(読み)エン

デジタル大辞泉 「遠」の意味・読み・例文・類語

えん【遠】[漢字項目]

[音]エン(ヱン)(漢) オン(ヲン)(呉) [訓]とおい
学習漢字]2年
エン
空間的、時間的に隔たっている。とおい。「遠隔遠近遠征以遠永遠望遠悠遠遼遠りょうえん
とおざける。「遠心力敬遠
深くて大きい。奥深い。「遠大遠謀高遠深遠
うとい。「遠戚疎遠
遠江とおとうみ国。「遠州
〈オン〉とおい。とおざける。「遠国遠流おんる久遠くおん
[名のり]とお
難読遠近おちこち

おち〔をち〕【遠/彼方】

遠い所。遠方
「川より―にいと広くおもしろくてあるに」〈椎本
現在から隔たった時。
㋐以前。昔。
「昨日より―をば知らずももとせの春の始めは今日にぞありける」〈拾遺雑賀
以後。将来。
「このころは恋ひつつもあらむ玉くしげ明けて―よりすべなかるべし」〈・三七二六〉
[補説]元来、遠く隔たった向こうの意。代名詞的に、「かなた」「あちら」の意にも用いる。

おと〔をと〕【遠/彼方】

おち(遠)」の音変化。
大宮の―つ端手はたで」〈・下〉
[補説]現代語の「おととし(一昨年)」「おととい(一昨日)」の「おと」もこの語にもとづき、時間的に遠いことの意を表す。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遠」の意味・読み・例文・類語

おちをち【遠・彼方】

  1. 〘 代名詞詞 〙 他称。
  2. 遠く隔たっている場所を指す(遠称)。また、ある範囲にはいらない場所をもいう。
    1. [初出の実例]「白雲の八重に重なるをちにても思はん人に心へだつな〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)離別・三八〇)
  3. 遠く隔たっている時を指す(遠称)。
    1. [初出の実例]「このころは恋ひつつもあらむ玉匣(たまくしげ)明けて乎知(ヲチ)よりすべなかるべし」(出典:万葉集(8C後)一五・三七二六)
    2. 「昨日よりをちをばしらず百年(ももとせ)の春の始めは今日にぞ有りける〈紀貫之〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑賀・一一五九)

遠の語誌

( 1 )上代においては、方向を表わす代名詞は、指示代名詞に「ち」を付けて、「こち」「そち」等の言い方をするが、遠称にはこのような言い方がなく、「をち」「かなた」がこれを代用している。
( 2 )の意は、「万葉集」では未来を表わしているが、中古では過去を表わしていると見られる。


とおくとほく【遠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形容詞「とおい」の連用形から ) とおいところ。遠方。
    1. [初出の実例]「おさないものの事なれば、よもとをくへはおちまいぞ」(出典:説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)中)

とおとほ【遠】

  1. 〘 造語要素 〙 ( 形容詞「とおい」の語幹相当部分 ) へただりの程度がはなはだしいこと、とおいこと。また、離れたところを示す。直接名詞、動詞、形容詞に接するほか、連体助詞「つ」「の」を伴った連体用法もある。「遠かがり火」「遠干潟」など。

おとをと【遠】

  1. 〘 造語要素 〙 「おち(遠)」の変化したもの。「おととし(一昨年)」「おとつはたで」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

メタン

化学式 CH4 。最も簡単なメタン系炭化水素で,天然ガスの主成分をなしている。また石炭ガスにも 25~30%含まれる。有機物の分解,たとえばセルロースの腐敗,発酵の際に生成され,沼気ともいわれる。また...

メタンの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android