原子,分子などの多電子系のハミルトニアンは,電子間クーロン反発エネルギーの項
e 2/rij(eは電子電荷,rij は電子i,j間の距離)
を含んでいるので,厳密な固有関数を求めることが不可能である.この際,もっとも用いられる近似は,個々の電子にはたらくポテンシャルをなんらかの形で平均化し,その電子の座標のみに依存させるようにする,いわゆる一体近似である.この近似によると,ハミルトニアンは個々の一電子ハミルトニアンの和の形で表され,その結果,固有関数は,1個の電子の座標のみに依存する関数,すなわち,一電子関数の積またはその一次結合で与えられる.ここで得られる一電子関数を,一般に軌道関数といい,原子の場合を原子軌道関数(atomic orbital,AO),分子の場合を分子軌道関数(molecular orbital,MO)とよぶ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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