過つ(読み)アヤマツ

デジタル大辞泉 「過つ」の意味・読み・例文・類語

あやま・つ【過つ/誤つ】

[動タ五(四)]
やりそこなう。しくじる。「ねらいを―・たず射る」
(「あやまって」の形で)うっかりしてよくないことをしでかす。過失を犯す。「―・って相手けがを負わせた」
悪事を働く。罪を犯す。
「重く―・ちたる者の」〈今鏡・二〉
見まちがえる。取りちがえる。
「み吉野の山べに咲ける桜花雪かとのみぞ―・たれける」〈古今・春上〉
だめにする。そこなう。
㋐健康を害する。
瘟病をんびゃうは人を―・つ物と聞こゆるから」〈読・雨月菊花の約〉
㋑殺傷する。
「このたび我は―・たれなんとする」〈今昔・二三・一五〉
[類語]失敗しくじるし損ずるし損なうやり損なう抜かる誤るとちる味噌を付ける不覚を取る事志ことこころざしと違うつまずくどじを踏むてつを踏む仕出かすやらかす

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精選版 日本国語大辞典 「過つ」の意味・読み・例文・類語

あやま・つ【過・誤】

  1. 〘 他動詞 タ行四段活用 〙
  2. しそこなう。やり損じる。まちがえる。
    1. [初出の実例]「誤錯 二字安夜末覩」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
    2. 「げにあやまちてけりとは言はで、口かたうあらがひたる」(出典:能因本枕(10C終)一〇〇)
  3. 他のものと見まちがえる。勘違いをする。
    1. [初出の実例]「やど近く梅の花うゑじあぢきなく待つ人のかにあやまたれけり〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・三四)
  4. とりきめなどを守らない。言われたとおりにしない。そむく。
    1. [初出の実例]「蓬莱の玉の枝を、ひとつの所あやまたずもちおはしませり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  5. 道徳や法律に違反する。
    1. (イ) (知らず知らず)道徳や宗教上のきまりなどにそむく。特に男女が過失をする。不義をする。
      1. [初出の実例]「しのびしのび、帝(みかど)の御妻(め)さへあやまち給ひて」(出典源氏物語(1001‐14頃)須磨)
    2. (ロ) 法律や規則にそむく。法的な罪を犯す。
      1. [初出の実例]「重くあやまちたる者の、おはします近きあたりにこもりたりければ、うちつつみたりけるに」(出典:今鏡(1170)二)
  6. そこなう。損害を与える。
    1. (イ) 健康をそこなう。
      1. [初出の実例]「一夜の御山風にあやまち給へるなやましさななりと」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)夕霧)
    2. (ロ) 身を傷つけ、そこなう。殺傷する。殺す。
      1. [初出の実例]「此の度我は被錯(あやまたれ)なむと為(す)る、仏神(ぶつじん)助け給へ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二三)
    3. (ハ) 器物をそこなう。破損する。損壊する。
      1. [初出の実例]「いかに〈略〉聖が乗ったる船をば、あやまたうどはするぞ」(出典:平家物語(13C前)五)
    4. (ニ) 身を破滅させる。人の将来をだめにしてしまう。
      1. [初出の実例]「身をあやまつことは、若き時のしわざなり」(出典:徒然草(1331頃)一七二)

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