道祖神(読み)どうそじん

精選版 日本国語大辞典 「道祖神」の意味・読み・例文・類語

どうそ‐じん ダウソ‥【道祖神】

〘名〙 村境、峠などの路傍にあって外来疫病悪霊を防ぐ神。また、「あの世」の入り口にある神。のちには縁結びの神、旅行安全の神、子どもと親しい神とされる。男根形の自然石、石に文字や像を刻んだものなどがある。岐神(くなどのかみ)道陸神(どうろくじん・どろくじん)。たむけの神。さえの神。道祖。
今昔(1120頃か)一三「道公、道祖の言に随て、忽に柴の船を造て、此の道祖神の像を乗せて」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立「道祖神のまねきにあひて、取るもの手につかず」

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デジタル大辞泉 「道祖神」の意味・読み・例文・類語

どうそ‐じん〔ダウソ‐〕【道祖神】

峠や辻・村境などの道端にあって悪霊や疫病などを防ぐ神。丸石・陰陽石・男女2体の石像などを神体とする。さえの神。手向たむけの神。道陸神どうろくじん

さえ‐の‐かみ〔さへ‐〕【道神/障の神/塞の神】

《「さえ」は遮る意》悪霊が侵入するのを防ぎ、通行人村人災難から守るために村境・峠・辻などに祭られる神。みちの神・たむけの神・峠の神・ふなどの神・道祖神どうそじんさいの神などの言い方がある。

さい‐の‐かみ【道神/障の神/塞の神】

さえのかみ

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日本歴史地名大系 「道祖神」の解説

道祖神
さやんかみ

[現在地名]多久市多久町 道祖元

伊万里往還(佐賀―伊万里)は道祖元さやのもとで分れ、まっすぐ西へ道祖元徒矼とびいしを渡れば伊万里への道となり、南は桐岡きりおかを経て志久しく峠・馬神まがみ峠を越えれば杵島きしま郡に至る。この集落の中央右手に道祖神とよばれる祠がある。石の屋形をした大きな祠の中に、同形の小石祠が入っていて、「享保六年二月 道祖神」の刻銘がみえる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道祖神」の意味・わかりやすい解説

道祖神
どうそじん

サエノカミ、ドーロクジンなどといったり、塞大神(さえのおおかみ)、衢神(ちまたのかみ)、岐神(くなどのかみ)、道神(みちのかみ)などと記されたりもする。猿田彦命(さるたひこのみこと)や伊弉諾・伊弉冉尊(いざなぎいざなみのみこと)などにも付会していることがある。境の神、道の神とされているが、防塞(ぼうさい)、除災、縁結び、夫婦和合などの神ともされている。一集落あるいは一地域において道祖神、塞神(さえのかみ)、道陸神(どうろくじん)などを別々の神として祀(まつ)っている所もあり、地域性が濃い。峠、村境、分かれ道、辻(つじ)などに祀られているが、神社に祀られていることもある。神体は石であることが多く、自然石や丸石、陰陽石などのほか、神名や神像を刻んだものもある。中部地方を中心にして男女二体の神像を刻んだものがあり、これは、山梨県を中心にした丸石、伊豆地方の単体丸彫りの像とともに、道祖神碑の代表的なものである。また、藁(わら)でつくった巨大な人形や、木でつくった人形を神体とする所もある。これらは地域や集落の境に置いて、外からやってくる疫病、悪霊など災いをなすものを遮ろうとするものである。古典などにもしばしば登場し、平安時代に京都の辻に祀られたのは男女二体の木の人形であった。神像を祀っていなくても、旅人や通行人は峠や村境などでは幣(ぬさ)を手向けたり、柴(しば)を折って供えたりする風習も古くからあった。境は地理的なものだけではなく、この世とあの世の境界とも考えられ、地蔵信仰とも結び付いている。

 道祖神の祭りは、集落や小地域ごとに日待ちや講などで行われることもあるが、小(こ)正月の火祭りと習合し、子供組によって祭られることが多い。また、信越地方では家ごとに木で小さな人形を一対つくり、神棚に祀ったあと道祖神碑の前に送ったり、火祭りに燃したりする所もある。このほか2月8日あるいは12月15日に藁馬を曳(ひ)いてお参りに行く所もある。これらの祭りには、厄神の去来とその防御、道祖神の去来など、祭りの由来についての説話が伝えられていることがある。また中部地方や九州地方などで、祭祀(さいし)の起源を近親相姦(そうかん)と結び付けて語る所もある。

[倉石忠彦]

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百科事典マイペディア 「道祖神」の意味・わかりやすい解説

道祖神【どうそじん】

道陸神(どうろくじん),さえ(塞・幸)の神とも。外来の悪霊をさえぎる神。辻,村境,峠などに石碑,男女和合の神像,陰陽の形の石や自然石をまつる。旅行安全,防疫,縁結び,性の神,子どもの神ともされ,小正月の左義長は道祖神の祭といわれる。神々の旅の先駆を務めた【さる】田彦大神にも擬し,地獄と現世の境,賽(さい)の河原で亡者を救う神にもなる。
→関連項目賽の河原地蔵性器崇拝辻占

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世界大百科事典 第2版 「道祖神」の意味・わかりやすい解説

どうそじん【道祖神】

サエノカミ(塞の神),ドウロクジン(道陸神),フナドガミ(岐神)などとも呼ばれ,村の境域に置かれて外部から侵入する邪霊,悪鬼,疫神などをさえぎったり,はねかえそうとする民俗神である。陰陽石や丸石などの自然石をまつったものから,男女二神の結び合う姿を彫り込んだもの(双体道祖神)まで,この神の表徴は多様である。道祖神は境界的,両義的な特性においてきわだっている。村境にあって外から訪れる負の価値をになったものたちをさえぎる神でありながら,道祖神自身を悪霊だと考えて小正月の火祭(左義長(さぎちよう))に火中にくべられることもある。

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デジタル大辞泉プラス 「道祖神」の解説

道祖神

長野県松本市、開運堂が製造・販売する銘菓。小豆粉と和三盆糖を用いた落雁。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道祖神」の意味・わかりやすい解説

道祖神
どうそじん

塞の神」のページをご覧ください。

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世界大百科事典内の道祖神の言及

【赤子塚】より

…死んだ妊婦を埋葬した土中から赤子の泣声が聞こえたという伝説を持つ塚。赤子塚が,峠,村の境,交通の要地などに位置しているのは,境の神つまり道祖神とのかかわりの深いことを示している。古来,赤子の霊は再生するものと信じられており,その管理は境の神にゆだねられていた。…

【陰陽石】より

…男女生殖器の形の石で,道祖神,サエノカミとしてまつられたり,あるいは奉納される場合が多い。陰は女性,陽は男性であるが,人工的に刻む場合と,自然石にそのような形を認め,これをまつる場合とがある。…

【縁結び】より

…このことから結婚の仲だちをする人のことを縁結びの神ということがある。その他村のはずれ,辻などにある道祖神(サエノカミ)や,淡島(あわしま)様も縁結びの神といわれて,願かけがされ,仲人をサエノカミとよぶ地域もある。 また良縁を祈って願をかける縁結びの木もある。…

【賽の河原】より

…《賽の河原地蔵和讃》は〈死出の山路の裾野なる賽の河原の物がたり〉で,十にも足らない幼き亡者が賽の河原で小石を積んで塔を造ろうとするが,地獄の鬼が現れて,いくら積んでも鉄棒で崩してしまうため,小児はなおもこの世の親を慕って恋い焦がれると,地蔵菩薩が現れて,今日より後はわれを冥途の親と思え,と抱きあげて救うようすがうたわれている。賽とは石を積んで仏に賽する意と思われるが,さいのかみ(道祖神)のさい(障る)からきた語とも考えられている。石が道祖神と関係があったからである。…

【性器崇拝】より

…この時期は,農作業が開始される以前に,予祝の意味で呪的儀礼が行われる。境の神である道祖神祭はおもに子供組によって行われ,小正月の火祭(左義長)として定着しているが,農耕祭の一環にも位置づけられている。それは道祖神の神体が性器だからである。…

【宗族】より

…《爾雅(じが)》釈親に〈父の党を宗族となす〉というように,中国において,女系を排除した共同祖先から分かれる男系血続のすべてを〈宗族〉といい,〈同族〉〈族党〉〈族人〉などの語も同義である。宗族と〈親族属〉とは違う。〈親属〉は日本語の親族と同じで,自己の宗,すなわち〈本宗〉(〈本族〉)と婚姻関係で結ばれた〈外姻〉とを含む。外姻は〈同姓不婚〉の原則が示すように必ず他姓である。しかし〈姓〉には歴史的変遷があり,同宗ならば必ず同姓であるが同姓は必ずしも同祖と限らない。…

【村境】より

…この範域は原則的に地租改正に引き継がれ,現在の大字(おおあざ)の範囲となっている。範域としての境界においても道祖神(どうそじん)がまつられたり,道切りが行われることもあるが,事例的には少なく,一般的には村境として強く意識されていない。ムラの人々が村境として意識し,さまざまな呪術的行事を行う社会的境界は集落と耕地の境である。…

※「道祖神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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