えん‐りょ ヱン‥【遠慮】
〘名〙
① 遠い将来まで見通して、深く考えること。→
深謀遠慮。
※江吏部集(1010‐11頃)下・暮秋陪左相府書閣「応似謙光君子徳、延齢遠慮是為レ媒」
※
源平盛衰記(14C前)二六「遠慮
(エンリョ)賢くして、角
(かく)用意有けるか」
② (━する) 他人に対して、言葉や
行動を控え目にすること。気がねして出しゃばらないこと。
※虎寛本狂言・
鬮罪人(室町末‐近世初)「夫は一段と能らう。遠慮なしにいふて見よ」
③ (━する) ある
物事をするのを断わること。また、ある場所から退くこと。辞すること。
※鵤荘引付‐永正一一年(1514)「先以二用水を一一円に小宅へ三个日分令二遠慮一、可レ遣之由」
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)上「其座をゑんりょし立にけり」
④
弔意を表わし、悲しみをともにするなどの理由で、祝いごとをさし控えること。
⑤
江戸時代、
武士や
僧侶に科した軽い
謹慎刑。居宅での
蟄居(ちっきょ)を命ぜられる
もので、門は閉じなければならないが、
くぐり戸は引き寄せておけばよく、夜中の目立たない時の出入は許された。
※禁令考‐
別巻・棠蔭秘鑑・亨・一〇三(1704)「遠慮 門を立、くぐりは引寄置、夜中不目立様に
通路は不苦」
※禁令考‐前集・第三・巻二一・延宝八年(1680)一一月二八日「疱瘡痳疹水痘遠慮之事」
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デジタル大辞泉
「遠慮」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「遠慮」の読み・字形・画数・意味
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遠慮
えんりょ
江戸時代の刑罰の一つ。武士や僧尼に科せられ,『公事方御定書』には,「門を閉ざし,くぐり戸は引寄せおき,夜目立たないように出入りすることはさしつかえない」とあり,また病気とか火事の場合は閉門のときと同様この限りではなかった。この種の刑罰のなかでは最も軽いものである。なお明治政府も,仮刑律において,公家,武士の閏刑の一つとしてこれを採用している。次いで制定された新律綱領では不採用。
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えんりょ【遠慮】
江戸幕府の下における刑罰ないし自発的謹慎。刑罰としては,武士,僧侶に科され,受刑者は屋敷に籠居して門を閉じるが,潜門(くぐりもん)は引き寄せておくだけでよく,夜間他の者が目だたぬように出入りしてもよかった。また武士は一定範囲の近親,もしくは家来が処罰されたときには,自発的に謹慎すべきであった。通常上司に差控伺(さしひかえうかがい)といういわば進退伺を出し,その指揮によって御番遠慮,御目見(おめみえ)遠慮などが命ぜられた。
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世界大百科事典内の遠慮の言及
【謹慎】より
…言動を控え,みずからを戒めることで,刑罰・制裁としても科せられた。江戸時代,慎(つつしみ)と称した公家・武士の閏刑(じゆんけい)(特定の身分の者や幼老・婦女に対し本刑の代りに科す刑)は,《公事方御定書》が規定する
塞(ひつそく),遠慮に類似の自由刑で,他出・接見などの社会的活動を制限することに実質的意義があったが,また名誉刑的な性格ももつ。幕末には大名処罰に隠居と併科された例が多くみられる。…
【閉門】より
…江戸幕府法では武士と僧に科せられる刑で,屋敷の門を閉じ,昼夜とも当人および内外の者の出入りを禁じ,ただ病気のときには夜中に医師を招き,また出火,類焼にあたっては消防,避難することは許されていた。自由刑と名誉刑との性質をもつ刑罰で,これより軽いものとして〈
塞(ひつそく)〉〈遠慮〉〈戸〆(とじめ)〉〈押込(おしこめ)〉があった。前2者は武士と僧に科するもの。…
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