改訂新版 世界大百科事典 「転造」の意味・わかりやすい解説
転造 (てんぞう)
rotary forming
歯車のように歯数だけの回転軸対称をもつ物体を製造する場合に,回転と周期的な圧縮とを組み合わせて材料を加工する方法。型になる工具には歯車の形をしたロールが用いられ,徐々にかみ合せを深めていきながら,しだいに歯車の形が成形される。昔は経験と勘とを頼りに加工が行われたが,現代ではコンピューターによる設計(CAD)で親になる歯車工具の形を製品形状に対し適切に決定することが行われている。
ボルトのねじ切りも,切削加工でなく転造で加工することができる。斜線状に溝を切った2個の平ダイスまたは丸ダイスの間で下地になる丸棒を回転させながら鍛造すると丸棒にねじを切ることができる。この場合は,材料は押し込まれて谷となり,盛り上がって山となるのであり,山の表層の材料も谷の表層の材料ももとは円筒の同一表面にあった材料である。
材料を回転しながら,ある周期で加工を加え,さらに材料を送ると,らせん状に加工パターンをつけることができる。パチンコの玉などもこのパターンで加工を進め,一つ一つの玉がほぼ球形になるまで成形したのち切り離し,最終仕上工程を経て製品とする。工具と材料の相対運動をプログラムすることにより,かなりの変化のある製品を1台の装置でつくることができる。
執筆者:木原 諄二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報