精選版 日本国語大辞典 「酸素」の意味・読み・例文・類語
さん‐そ【酸素】
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周期表第16族に属し酸素族元素の一つ。
古代、空気は元素であると考えられていたが、10世紀ごろからは混合物であるとされ始めた。そして17世紀には空気が2種類の気体の集まりであり、一つは硝石から得られ、もう一つは不活性な気体であることが明らかにされるようになった。スウェーデンのシェーレは1771年ころ硝酸カリウム(硝石)を熱して、イギリスのプリーストリーは1774年に集光レンズで太陽光線を集め、ガラス鐘の中の酸化水銀に当てて酸素を取り出した。しかし、2人ともフロギストン説(物が燃えるのはフロギストンが逃げていくという説)の信奉者であったため、新ガスが普通の空気に比べ著しく燃焼を支持することから、シェーレは「火の空気」、プリーストリーは「脱フロギストン空気」とよぶにとどまった。フランスのラボアジエは、金属を熱するときの重量増加は空気の一部分が固定されるためと考え、プリーストリーの実験と逆に、密閉器中で水銀を空気と熱して酸化水銀をつくり、空気の減りぐあいを調べ、さらに酸化水銀を熱して酸素を得ることを確認し、フロギストン説とまっこうから対立する新燃焼説を打ち立てた。ラボアジエは、1777年初めてこれが元素単体であることを明らかにして、この新しい気体中での燃焼生成物の多くが酸の性質を示すことから、ギリシア語のoxys(酸味のある)とgennao(生じる)からoxygèneと命名した。元素としての酸素の発見は化学史上きわめて重要なできごとで、これにより現代化学の礎(いしずえ)が築かれた。日本では宇田川榕菴(うだがわようあん)の『舎密開宗(せいみかいそう)』(1837)に「阿幾舎厄紐母(オキセイゲニユム)、酸素」と記されている。
[守永健一・中原勝儼]
岩石中に約50重量%、水には約89重量%ほど含まれ、化合物として地殻(厚さ16キロメートル)、水圏中でもっとも多い元素である。また、遊離の状態すなわち酸素分子として大気中に21容量%も含まれる。宇宙では水素、ヘリウムに次いで3番目に多い。地球が生成したとき、酸素はすべて溶融状態で固定されていたと考えられ、やがて出現した緑色植物の光合成の副産物として供給され、現在のような大気ができたのは10億年前といわれている。大気中の酸素の同位体組成は16O:99.76%、18O:0.20%、17O:0.04%である。90%(原子数)以上に濃縮された18Oは重酸素とよばれ、トレーサー実験に利用される。
[守永健一・中原勝儼]
工業的に、酸素は液体空気の分留により窒素と同時に製造される。小型の製造法として、空気からモレキュラーシーブによる吸脱着を利用した分離法や、水電解による方法がある。実験室では、塩素酸カリウムに触媒として半量くらいの二酸化マンガンを混ぜて熱する(有機物が混入すると爆発しやすい)。ほかに、二酸化マンガンを触媒とする過酸化水素の分解、あるいは水の電解、また過マンガン酸カリウムを真空中加熱分解させる方法がある。市販品は液体酸素としてタンクローリーあるいはボンベ入りで取り扱われ、ボンベの色は黒である。全低圧式の酸素と窒素の製造工程については
を参照。[守永健一・中原勝儼]
常温常圧で無色、無味、無臭の気体。二原子分子O2は2個の不対電子をもち常磁性である。無声放電または遠紫外線の照射でオゾンO3を生じる。きわめて活性な元素で、軽い希ガスを除きすべての元素との化合物が知られ、多くの元素と直接反応する。たとえば、炭素、硫黄(いおう)、リンなどは酸素中で激しく燃え、アルミニウム、鉄、銅なども粉末状態では閃光(せんこう)を発して燃える。希ガス、ハロゲン、金、白金などの貴金属とは直接反応しない。動植物の生活と密接な関係があり、酸素なくしては生命は保たれない。
最大の用途は鉄鋼業における酸素製鋼で、ほかに化学工業・石油化学工業での酸素酸化、造船・機械工業での酸素切断、溶接用、医療用(酸素吸入)、活性汚泥法による水処理の曝気(ばっき)用などがある。
[守永健一・中原勝儼]
O.原子番号8の元素.電子配置[He]2s22p4の周期表16族元素(カルコゲン).原子量15.9994(3).質量数16(99.757(16)%),17(0.038(1)%),18(0.205(14)%)の安定同位体と,14,15,19,20,21,22の放射性同位体が知られている.半減期122.2 s で軌道電子捕獲により 15N にかわる 15O は,PETによる酸素代謝,血流量診断用に使われる.1771年,K.W. Scheele(シェーレ)により,1774年,J. Priestley(プリーストリー)により発見されたことになっているが,古くからその存在は知られていた.A.L. Lavoisier(ラボアジエ)が1789年,著書Traité élémentaire de chimieのなかで,この元素が多くの物質と化合して「酸を発生させる」として,ギリシア語の“酸”οξ(oxys)と“産み出す”γεινομαι(geinomai)からつくった元素名.日本語の元素名も酸のもと(素)の意味で,蘭学者・宇田川榕菴が「舎密開宗」(天保8年,1837年)のなかで使っている.
地殻中の存在度453000 ppm.宇宙でも水素,ヘリウムについで多く存在する(原子数比).大気中の存在度21%.酸素は生物の呼吸に不可欠で,17% 以下では呼吸が困難となり,25% 以上では多くの有機化合物の引火性が高くなる.原始大気中には存在せず,約35億年前に海中のラン藻植物の光合成により生成したとされる.通常は O2 として存在するが,オゾン O3 としても微量存在する.DNAの成分元素で,生体に不可欠の元素.人体の質量の半分以上が酸素である.工業的には,液体空気の分留,水の電解で得られる.実験室では,過マンガン酸カリウムの熱分解,過酸化水素水(硫酸酸性)と強酸化剤との反応,過酸化水素水を分解するなどの方法がある.無色,無臭の気体.液体と固体は淡青色,固体にはα,β,γの三変態がある.液体の密度1.149 g cm-3(-182.82 ℃).融点-218.3 ℃,沸点-182.82 ℃.臨界温度-118.57 ℃.第一イオン化エネルギー1313.7 kJ mol-1(13.618 eV).酸化数-2.単体は二原子分子で,常磁性を示す.基底状態は三重項である.O-O0.1207 nm.化学的に非常に活性で,ほとんどの元素と化合物をつくる.貴金属,ハロゲン元素を直接酸化しないが,希ガス元素のうち,Xeとは酸化物([別用語参照]キセノン化合物)をつくる.最大の用途は,鉄鋼用で高炉,転炉,電気炉で脱炭素,脱硫などのために吹き込まれる.機械・建設業で鋼材の溶接・切断に,製紙業ではパルプ漂白に,そのほか医療用,ロケットの推進剤,排水処理などに使われる.日本の年間使用量は約20億 m3.[CAS 7782-44-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…また,マントル対流の動きはつねに一定の速さではなく,マントル対流が活発になると海底を強く押し上げるため,海水が陸地にあふれて大陸に海が入り込み,逆に対流が穏やかになると海水が大陸から退いて,それがまた石油や石炭などの資源の生成に大きく関与しているともいわれている(図4)。
[酸素を含む大気]
現在,地球の大気の21%が酸素であるが,多くの生物の生命を支えるこの酸素が,じつは地球に栄えた植物の光合成作用によって大気に加えられたことが明らかになった。地球の大気は,マントルの中の揮発性のガスが貯積されたものと考えられている。…
※「酸素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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