化学辞典 第2版 「金属の電子論」の解説
金属の電子論
キンゾクノデンシロン
electron theory of metal
金属特有の諸性質たとえば熱的性質,電気的性質,光学的性質,磁性などを金属内電子の運動状態の解析によって説明する理論をいう.この理論は最初,H.A. Lorentzによって古典論に従って論じられた.かれは金属を構成する原子を剛球とみなし,その間を自由電子が動きまわっていると考えた.かれの理論は一面で大きな成功をおさめたが,不十分なところが多い.量子論の発達につれて,電子の運動状態を論じるのに量子力学によること,また統計力学的扱いに対して量子統計力学を使うことによって金属に関する多方面の問題が解決されてきた.1928年,A.J.W. SommerfeldはLorentzの理論での電子の古典統計をフェルミ統計に置き換えた理論を提出した.現在,金属内電子のエネルギー構造や金属の諸性質は,格子イオンによる周期ポテンシャルを考慮した量子力学的方法によって論じられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報