翻訳|ooze
陸地から遠く離れた深海底に沈積した遠洋堆積物の中で,生物の遺骸を重量で30%以上含むものを遠洋軟泥pelagic ooze(一般に略して軟泥)といい,石灰質軟泥とケイ質軟泥に分けられる。貝殻やサンゴ片が大量に堆積して生じた浅海の堆積物は軟泥とは呼ばない。
海には多くの種類の生物が無数に生活しているが,死ぬと肉体部分は分解し,炭酸石灰,リン酸石灰,ケイ酸などでできた殻や骨は海底に泥や砂とともに堆積する。遠洋海域で最も多量なのはプランクトンであって,そのうち石灰質殻をもつものは有孔虫類(原生動物),ココリス類(藻類),翼足類(軟体動物),異腹足類(軟体動物),ケイ酸質殻をもつものはケイ藻類,放散虫類(原生動物),ケイ鞭毛藻類である。これらのうち翼足類,異腹足類,ケイ鞭毛藻類は量的に多くはない。これらの生物が堆積物中に含まれる割合は,(1)それらの生物が表層の海水中で生産される割合,(2)その死殻が海底に沈降するまでに溶解あるいは大型生物に捕食される割合,(3)海底において海水で溶解される割合と陸源砕屑物(泥)の堆積速度,によって決まる。(1)に関しては,一次的生産者である植物性プランクトン(ケイ藻など)の繁殖に必要な栄養塩類(リン酸塩,硝酸塩,ケイ酸塩)の多い海域,すなわち湧昇流の強い海域に軟泥が分布する。(2)に関しては,海底に到達する生物殻の数は表層水中の殻の数の1~10%にすぎないといわれる。(3)に関しては,石灰質殻はケイ質殻より溶けやすく,水深4500~5000m以深では石灰質殻は完全に溶解し,ケイ質軟泥や褐色粘土が分布し,浅所に石灰質軟泥が分布している。陸源砕屑物の堆積速度が速いほど生物殻が含まれる割合は小さいが,遠洋海域では陸源砕屑物の堆積は一般に非常に低いので無視できる。以上に述べた(1)と(3)によって石灰質軟泥,ケイ質軟泥の分布が決まる。軟泥中には底生有孔虫,貝殻,ウニのトゲ,カイメンの針骨が少量含まれている。
→海底堆積物
執筆者:内尾 高保
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…海洋堆積物の一種。生物の遺骸を重量の30%以上含む堆積物を軟泥oozeと呼び,その成分によりケイ質軟泥と石灰質軟泥に大別される。ここでケイ質とは,石英(結晶質シリカSiO2,おもに陸源)ではなくて,生物体を構成する,水分子を持つ非晶質シリカ(オパール質シリカSiO2・nH2O)を多く含むという意味である。海水中からシリカを抽出してオパール質シリカの殻をつくり,その死殻が堆積物中に保存される生物はケイ藻,放散虫,ケイ質鞭毛藻とカイメンである。…
…第2の供給源は海底・海水中の生物で,特に表層水(100m以浅,特に50m以浅)中で繁殖する各種の微小な植物性・動物性プランクトンで,その死骸は海底へ沈降し,マリン・スノーと呼ばれる。この死骸が堆積物の重量で30%以上のものは軟泥(石灰質軟泥,ケイ質軟泥)と呼ばれる。このほかに海水中に溶解している元素が熱帯・亜熱帯の浅海で無機化学的に沈殿して生じる石灰岩・セッコウ・岩塩などの蒸発岩がある。…
…海洋堆積物の一種。生物の遺骸を重量の30%以上含む堆積物を軟泥oozeと呼び,その成分によりケイ質軟泥と石灰質軟泥に大別される。ここでケイ質とは,石英(結晶質シリカSiO2,おもに陸源)ではなくて,生物体を構成する,水分子を持つ非晶質シリカ(オパール質シリカSiO2・nH2O)を多く含むという意味である。…
※「軟泥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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