農業生産に用いられる機械の総称で,広義には圃場(ほじよう)で作物生産のために使われる圃場機械,収穫物を調製加工するための農産機械,さらに畜産に用いる畜産機械などを含めたものをさす。また機械だけでなく,農作業のための道具類も含めた農機具の意味で用いられることもある。しかし狭義には,収穫にいたるまでの作物生産に労働手段として用いられる圃場機械をさす。農業機械は直接作業をする作業機械と,これに動力を供給する原動機ないし動力機械とに分けることができる。土を耕すプラウや灌漑水をくみあげるポンプは作業機械であり,プラウをつけて引っぱるトラクターやポンプを動かす電動機は動力機械である。しかし動力機械と作業機械が一体になって自走するコンバインのような機械もある。また農業機械の中には,トラクターのように移動しながら作業する移動機械と,ポンプのように機械が固定している定置機械とがある。農業機械のほとんどは移動機械といってよい。
土を耕す耕耘(こううん)作業にはじまって,収穫にいたる各種農作業に使われる農業機械はさまざまであるが,代表的なものをあげれば表のごとくである。農作業は種類が多く,機械が直接相手にする作業対象も多岐にわたるので,農業機械の種類も多い。工業機械と異なって,農業機械には次のような特質がある。第1に農業機械は作物生育の各段階の適期に作業をしなければならず,作業の順序や時期を変えることは一般に許されない。このように時間的な制約を強くうける。第2に作物は圃場に固定しており,機械が動きまわって作業をしなければならない。自動車の製造ラインのように作業対象である部品が移動し,機械が固定しているほうが機械化しやすいが,農業機械では逆で,作物の位置に機械を正確にもっていかなければならない。すなわち,圃場という空間的制約をうける。第3には作物という傷つきやすく,固体差の大きいものを対象としている。耕耘のように土壌を直接の対象とする機械も,その目的は作物生育によい播種(はしゆ)床を作ることにあるから,生物の適性を考えなければならない。このように,生物を扱うという物性上の制約がある。
また農業機械は1年のうちその作業の適期間にしか使われず,工場のように毎日同じ機械を熟練した運転者が使うのと異なる。さらに田畑の土壌条件が一つ一つ違うように,機械の使用条件が少しずつ異なっている。このためいろいろな条件に適合できるとともに,慣れない運転者も容易にとり扱え,しかも安全であることが必要である。とくに日本のように兼業農家が大部分で,農業従事者に比較的婦人や老人が多い国では,操作が簡単で安全な機械が望まれている。
世界の農業機械の発達をたどれば,その始まりは,前2000年ころエジプトで用いられたシカの角で造った犂(すき)と考えられている。その後曲り木が用いられ,だんだん構造の進んだ木製プラウに発展したとみられる。これらは初めは人が引っぱったが,後には牛馬にひかせるようになった。18世紀の末には鋳鉄製のプラウが作られるようになり,その性能は飛躍的に向上した。19世紀後半に蒸気機関をのせたトラクターが出現するに及んで初めて農業に機械力が使われるようになった。しかし蒸気トラクターはあまりにも重く,軟らかい圃場をプラウをひいて走り回ることができなかったので,プラウをケーブルで牽引(けんいん)して土を耕す方法がとられた。20世紀に入りガスエンジントラクターや石油機関をのせた軽いトラクターが普及するとともに,プラウはトラクターにつけられて作業をするようになった。
土を耕すことと並んで,収穫作業は多くの人手を要し,古くから機械化が試みられた作業の一つである。有名なものには1世紀のころ用いられたゴール人(ガリア)の穂刈機や4世紀ごろローマで用いられた穂刈機がある。これは雄牛に押させた車の前にくし状の歯を並べてムギの穂だけを刈りとるもので,穂だけを収穫するもっとも原理的に進んだ収穫機と考えられる。その後千数百年にわたって収穫作業は鎌を使って人力で行われていたが,19世紀はじめに畜力用のモーアが開発され,畜力を用いて作物を刈り倒すことができるようになった。その後,刈り倒しながら結束するバインダーが発明された。また脱穀作業のためのスレッシャーも開発された。スレッシャーは家畜の牽引力を回転力に変える畜力機で駆動された。また後には蒸気トラクターとともに用いられた。刈取りと脱穀を一度に行う作業機がいわゆるコンバインであるが,19世紀後半には数十頭の馬にひかせたコンバインも出現した。しかし,まもなくトラクターがとって代わり,後には自走式コンバインが普及するようになった。
日本では古来,中国,朝鮮から伝わった畜力用の犂が用いられていた。明治の初めごろ,これに改良が加えられ日本特有の短床犂(たんしようり)が出現した。犂による耕起作業の後には,同じく牛馬に引かせたまぐわ(馬鍬)による砕土や代搔(しろかき)作業が行われた。明治時代まで畜力が一般的に用いられたのはこの2作業くらいで,他はほとんど人力であった。したがって1ha当りの稲作労働時間は2000時間をこえていたと推定されている。日本で農業機械化がはじまったのは大正時代である。小型石油発動機(エンジン)や電動機が明治末期に国産されるようになり,まず灌漑や排水に用いられたが,その後,もみすり,精米,製茶,デンプン製造に用いられるようになった。いずれにせよ当時の発動機は重く,圃場移動作業には適さなかった。
昭和に入って動力脱穀機が普及し,それまでの足踏脱穀機や千歯扱き(せんばこき)にとって代わるようになった。しかし圃場での移動作業の機械化はまだであった。大正時代に動力耕耘機がアメリカやスイスから輸入されたが,畑地用として造られたこれらの機械は,水田には適合せず,十分な性能を発揮できなかった。1935年ころから国産の耕耘機の開発が行われ一部の地方で用いられたが,本格的な普及がはじまったのは第2次世界大戦以降である。第2次大戦中は労力不足もあって,とくに動力噴霧機による防除や脱穀機の機械化が,共同作業の形で行われた。
第2次大戦後の機械化は,動力耕耘機の急激な普及で象徴される。水田で用いられる動力耕耘機は泥田の重作業のため,故障が多く,耕深が浅いなど問題が多かったが,改良が重ねられて十分な性能をもつようになった。さらに昭和20年代の後半には輸入機械の影響を受けて,ティラーと称される小型軽量の耕耘機が,畑の中耕など管理作業を中心として用いられるようになった。脱穀も自動脱穀機が普及し,手で稲束をもって扱く必要がなくなった。しかし直接作物を扱う田植機と収穫機の機械化は容易ではなかった。これらの作業の機械化が本格的に進みはじめたのは,1965年ころになって,田植機とバインダーが市販されはじめてからである。これに続いて日本で開発された自脱コンバインが普及しはじめた。また,このころから乗用トラクターがのびはじめ,それまでの耕耘機中心の〈歩く農業〉から〈乗る農業〉へと変化してきている。このような機械化の発展を主要機械の普及台数で示したものが図2である。
現在では稲作についてはすべての作業が機械化されている。しかし労働時間はまだ1ha当り700時間近くを要している。イネの直播(ちよくはん)が普及すれば労働時間はさらに下がり,生産費も減ることが期待されており,技術開発が進められている。イネ,ムギ以外の作物については必ずしも一貫した機械化作業体系ができておらず,現在まだ機械化されていない諸作業のための機械の研究開発が行われている。
→農具
農業機械を農業生産の場に導入し,利用することを農業機械化という。農業機械工業が生産する農業機械がハードウェアとすれば,機械を農業の場でいかに有効に利用するかを示す技術である農業機械化はソフトウェアといえよう。農業機械を農作業に用いることの目的には次の諸点がある。(1)作業の能率をあげ,労働生産性を高める。(2)作業の質や精度を上げて土地生産性を高める。たとえば深耕によって増収をはかるなど。(3)作業を適期に行うことによって収穫物の量および質の向上をはかる。(4)労働を軽減する。たとえば人力で土を耕すのにくらべ,乗用トラクターで耕耘するときの労働強度は数分の1ですむ。これらの点を通じて,農業の生産性を高めて食糧の安定供給をはかり,また収益性を高めたり,適正な労働環境を作ることによって,豊かな農村生活を実現することが機械化の究極の目的である。
機械化にあたってはまず機械の導入計画を立てることになるが,計画の基礎になるのは機械の性能,能率と経済性である。性能とは必要な作業ができる機械であるか,圃場条件などに適しているかどうかということである。能率は本来機械の作業幅と作業速度の積に比例するものであるが,機械が作業適期内に何haの面積を作業できるかで表される。これを機械の負担面積という。また実際の作業時間と,負担面積を作業するのに必要な時間の比を機械利用効率と呼び,これで機械の利用度の指標としている。経済性は機械の利用経費の計算が基礎になる。通常同一経営条件の下では,利用効率が高くて,利用経費が最小である機械を選ぶことになる。しかし日本のように兼業農家が80%をこえるところでは,必ずしもこのような考えのみで機械化は行われない。日曜日だけで作業がすむ機械を求めるからである。したがって日本では農業機械の利用効率は一般に低い。利用効率を向上させるには,機械の利用形態や利用組織を考えなければならない。たとえば機械の共同利用,賃作業,農業機械銀行,委託経営(農業経営受委託)などの方法がある。共同利用は機械を共同で購入して利用する方式。賃作業は個人所有の機械を所有者が運転して作業をし料金を受け取る方式で,農協で機械を所有し,職員が賃作業をする場合もある。農業機械銀行は,ある地区内の個人所有の機械を,マネージャーが組合員に賃作業の形で斡旋し,高性能機械の有効利用をはかる組織である。委託経営は,余力のある機械をもっている人に,耕作をそっくり委託してしまうもので,一部の作業のみを委託する作業委託もある。
農業機械化が進む条件は,経営面積の大きいこと,労働力が少ないこと,機械購入のための資本が豊富なことであるといわれるが,日本では経営面積が小さく,労働力も兼業の形態が多く,農村に住みながら農業以外の職業にも従事している人が多い。したがって経営面積の割りには能力の大きい機械を所有し,自分のつごうのよいときに短時間で作業をしてしまおうとする。しかし農民にとっては,機械化による農外収入の増加や余った労力で新しい収益性の高い作物を作るなど,全体として経済性のバランスをとってきたということもできる。機械化による省力化と機械の有効利用による経費節減が今後ますます求められている。
世界の農業機械は地域や作物などによってさまざまであるが,大規模農業機械化か小規模農業機械化かで大きく異なっている。また機械力のみによる場合と畜力を用いている場合の差も大きい。以下稲作を例にとってみよう。
大規模稲作機械化をアメリカのカリフォルニアの例にみると,120haの場合で,ha当りわずか20時間程度の労働しか投入していない。まず耕耘作業は大型トラクターで行う。直播栽培で,播種,施肥,防除はすべて航空機で行う。収穫は刈幅が5mくらいのコンバインで行うというやり方である。
小規模完全機械化の例は日本である。耕耘機で土を耕し,代搔きをし,育苗施設で育てた苗を田植機で植える。施肥は施肥機または人力で,防除はスプレーヤーやダスターで,中耕除草機は一部動力除草機を用いる。収穫はバインダーか自脱コンバインで行う。バインダーの場合は天日乾燥の後,自動脱穀機で脱穀する。コンバイン収穫のあとは乾燥機で人工乾燥し,その後もみすりを行う。このようなやり方でha当り平均700時間近くの労働を投入している。
同じ小規模農業でも開発途上国では異なっている。インドネシアの稲作の一例では,耕耘は水牛と犂を用い,代搔きは同じく砕土レーキを水牛にひかせて行う。田植,施肥,除草は手で行う。防除は手押しの噴霧機を用いる。収穫はアニアニと呼ばれる指にかけて用いる小さな穂刈鎌で行い,天日乾燥ののち,バナナの木の枝などでたたいて脱穀する。鎌で根もとから刈り取って簡単な脱穀機で脱穀する場合もある。選別は風選によるが,これには手動の扇風機が使われることも多い。このような作業方法ではha当り1400時間くらいの労働がかかる。畜力も100時間前後使っている。しかし,このような途上国の農法にもしだいに機械がとり入れられるようになってきている。増大する人口を養うためには,今まで年1度の作付けを2度,3度に増やすのがいちばん確実な方法であり,そのためにはとくに耕耘作業や収穫作業の機械化が必要だからである。
農業の機械化にはエネルギーが必要である。機械を動かす燃料だけでなく,農業機械を製造するためにも多くの化石エネルギーが必要である。日本では農業に使われる化石エネルギーのうち,機械,施設のための燃料や機械そのものの製造エネルギーが約50%を占める。たしかに機械はエネルギーを費やすが,だからといって昔に戻って人力や畜力をまた使うことは不可能である。たとえば人力は平均としては1人0.1馬力しかない。牛でも0.6馬力くらいである。それに対し6馬力くらいの小さな耕耘機でも人間1人の数十倍の能力をもっている。畜力もその飼料のために土地と人力を要するため,機械化は進めざるをえない。そこで,農業機械や施設に用いる石油燃料を,できるだけ有効利用して減らしていこうとする省エネルギー技術の研究や,化石燃料に代わる代替エネルギーの開発に力が入れられている。これには太陽熱,風力,水力,地熱などの自然エネルギーと植物から得るバイオマスエネルギーとがある。太陽熱による穀物乾燥や栽培施設の加温,風車による灌漑,植物油や植物からのアルコール燃料,もみがらのような作物残渣(ざんさ)をそのまま燃やすかあるいはガス化して燃料として用いること,家畜糞尿(ふんによう)からメタンガスをとって燃料とすることなどが世界各国で行われるようになっている。
執筆者:木谷 収
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
農作業に用いられる機械の総称で、一般には農業用の各種原動機、およびこれらによって駆動される各種作業機のことをいう。圃場(ほじょう)の上で農作業を行う機械や、収穫後の調製、農産加工や貯蔵に用いられる機械が含まれる。
[井上喬二郎・谷脇 憲]
農用原動機としては、石油を利用する各種内燃機関、および電力を利用する電動機が主として使われ、一部で水車、風車が使われている。また、トラクターは、作業機を装着して牽引(けんいん)したり、PTO(Power Take Off)とよばれる動力取出し軸で作業機を駆動しながら作業を行う。トラクターには、二輪の歩行用トラクター(耕うん機やテイラー)、四輪の乗用トラクター、装軌式(キャタピラー式)、半装軌式(前輪がタイヤ、後輪が装軌である方式)のトラクターなどがある。
土をおこして種を播(ま)く準備をするための耕うん・整地用作業機としては、プラウやロータリー、砕土機などがあり、大部分はトラクターに装着して用いる。肥培管理用機械としては、田植機、移植機や、トラクター用作業機としての播種(はしゅ)機、施肥機、カルチベーター、堆肥(たいひ)散布機などがある。また防除用機械としては、噴霧機、散粉機、スピードスプレーヤーなどが使われている。
イネ、ムギなどの収穫用機械としては、刈取り機(バインダー)、脱穀機、コンバインなどがあり、調製用機械として乾燥機、籾摺(もみす)り機、精米麦機などがある。また、乾燥調製施設としてライスセンター、カントリーエレベーターなどがある。
牧草や飼料作物の収穫・調製用機械としては、草刈り機(モーア)、集転草機(レーキ、テッダー)、収穫機(フォレージハーベスター)、梱包(こんぽう)機(ベーラー)、運搬機(フォレージワゴン)などが使われている。乳牛飼育用機械としては、給餌(きゅうじ)機や糞尿(ふんにょう)処理機(バンクリーナー)、搾乳施設(バルククーラー)などが使われている。
果樹や野菜の調製用機械としては、洗浄機、選果機、包装機などが使われている。
[井上喬二郎・谷脇 憲]
欧米で20世紀初頭に、農業生産力が画期的に向上した要因には、化学肥料の発明と農業の機械化があるとされている。欧米の農業は畑作中心の有畜農業として進展したため、畜力用農具や大型機械の発達も早かった。これに対して日本では、稲作中心で零細集約経営の道を歩んだため、人力用の農具を中心に発達し、畜力やエンジンを用いた機械の開発、利用は遅れた。
日本における農業機械化の始まりは、近代的工業が発達し、農業機械を製造する基盤が固まってきた第一次世界大戦ごろからといえよう。このころ顕著な発達を示したものは、原動機(石油発動機、電動機)、揚水機、籾摺り機、精米麦機など定置型の機械で、これらは主として灌漑(かんがい)、排水などの土地改良や、米の調製加工を目的とするものであった。
大正時代中期(1920年ごろ)に歩行用や乗用のトラクターが欧米から導入され、これらを参考にして昭和の前期(1930~1940年)にロータリー型、スクリュー型、クランク型の耕うん機の開発、改良が進められ、このなかの一つであるロータリー型耕うん機は太平洋戦争後急速に普及した。その後(1970年以降)、ロータリー型の耕うん機構を備えた乗用トラクターが開発され、今日では耕うん作業のほとんどが乗用トラクターを使って行われている。
稲作の作業のなかでもっとも遅くまで人力に依存していたのは田植であるが、1960年代に田植機が開発され、今日ではほとんどの農家で歩行用または乗用の田植機が使われている。農業従事者数の減少に伴い、田植機の多条化や高速化が進展している。さらに、田植えに伴う苗作りなどの煩雑な作業が困難な状況では、直接圃場に種を播く直播機(ちょくはんき)の導入も始まっている。直播機には、圃場が畑状態の時に播種する乾田直播機と、水田状態の時に播種する湛水直播機(たんすいちょくはんき)がある。乾田直播にはムギ用の機械も用いられている。
防除用機械は、大正の初めから昭和の初め(1915~1928年)にかけて背負い型噴霧機や動力噴霧機が実用化され、果樹作に用いられ始めた。稲作に本格的に用いられるようになったのは、能率的な散布が可能な水平ノズル、畦畔(けいはん)散布ノズルなどが実用化した1960年(昭和35)以降のことである。
イネ、ムギの収穫と脱穀の作業は、長い間、鎌(かま)と千歯扱(せんばこき)を用いて行われていたが、1910年(明治43)に足踏み脱穀機が、続いて1918年(大正7)に動力脱穀機が開発され、千歯扱にとってかわった。刈り取りは、鎌による手刈りの時代が続いたが、1965年ごろに水稲の収穫に適した日本型コンバイン(通称・自脱コンバイン)が開発され、今日では全面的に使われるようになってきている。また、ダイズなどにも用いることのできる汎用型のコンバインの普及も始まっている。
籾の乾燥には、1950年ごろから一部で平型乾燥機が使われ始めた。自脱コンバインによる収穫作業が行われるにつれて機械乾燥は必須(ひっす)となり、自脱コンバインの普及(1970年以降)に伴って平型や循環型の乾燥機が広く使われるようになった。また、籾摺りや貯蔵も兼ねたカントリーエレベーターなどの調製貯蔵施設も多く使われるようになった。
草地や飼料作物用の機械は欧米で著しい発達を遂げていたため、これらの導入、利用や、これらを国産化した機械の利用が図られている。
野菜や果樹などの園芸作物の耕うん、整地、播種や移植、肥培管理は、トラクターや専用機の利用が進んできている。収穫作業については、損傷により商品価値が大きく損われるおそれがあること、少量多品目生産であることなど、機械化には困難が多いが、それぞれの作物に応じた多様な収穫機械が開発されてきている。一部では、ロボット収穫機の開発が行われている。
このように日本の農業機械の利用は、稲作の機械化に代表されるように独自の発展を遂げ、農作業での重労働からの解放や省力化に貢献してきた。その表れとして1960年以降の高度経済発展に伴って生じた農村から他産業への労働力の流出にもかかわらず、農業の機械化によって生産を維持することができた。しかし一方、日本における農業生産性の低さが大きな問題として残されており、これらに対応するために、現在は、GPS(Global Positioning System=全地球測位システム)や携帯電話などの無線通信網などを利用して農作業管理や生産物管理を行い、品質や商品性を強め、栽培履歴を明らかにして安全性を高めるような通信情報化農業が展開されようとしている。また、担い手の減少に対して農業ロボットの導入を図るなど、これらの新しい技術の展開への期待は大きい。
[井上喬二郎・谷脇 憲]
『農政調査委員会編・刊『体系農業百科事典 第一巻』(1966)』▽『農業機械学会編『生物生産機械ハンドブック』(1996・コロナ社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…農業生産には,この両行程が同時に併存し,両者の統一として農業生産力の発展・向上が追求されるし,追求されねばならないが,実際には,どちらか一方に偏って農業技術の発達,農業生産力の向上が追求されることが,しばしばである。もっとも,機械・工学的行程の中心である農業機械化についていえば,それが工業と比べて著しく困難で立ち遅れていること,立ち遅れざるをえないことも,農業生産の顕著な特質である。それは,高等動植物を対象・手段とする有機的生産のため,多種多様の異種作業があって,しかもそれぞれ綿密周到な管理労働を必要とすること,季節性の制約のため,同一作業期間が短く機械の遊休期間が長くて,その経済的な使用効率が低くならざるをえないこと,定置式の大型機械を用いる場面は少なく,移動型,走行型の中・小型機械を主とせざるをえないこと,などの理由による。…
…農業用の機械器具を製造する産業部門。農業機械とは,稲,麦,雑穀,いも類,豆類,果樹,野菜,工芸作物(タバコ,イグサなど),畜産,養蚕などの営農作業に使われる機械の総称である。営農作業は整地耕耘(こううん)作業から,収穫調製作業などまで数段階に及ぶため,機械の種類が多い。…
※「農業機械」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新