(1430)神事奉仕の事「神事を本にして、その間の身しゃう助からんための、上下なり」
⑤ (「身上にありつく」「身上をかせぐ」などと用い) 生活を安定させたり、財産を得たりするための手段・方法。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「今は昔、浮世房が止まりける御大名の家中へ身上(シンシャウ)を稼ぐ者あり」
※浮世草子・西鶴織留(1694)二「身上(シンシャウ)爰に極めて一日暮しに年をかさね」
⑥ 給金。芝居者の間に用いられる語。
※南水漫遊拾遺(1820頃)四「楽家通言〈略〉しんしゃう 給金の事」
⑦ 心の中。
しん‐じょう ‥ジャウ【身上】
〘名〙
① 体の表面。
※太平記(14C後)一二「山城国笠置と云ふ深山に一の厳屋を卜め、落葉を攅(あつ)めて身上の衣と為し、菓(このみ)を拾うて口食と為して」
※車屋本謡曲・蝉丸(1430頃)「髪は身上よりおひのぼって星霜を戴(いただ)く」 〔白居易‐新楽府・売炭翁〕
② 一身にかかわること。みのうえ。しんしょう。
※経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉前「諸有志者の身上に不測の大難を堕せしめんとは」 〔南史‐庾仲文伝〕
③ 財産。身代。しんしょう。
※落語・お若伊之助(1897)〈三代目春風亭柳枝〉「何万円と身上(シンジャウ)を持って居ながら洒落た遊びをなさると云ふ」
④ 本来のねうち。最大の取り柄。本領。しんしょう。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一〇「長火鉢は拭き込んでてらてら光る所が身上なのだが」
⑤ 給金。芝居者の間に用いられる語。しんしょう。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕
⑥ (感動詞的に用いる) うまくいったこと。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「『二百下(さが)る』『身上身上(シンジャウシンジャウ)』」
[補注]②③④の用法については「しんしょう(身上)」と重なり、清濁の区別は判然としないが、現代では、特に②は多く「しんじょう」という。
み‐の‐うえ ‥うへ【身上】
〘名〙
① 自分の一身にかかわること。我が身のこと。また、自分の境遇。しんじょう。
※万葉(8C後)五・八九七「老いにてある 我が身上(みのうへ)に 病をと 加へてあれば」
※仮名草子・竹斎(1621‐23)下「いや何事も身のうへに覚えの無きと申けり」
② 一生の運命。一身上の大事。
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)下「此やう成ふるびたるおてらに、みやこのこくしの、やどふだを御うちありたは、ひじりの身の上とおぼしめし」
③ 世間の評判。面目。また、体面。江戸時代、役者の社会でいう。
※洒落本・仕懸文庫(1791)二「そんなことをいっておくんなせへすな、わっちが身のうへでござりやす〈身の上とは役者の通言〉」
しん‐しょ【身上】
〘名〙 (「しんしょう(身上)」の変化した語)
① 経済状態。暮らし向き。また、財産・資産。
※随筆・胆大小心録(1808)一一二「しん上ならずは江戸へことおしゃる、江戸はしんしょのさだめかや」
② 本来のねうち。もちまえ。
※当世花詞粋仙人(1832)「もちまへの事を、しんしょ」
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