迫る(読み)セマル

デジタル大辞泉 「迫る」の意味・読み・例文・類語

せま・る【迫る/×逼る】

[動ラ五(四)]
圧倒するような勢いで近づいてくる。押し寄せる。また、せり出している。「噴出した溶岩が人家に―・る」「激しく敵陣に―・る」「鬼気が身に―・る」「山が背後に―・っている地勢
空間的、時間的に隔たりが小さくなる。接近する。
㋐間がせばまり、もう少しで届きそうである。「両岸が―・っている渓谷
㋑時期や期限が近づく。「死期が―・る」「締切が―・る」
㋒ある状態に近づく。「核心に―・る」
詰まって苦しむ。特に、呼吸が激しくなって息苦しくなる。感情が高ぶってきて胸がしめつけられる感じになる。「息が―・る」「思いが胸に―・る」
行き詰まってゆとりがなくなる。せっぱつまる。困窮する。「悠揚―・らぬ態度」「貧に―・る」
相手にこちらの考えを聞き入れるように積極的に求める。強い態度で要求する。強いる。「返答を―・る」「復縁を―・る」「必要に―・られる」
[類語](1押し寄せる攻め寄せる寄せる打ち寄せる・寄せては返す・うねる荒れ狂う近付く接近する肉薄する/(2㋑)差し迫る押し迫る押し詰まる切迫する来る近づくやってくるきた訪れる来訪する到着する着く/(5要求する強請きょうせいする強迫する強談ごうだんする催促する催告する付く責め立てる求める催促がましいせがみ立てる急き立てる急かせる尻を叩く矢の催促やいのやいの要望要請請求注文頼む請う仰ぐ懇請懇望こんもうする所望ちょうするせがむせびるねだる強要請託依頼懇願ゆすり請い求め願うリクエストアンコール

せ・る【迫る】

[動ラ四]《少しずつ間をせまくする意から》せきたてる。督促する。
花車くわしゃはなぜ遅いぞ。五兵衛行って―・ってくれ」〈浄・冥途の飛脚

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「迫る」の意味・読み・例文・類語

せま・る【迫・逼】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 向こうからやってくる。やってこられてこちらが狭くなる。圧迫される。
    1. あることが起こったり、はじまったりする時間、また、場所に近づく。近よる。
      1. [初出の実例]「時に孕月(うむかつき)已に満ちて、産(こう)む期(とき)方に急(セマリ)ぬ」(出典日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
      2. 「何ぞ日の西山に溥(セマ)ることを恐れむ」(出典:漢書楊雄伝天暦二年点(948))
    2. 行きづまる。せっぱつまる。進退に窮する。
      1. [初出の実例]「兄、既に窮途(セマリ)て逃げ去る所無し」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
    3. 貧しくて生活が窮迫する。貧困になる。生活に苦しむ。
      1. [初出の実例]「身をすてて学向をしつつ、はかりなくせまりて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
    4. 不足する。欠乏する。
      1. [初出の実例]「ミヅガ xematta(セマッタ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    5. 距離が狭くなる。幅がせばまる。相寄る。
      1. [初出の実例]「自余の手筆、或はゆたかに、或は促(セマ)る」(出典:文鏡秘府論保延四年点(1138)西)
      2. 「道迫(セマ)りて、而も敵の行前(ゆくさき)難所なる山路にては」(出典:太平記(14C後)一五)
    6. ある状態に今にもなりそうになる。
      1. [初出の実例]「しきりに餓(うゑ)にのぞみて、ほとんど十分の艱苦にぞせまりける」(出典:読本忠臣水滸伝(1799‐1801)後)
    7. 胸がしめつけられて息がつまる。感情が高ぶって胸が苦しくなる。つまる。
      1. [初出の実例]「明たる朝我が子の悲しみに責(セマッ)て」(出典:私聚百因縁集(1257)三)
      2. 「村が見えなくなった時は流石に胸が少し迫(セマ)って」(出典:重右衛門の最後(1902)〈田山花袋〉二)
  3. [ 二 ] ( 他動詞的に用いて ) ある事をするよう強い態度で要求する。のっぴきならないように押しつめる。圧迫する。
    1. [初出の実例]「主聞つけて、棒を以てさんざんにおどす。せまる」(出典:天正本狂言・梅盗人(室町末‐近世初))
    2. 「生徒の一人が一寸此問題を解釈をしておくれんかな、もし、と出来さうもない幾何の問題を持って逼ったには冷汗を流した」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉三)

迫るの補助注記

「せむ(迫)」「せめる(攻)」「せめる(責)」と同語源の語。→「せむ(迫)」の補注


せ・る【迫】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
  2. 他の物との間隔を狭くする。せばめる。
  3. ことを早くするように要求する。せめたてる。せきたてる。せまる。
    1. [初出の実例]「花車(くしゃ)はなぜをそいぞ五兵衛いってせってくれと、立ちに立ってせきけれ共」(出典:浄瑠璃・冥途飛脚(1711頃)中)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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