ゆい‐ごん【遺言】
〘名〙
※
万葉(8C後)四・五六七・左注「望
二請庶弟稲公姪胡麿
一、欲
レ語
二遺言
一者」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「ゆい
ごんし置きて、絶え入り給ひぬ」
[語誌](1)古くから現在に至るまで、
呉音よみのユイゴンが使われているが、
中世の辞書「運歩色葉集」「いろは字」などには呉音と
漢音を組み合わせたユイゲンの形が見える。
(2)
近世の
文献ではユイゴンが主だが、ユイゲンも使われており、時に漢音よみのイゲンも見られる。明治時代にもこの
三種併用の状態は続くが、一般にはユイゴンが用いられた。
(3)現在、法律用語として慣用されるイゴンという言い方は、最も一般的なユイゴンをもとにして、「
遺書」「遺産」など、「遺」の読み方として最も普通な、漢音のイを組み合わせた形で、法律上の厳密な意味を担わせる語として明治末年ごろから使われ始めた。
い‐げん ヰ‥【遺言】
〘名〙
②
先人が生前言ったこと。また、その
言葉。
後世の人の立場からいう。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「天孫氏嘗(かつて)遺言(イゲン)すらくわが国の大なる寇(あた)なり」 〔荀子‐勧学〕
い‐ごん ヰ‥【遺言】
〘名〙
② 法律で、人が、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、認知などにつき、一定の方式に従って単独に行なう最終意思の表示。一般では「ゆいごん」という。
ゆい‐げん【遺言】
※米沢本沙石集(1283)一〇本「遺言(ユイゲン)に、所分状は中陰過ぎて門(ひら)くべき由云ひ置きてければ」
いい‐ごん いひ‥【遺言】
〘名〙 (「ゆいごん(遺言)」の変化した語) 死後に言い残すこと。また、そのことば。いいげん。いげん。
※申楽談儀(1430)別本聞書「元清には舞ふべき由、いひごんせられしによって」
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デジタル大辞泉
「遺言」の意味・読み・例文・類語
い‐げん〔ヰ‐〕【遺言】
1 死にぎわに言葉を残すこと。また、その言葉。いごん。ゆいごん。
2 先人が生前言ったこと。また、その言葉。いごん。
[類語]遺言状・書き置き・遺言書・遺書
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普及版 字通
「遺言」の読み・字形・画数・意味
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遺言
いごん
人が自分の死後,その効力を発生させる目的で,あらかじめ書き残しておく意思表示。遺言が法律上の効果を生じるためには,民法の定める一定の方式に従ってなされることを要する(→遺言証書。960条)。遺言でなしうる行為は,認知,後見人の指定,相続人の廃除,遺贈,寄付行為,相続分(→相続)の指定,遺産分割方法の指定,そのほか法律で定められているものにかぎられ,それ以外の事項に関するものは法的効果を生じない。遺訓,遺誡などの道徳的内容のものは法律上の遺言ではない。満 15歳に達し,意思能力のある者は独立して遺言をすることができる(961,962,963条)。ただし,成年被後見人(→成年後見制度)が遺言をするには医師 2人以上の立ち会いを要する(973条)。なお,遺言の内容を実現するため特別の行為が必要なときは,遺言執行者が置かれる(1006条以下)。
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遺言【ゆいごん】
生前に死後の法律関係を定めておくために,一定の方式に従ってなす単独の意思表示(民法960条以下)。法律上は〈いごん〉という。遺言者の死亡によって効力を生ずる。その内容は,遺贈,相続分の指定,遺産分割方法の指定,相続人の廃除,認知等法律で認めた一定のものに限られる。満15歳に達していれば遺言することができる。遺言を執行する前に,遺言書の保管者は家庭裁判所に提出して検認を受けなければならない。→遺言証書/相続
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ゆいごん【遺言】
〈いごん〉ともいう。自己の死亡とともに効力を発生させる目的で行う単独の意思表示のこと。
【遺言制度の歴史】
元来,人間は,その死後の身分上および財産上のことを考えて,生前に,なんらかの措置を講じておきたいと念ずるのが常である。また子孫や近親が,その意思を尊重して,その意思の実現を図ることは,徳義上要請されているともいえるだろう。われわれは,そこに,遺言制度の基礎を見いだすことができる。 ところで,遺言制度の源流は,これを古代ローマに求めることができる。
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知恵蔵
「遺言」の解説
遺言
人は自分が死んだ時、所有する財産等をどのように処分するかを書面に書き残し、この故人の意思を尊重する制度が古くからある。財産処分の自由を死後においても反映させたのが遺言で、被相続人の最終意思を確保する制度。他者による変造等を防止するために、遺言の方式は厳格に法定され、それに従っていない遺言は無効となる。特に日付は不可欠。自筆遺言、公正証書遺言が代表的な方式。遺言できる法律関係は財産上と身分上だけで、それ以外の事項、例えば「母を大切に」といった遺訓的なものは法律上の効果はない。遺言は法定相続に優先するのが原則。
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遺言
自己の死亡後の財産や身分に関する事項を定める法律行為。遺言者の単独の意思表示であり、いつでも撤回でき、遺言者の死亡前には法律上の権利を生じさせない。民法の定める遺言証書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種があり、いずれも要件を具備しないと無効。特に日付は不可欠。
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世界大百科事典内の遺言の言及
【遺贈】より
…遺言によって財産を他人に無償で与えること。贈与が贈与者の生前行為であり,しかも受贈者との契約であるのに対し,遺贈は遺言者の一方的意思表示によって,遺言者の死後に効力を生ずる単独行為である点で両者は異なる。…
【遺言】より
…自己の死亡とともに効力を発生させる目的で行う単独の意思表示のこと。
【遺言制度の歴史】
元来,人間は,その死後の身分上および財産上のことを考えて,生前に,なんらかの措置を講じておきたいと念ずるのが常である。また子孫や近親が,その意思を尊重して,その意思の実現を図ることは,徳義上要請されているともいえるだろう。…
【遺産分割】より
…このことは,とくに農家相続について問題となっている。
[遺産分割の方法]
(1)遺言による分割の指定 第1には被相続人の意思で決まる。すなわち,遺言で各共同相続人の取得する財産を指定することもできるし,第三者に指定することを委託することもできる(908条)。…
※「遺言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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