精選版 日本国語大辞典 「進」の意味・読み・例文・類語
すす・む【進】
[1] 〘自マ五(四)〙
※仏足石歌(753頃)「ますらをの すすみ先立ち 踏める足跡(あと)を 見つつしのはむ」
② 自然と時がたつ。また、時とともに人生を送る。
※今昔(1120頃か)五「年、我より少し進(すすみ)たるをば兄の如くにし」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「つかさ、くらゐはややすすみてさへこそ」
※三とせの春は過ぎやすし(1973)〈杉浦明平〉二「優勝戦にまで進んだようである」
④ 物事がよい方に移る。上達する。進歩する。すぐれる。
※源氏(1001‐14頃)絵合「才学といふもの、世にいと重くする物なればにやあらむ、いたうすすみぬる人の、命とさいはひとならびぬるは」
※春の城(1952)〈阿川弘之〉二「アメリカの暗号が一番進んでいた」
⑤ 仕事や計画がはかどる。
※古い玩具(1924)〈岸田国士〉第二場「こっちの仕事は一向進みません」
⑥ 物事の程度がはなはだしくなる。つのる。また、病気などが進行する。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「なかずみがゑひこそすすみて侍けめ」
⑦ 早くしたいと心がはやる。また、積極的にそうしようとする。→進んで。
※万葉(8C後)三・三八一「家思ふとこころ進(すすむ)な風守り好くしていませ荒しその路」
※仮名草子・浮世物語(1665頃)一「心もすすまぬ道心をおこしければ」
⑧ 盛んになる。勢いがつく。特に、食欲が出る。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「思かたの風さへすすみて、あやふきまで走りのぼりぬ」
※咄本・軽口露がはなし(1691)一「此計にてはいか程も飯(めし)がすすむゆえ」
⑨ (涙が)次々とあふれて出てくる。
※浜松中納言(11C中)四「涙さへいづちとさきにすすむらん我だにゆくへ知らぬところに」
⑩ 仕官する。出仕する。
※弁内侍(1278頃)寛元五年一一月一八日「召しにすすみて侍りし」
⑪ 時計が、正しい時刻よりも早まる。
※東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉二「この時計は十分位進んで居たなと余は思った」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒すすめる(進)
すす・める【進】
〘他マ下一〙 すす・む 〘他マ下二〙
① 前へ行かせる。前進させる。
※太平記(14C後)六「五千余騎の兵共是を見て、我先にと馬を進(スス)めて」
※太平記(14C後)二二「或は恩賞を給、或官位を進(スス)められければ」
③ 物事の程度をよい方へ向かわせる。進歩させる。
④ 物事が進行するようにする。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一「わざと相手にならないで話頭を進めた」
⑤ 欲望を刺激する。そそる。
※太平記(14C後)五「其辺の郷民共の欲心を勧(ススメ)て、宮を他所へ帯(おび)き出し奉らんと相計て」
⑥ 時計の時刻をさしている針を動かして、はやい時刻をさすようにする。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「十二時二十分前━少し是は進めてあるから、発車には未だ三十分ばかりある」
すすみ【進】
〘名〙 (動詞「すすむ(進)」の連用形の名詞化)
① 前方へ動いて行くこと。また、前方へ動く勢い。
※落語・正直(1898)〈三代目春風亭柳枝〉「駈(か)けまする時は一寸(ちょっ)と止めやうとしても止まらん者で御坐います。車の歯に進みが付いて居りますから」
② 物事が進行すること。また、物事がはかどること。また、そのはかどりぐあい。
※和解(1917)〈志賀直哉〉三「父に対する私怨を晴すような事は仕たくないといふ考が筆の進みを中々に邪魔をした」
③ 上達すること。進歩すること。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉三「産出の高〈略〉其年年に増加するは、工業の進みを徴するものなり」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「学業の進みも著るしく」
④ する気がおこること。気がすすむこと。
※咄本・鹿の子餠(1772)医案「息子にあそびすすむれど、一ゑんすすみなく」
しん‐・ずる【進】
〘他サ変〙 しん・ず 〘他サ変〙
[一]
① 目上の人へ物をさしあげる。進上する。しんぜる。
※新十二月往来(1206頃か)「黄菊一本令レ進候」
※歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)中「あれへ持行(もちゆき)此銀(かね)を進(しん)ぜ」
② 軍陣で、旗を前方へ進める。
※道照愚草(16C中か)「軍陣にて旗をさきへやるをば、進すると云。後へ帰るをば、鷁(げき)すると云也」
[二] 補助動詞として用いる。動詞の連用形に助詞「て」「で」を添えた形に付いて、…てあげる。…てさしあげる。しんぜる。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「キャウヲ カイテ xinjǒzu(シンジャウズ)」
しん・ぜる【進】
〘他ザ下一〙 (サ変動詞の「しんずる(進)」が下一段活用に転じた語)
[一] =しんずる(進)(一)①
※歌舞伎・百夜小町(1684)二「小豆飯を神の折敷へ入れ、神へ進ぜるとて」
[二] =しんずる(進)(二)
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)下「着る物洗うてしんぜたさへ不義したと疑はれ」
しん【進】
〘名〙
[一] 令制の官制で、中宮職・大膳職・左右京職・春宮坊の三等官(判官)。大進と少進がある。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
[二] ある星にあって他の星を見るとき、その星が西から東へ進むことをいう。⇔退。
※遠西観象図説(1823)下「其一星中に在りて他の五星を見れば、或は東行するの時あり、之を進と云ふ」
すすま
し【進】
〘形シク〙 (動詞「すすむ(進)」の形容詞化) 気がすすむ。勇みたっている。乗り気である。
※無名抄(1211頃)「心には面白くすすましく覚ゆとも」
しん・じる【進】
〘他ザ上一〙 (サ変動詞「しんずる(進)」の上一段化したもの) =しんずる(進)
しん‐・ず【進】
〘他サ変〙 ⇒しんずる(進)
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