遺構は遺物とともに遺跡を構成する。動産的な性格をもつ遺物に対して,遺構は過去の人間活動の所産で,特定の土地に結びついた不動産的な性格を備えたものといえよう。通常,遺構は製作あるいは構築当初備えていた機能を失い,その一部あるいは大部分が破壊あるいは消滅していることが多い。住居の遺構である竪穴式住居跡は住居の地中に掘りくぼめた基底部分にすぎないし,官衙や寺院の遺跡を構成する主要な遺構は,基壇や掘立柱柱穴など,かつての建造物のごく一部分にすぎない。ただし,墳墓のように当初から埋没あるいは埋納する意図をもって形成された遺跡では,腐朽や盗掘による破壊消滅を除けば,遺構はほぼ当初の形状を保持している。遺構という用語は考古学のほかに建築史でも使用されているが,それは過去に造営された建造物のうち,現在遺存しているもの,たとえば,現存する法隆寺の金堂や五重塔を遺構とよんでおり,考古学でいう遺構とは異なっている。
執筆者:田中 琢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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過去に人類が残した日常・生産・信仰・葬祭などあらゆる生活のための構築物。住居・墓・水田・工房など多岐にわたり,時代・地域によって形態・構造の変化がみられる。遺構の多様な特徴は,それぞれの時代・地域の社会のあり方を反映すると考えられる。遺物群を含めて総体的には遺跡として認識される。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…現在,日本では26万4000ヵ所の遺跡が保護の対象として登録されているが,そのうちほぼ半分近くが地上に顕在している遺跡である。 遺跡は不動産的性格をもつ遺構と動産的な遺物から構成されている。また,遺構と遺物が一定の空間的関係を維持している状況を遺跡とする考えもある。…
…それには,河川,湖沼,海などの水中にあるもの,あるいは地表面に露呈しているものも含まれる。1950年に施行された文化財保護法にみえる概念で,考古学でいう遺構と遺物をほぼ指しているとみてよい。その所在地は埋蔵文化財包蔵地と呼ばれ,おおよそ考古学の遺跡に相当する。…
※「遺構」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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