日本大百科全書(ニッポニカ) 「輪転印刷機」の意味・わかりやすい解説
輪転印刷機
りんてんいんさつき
版を円筒に巻き付け、これと紙とを円筒で押し付け印刷する形式の機械。版は凸版(普通は鉛版)、平版、凹版(グラビア)いずれでもよい。平版の場合はゴム布(ゴムブランケット)を巻き付けた円筒を1本追加してオフセット輪転機とする。紙は枚葉紙(A判、B判など一定のサイズに断裁された紙)の場合もあるが、一般にウエブ(巻取紙)を用いる。ほかの印刷機械に比べて高速であり、版胴の回転数は毎時数万回である。印刷された紙は、壁紙や包装紙のように連続模様の場合は再度巻き取ってしまうこともあるが、新聞や雑誌を印刷するときは適当な長さと幅に切って折り、四つ折、八つ折の形で排出する。
新聞輪転機の場合は、たとえば半円形にした1ページずつの鉛版を幅4ページずつ、計8ページを1個の円筒につける。これを二組つくって表と裏を印刷する。1回転すれば16ページ新聞ができる。新聞用紙はインキの吸収がよい更紙(ざらがみ)を使うので、とくにインキ乾燥機はつけない。
雑誌やチラシなどを印刷するオフセット輪転機は特殊なものを除き多色印刷が可能であるから4色刷れる機械が多い。表裏を同時に刷ってしまう形式をユニット型という。あまり目にすることはないが、巨大な一つのシリンダーの周囲に印刷部を4個つけた機械を、その形からサテライト型という。ユニット型は構造が簡単であるが、紙の伸びがあって印刷にずれがおこりやすい。サテライト型は、ずれがおこらないが構造が複雑である。オフセット輪転機に用いるインキは熱によって乾燥するから熱風(温風)の乾燥機が必要である。
グラビア輪転機は比較的簡単な構造で、版胴をインキ溜(だめ)にどぶ浸(づ)けし、余分なインキをドクターという刃でかき落とし、版胴の凹部にインキが詰まった状態で紙と接触させる。インキは溶剤の多い組成なので乾燥が速い。空中に溶剤が飛ぶと火災の危険を生じ、作業者に有害であるから、印刷部全部あるいは一部をケースの中に収め、外部に溶剤が揮発しないようにし、回収装置もつける。グラフ雑誌や週刊誌のグラフページ、あるいは包装紙、壁紙、化粧板の印刷に利用される。
[山本隆太郎]