郭煕(読み)かくき

百科事典マイペディア 「郭煕」の意味・わかりやすい解説

郭煕【かくき】

中国,北宋画家生没年不詳。河陽の人。字は淳夫。李成山水を学び,四季による景観の変化,雲の出没による山水の変化などを巧みに表現した。神宗(在位1067年―1085年)のとき画院に入り,李成と並んで〈李郭〉と呼ばれ,多くの追随者を出した。代表作《渓山秋霽図巻》。なお北宋における画論技法を集大成した《林泉高致》は彼の撰とされている。
→関連項目安堅院体画三遠朱徳潤曹知白李在林泉高致

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「郭煕」の意味・わかりやすい解説

郭煕
かくき

生没年不詳。中国、北宋(ほくそう)後期の山水画家。河南省温県の人。字(あざな)は淳夫。神宗の煕寧(きねい)年間(1068~1077)を中心に、仁宗、英宗の芸学、待詔として宮廷画院の指導的地位にあって活躍した。宮殿寺院などに多くの大画面壁屏(へきへい)画の制作を行い、李成の後を受けて華北系山水画の画風を総合し、その画風は李成とともに「李郭」とよばれ、画院に追随者を出した。鹿角(ろくかく)の寒林、荒涼とした平野、断崖(だんがい)、重畳する山々などの大観を特徴とする。また優れた論画家でもあり、その画論「林泉高致」では、中国山水画の基本である高遠、深遠、平遠の三遠の法則を定位している。彼の70歳前後の作品である『早春図』(台北故宮博物院)には、この三遠法すべてが駆使されている。

[星山晋也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「郭煕」の意味・わかりやすい解説

郭煕
かくき
Guo Xi

中国,北宋の山水画家。温 (河南省) の人。字は淳夫。神宗に仕え,御書院芸学,翰林待詔直長となる。画院における最終的な地位は明らかでないが,宮廷画家の指導的地位にあったと思われる。華北東部の李成の山水画風に西の范寛画法を取入れ,山水画における地方性を解消し,写実感に満ちた壮大な山水画を創造した。画風は北宋山水画の主流として李成と並び称された。『早春図』 (1072,タイペイ,故宮博物院) は代表作であり,中国山水画の最高傑作。山水画の三遠法などを論じた著書『林泉高致集』は彼の子郭思の編になる。

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