180度転回させると水銀柱が切れてそのときの示度を保持する特殊な温度計で,海洋などで水中の温度を測定するのに使用される。水圧が示度に変化を及ぼす被圧式と,そうでない防圧式があり,通常,被圧式と防圧式を同時に使用し,温度と深度を求める。被圧式では水圧に相当した分だけ,示度が余分に上昇するため,防圧式との差から水圧を求め,水圧から深度を算出する。分解能は1/100℃で0.5%ほどの精度で深度が算出できる。1本のワイヤに連装した転倒採水器にとりつけ,10層以上の各層を同時に観測することが多い。製作に高度の技術を要し,新田次郎の短編小説《ガラスと水銀》(1957)にとり上げられている。
執筆者:平 啓介
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