農業機械工業
のうぎょうきかいこうぎょう
農業用機械器具を製造する産業部門。機械化による省力化と生産性向上で農業経営の安定化を目指す農家の需要に恵まれて,ほぼ順調に生産額を伸ばしてきた。 1953年の農業機械化促進法の制定も同工業の伸長に寄与している。作物の種類や栽培技術の変遷,農村の好不況といった外部要因によって需要が左右されるのは当然であるが,1960年代になると農業機械の進歩と普及がそうした変動をかなり吸収できるほどとなった。 70年以降の減反政策,米価の停滞などによって農家の農機需要が減退し,業界に危機をもたらしたため,巨大機械メーカーの寡占化が進行した。近年では,農産物の自由化や農業への就業の減退などにより,経営は一層厳しい状態におかれている。特に米自由化問題は米作機械が主力である農業機械メーカーにとっては重大な問題であり,経営の多角化や海外市場への進出などの方策が模索されている。
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のうぎょうきかいこうぎょう【農業機械工業】
農業用の機械器具を製造する産業部門。農業機械とは,稲,麦,雑穀,いも類,豆類,果樹,野菜,工芸作物(タバコ,イグサなど),畜産,養蚕などの営農作業に使われる機械の総称である。営農作業は整地耕耘(こううん)作業から,収穫調製作業などまで数段階に及ぶため,機械の種類が多い。用途別にみると,整地耕耘用機械(装輪式トラクター,動力耕耘機など),栽培用機械(田植機,野菜苗移植機など),管理用機械(噴霧機,散粉機など),収穫調製用機械(稲麦刈取機,刈払機,コンバイン,脱穀機,籾すり機,乾燥機など),飼料用機械(飼料さい断機など),穀物処理機械(精米麦機,製粉機械,製めん機など),製茶用機械などがある。
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「農業機械工業」の意味・わかりやすい解説
農業機械工業【のうぎょうきかいこうぎょう】
早くから農業機械化の進んだ米国で19世紀後半に確立,今日も同国が最大。日本では1920年代から生産が始まったが,本格化は耕耘(こううん)機などの爆発的普及をみた1950年代後半からである。特に1960年代には農村労働力の流出傾向が定着したこと,コンバイン,刈取機の新機種が商品化されたこともあって広く普及した。しかし1970年代は米の生産調整などで低迷,業界再編,輸出拡大が図られた。2012年の出荷額は4348億円。→農業機械
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