(読み)きん

精選版 日本国語大辞典 「金」の意味・読み・例文・類語

きん【金】

[1] 〘名〙
古来、五金(金・銀・銅・鉄・錫)の長として尊重されてきた、美しい黄色の光沢がある金属元素一つ。文武天皇大宝元年(七〇一)に対馬国から朝貢されたのが歴史に見える古例である。塊状では美しい黄色の金属光沢、粉末状では紫、コロイド状では赤、溶融状態では緑、箔状では緑から青に見える。主として、石英鉱脈中の自然金、または川の砂中の砂金など単体として産出する。工業的には、比重選鉱法、青化法などで精錬して得られる。化学的にきわめて安定で、王水にとけて塩化金酸に、また水銀と化合してアマルガムとなるが空気、水、酸素硫黄などとは反応せず、普通の酸やアルカリにおかされないうえ、重く軟かで延性、展性に富むので種々の細工に適し、貴金属の中でも特に珍重され、貨幣、装飾品として用いられている。化学記号 Au 原子番号七九。原子量一九六・九六七。比重一九・三。おうごん。こがね。きがね。くがね。〔十巻本和名抄(934頃)〕〔書経‐舜典〕
② 石に対して、金、銀、銅、鉄、錫などの鉱物総称。金属。かね。〔易経‐繋辞上〕
③ (金を貨幣の材料として用いたところから) 金貨、また貨幣。
(イ) 大判小判、一歩金(いちぶきん)などの金貨の総称。
※多聞院日記‐永祿一〇年(1567)五月六日「脇指買之。代二貫三百卅文、金二両〈一朱たらす〉、十一貫つつ通也」
(ロ) 貨幣。金銭。かね。現在は、「金━(円)」などの形で、金額の上につけて用いることが多い。
※浮世草子・鬼一法眼虎の巻(1733)二「其の金(キン)を以て娘を連れて帰りたく候へば、金子(きんす)を我に渡され候へと」
※酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月六日「金(キン)五円至急に調達せよ」 〔戦国策‐秦策・恵文君〕
④ 「きんしょう(金将)」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑤ 「きんし(金糸)①」の略。
※浮世草子・好色五人女(1686)三「三つ重ねたる小袖、皆くろはぶたへに裙取の紅うら、金のかくし紋」
⑥ 「きんぱく(金箔)①」の略。
※松屋会記‐久政茶会記・天正一四年(1586)九月二八日「袋はかうしの金らん、金はげて難見、古き也」
⑦ 「きんいろ(金色)」の略。
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立「上下衣装にて高股立、大きなる金の幣束(へいそく)をかつぎ出て来り」 〔詩経‐小雅・車攻〕
⑧ 睾丸(こうがん)。きんたま。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「馬鹿な事娘にきんをけられ損」
⑨ 五行の第四。時節では秋、方位では西、五音(ごいん)では商、十干では庚辛、天体の五星では金星にあたる。
※菅家文草(900頃)一・重陽侍宴、賦景美秋稼「吹金風冷簸、滴玉露清瑩」 〔漢書‐五行志上〕
⑩ 「きんよう(金曜)①」の略。
⑪ 「きんよう(金曜)②」の略。
[2]
[一] 女真族が満洲、華北に建てた王朝。完顔部の阿骨打が女真族を統一し、一一一五年遼から独立して建国。のち、遼を滅ぼし、宋を南に追って華北に中国的な中央集権の専制政治を行なった。首都は初め会寧府、のち燕京、汴京。一〇代一二〇年でモンゴル帝国に滅ぼされる。
[3] 〘接尾〙 金の純度を示す単位。二十四金が純金。「十八金の時計」

かな【金】

〘語素〙 (「かね(金)」の変化したもの)
① 金属、鉄の意味を示す。「かなあみ」「かなづち」「かなぼう」など。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 金銭の意味を示す。「かなぐら」「かなぐり」など。
③ 金属、鉄などのように堅固なさまの意味を示す。「かなこぶし」「かなずね」など。
④ 全くの、の意味を示す。「かなげこ」「かなつんぼ」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「金」の意味・読み・例文・類語

きん【金】[漢字項目]

[音]キン(漢) コン(呉) [訓]かね かな こがね
学習漢字]1年
〈キン〉
金属の総称。「金石金文合金鋳金彫金板金冶金やきん
金属元素の一。きん。こがね。「金貨金塊金銀金鉱金箔きんぱく金粉砂金純金鍍金ときん白金
お金。貨幣。「金員金額金子きんす金銭金融金利金満家換金給金献金現金残金資金借金賞金税金千金送金大金代金貯金罰金募金料金義捐金ぎえんきん
こがね色。「金波金髪
美しい、りっぱな、かたいものなどを形容する語。「金言金科玉条金枝玉葉金城鉄壁
〈コン〉12および45に同じ。「金剛金色こんじき金泥金銅金堂黄金おうごん
〈かね(がね)〉「金目板金裏金帯金小金地金筋金針金
〈かな〉「金網金具金棒金輪
[名のり]か
[難読]金雀児エニシダ金糸雀カナリア金海鼠きんこ金団きんとん鍍金めっき滅金めっき

かね【金】

金属の総称。特に、金・銀・鉄・銅など。
貨幣。金銭。おかね。「に困る」「がかかる」「裏でが動く」「がたまる」
[下接語]唐金切り金銭金(がね)遊び金粗金有り金生き金板金打ち金腕金裏金大金帯金下ろし金隠し金掛け金からす切りがね腐れ金口金小金座金差し金地金下金死に金締め金筋金捨て金包み金つぼ胴金じ金留め金にせ延べ金はしはした針金火打ち金日金引き金ひじ日済ひなし金臍繰へそくり金真金見せ金耳金無駄金目腐れ金・持ち金・焼き金渡し金
[類語](1金属軽金属重金属貴金属卑金属非金属合金金箔ホイルメタル/(2金銭貨幣通貨おあし外貨硬貨金貨銀貨マネーコイン

きん【金】

[名]
銅族元素の一。単体は黄金色で光沢がある。金属中最も展延性に富み、厚さ0.1マイクロメートルはくにすることが可能。化学的に安定で、酸化されにくくびず、また、王水には溶けるが、普通の酸やアルカリにはおかされない。自然金の形で主に石英鉱脈中から産出し、母岩が風化したあと川に沈積した砂金としても得られる。貴金属として貨幣・装飾品や歯科医療材料などに使用。比重19.3。記号Au 原子番号79。原子量197.0。こがね。黄金おうごん
値打ちのあるもののたとえ。「の卵」「沈黙は

㋐金貨。また、金銭。「一封」「手切れ
㋑金額を記すときに、上に付けて用いる語。「五万円」
きんいろ。こがねいろ。「ラメのスカーフ」
将棋の駒で、金将
金メダル。「日本選手が・銀・銅を独占する」
睾丸こうがんのこと。きんたま。
金曜日
五行の第四位。方位では西、季節では秋、五星では金星、十干ではかのえかのとに配する。
[接尾]数を示す語に付いて、金の純度を表すのに用いる。24金が純金。カラット。「18のペン先」
[類語]黄金おうごん黄金こがね金銀純金十八金金塊砂金金粉ゴールド

きん【金】

女真じょしん族完顔部の首長阿骨打アクダが1115年に建てた国。りょうを滅ぼし、を南方に追って、中国東北地区・蒙古もうこ・華北を征服。都は会寧、後に燕京、汴京べんけい。1234年、モンゴルに滅ぼされた。

こん【金】

きん(金)9

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「金」の解説


キン
gold

Au.原子番号79の元素.周期表11族遷移元素.原子量196.96655(2).質量数197(100%)の安定同位体と,169~205に及ぶ放射性同位体が知られている.元素記号はラテン名aurum(黄色を意味する)の最初の二文字.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,これを音訳して浩律母(アウリュム)としている.
金は人類にもっとも古くから利用された金属で,B.C.5000年のエジプトの遺跡からも金の器具が発見されている.世界最大の塊金の発見は,1869年にオーストラリアのビクトリアのもので2520オンス(約71 kg)で,これにより2280オンスの純金が得られた.わが国においては,続日本紀に,聖武天皇の天平21年(749年)に陸奥の国より産出したことが記されている.歴史的には,佐渡,鴻之舞,串木野金山などがよく知られているが,2007年現在,日本で稼働中の金鉱山は1981年に金脈が見つかった菱刈鉱山(鹿児島県)のみ.同鉱山の鉱石の金含有率は非常に高く1 t 中に平均40 g(40 ppm)もあり,世界の平均値の約10倍で年間7~8 t の金を産出している.2005年には,加えて銅,亜鉛,鉛鉱石精錬の副産物として得られる新産金が約150 t,廃パソコン,携帯電話,めっき廃液などのリサイクルによる再生金が30 t あった.金は大部分自然金として存在し,母岩の石英の風化とともに砂金として産出する.自然金は不純物として銀を含んでいる.また,銅鉱,鉛鉱,黄鉄鉱のなかにも含まれている.地殻中の存在度0.003 ppm.世界の推定全埋蔵量90000 t の40% が南アフリカ,ついでオーストラリア7%,中国,ペルーが各5% 弱.鉱石を水銀でアマルガム化して抽出する混コウ(汞)法,シアン化ナトリウムで処理してシアノ錯イオンとして抽出し(青化法),亜鉛粉末を加えて金を析出させる方法(Merrill Crowe法)に加えて,1970年代から青化法のシアノ錯イオンを活性炭に吸着・分離する方法(carbon-in-pulp法)や,さらに溶媒抽出法が有力となっている.精製は電解法による.黄金色の美しい光沢をもつ金属.結晶は面心立方格子.密度19.32 g cm-3(20 ℃).融点1064.43 ℃,沸点2810 ℃.定圧モル熱容量25.38 J K-1 mol-1(25 ℃).線膨張率0.1424×10-4 K-1(0~100 ℃).熱伝導率315 W m-1 K-1(27 ℃).融解熱12.7 kJ mol-1(1063 ℃).蒸発熱310.5 kJ mol-1(2660 ℃).電気抵抗率2.35×10-6 Ω cm(20 ℃).標準電極電位(Au3+/Au)1.52 V.第一イオン化エネルギー889.9 kJ mol-1(9.225 eV).熱の良導体で銀の73%,また電気の良導体でもあり,銀,銅に次ぎ,電気抵抗率は銀の1.48倍である.金属中でもっとも展延性に富む.硬さ2.5~3.化学的には非常に安定である.単独の酸には不溶.王水に溶けてHAuCl4をつくる.高温では酸素,硫黄とは反応しないが,臭素,塩素とは直接化合する.通常の酸化数1~3.純金を24カラットとして50% の金を含む場合は12カラットと表す.国内では,2005年度の最大用途は,電子部品材料で50% 弱,パソコン,携帯電話用ICパッケージ,プリント基板,リードフレーム,ボンディングワイヤ,コネクター,自動車用電装品など.ついで25% 弱が資産用金地金,宝飾品用10%,歯科・医療用の合金5% などであった.[CAS 7440-57-5][別用語参照]金化合物

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「金」の意味・わかりやすい解説

金【きん】

満州(中国東北)〜華北に女真族が建てた王朝。1115年―1234年存続。始祖は阿骨打(アクダ)。を滅ぼし,を南方に追い,1127年以後の中国は金・宋の対立となる。のち都を燕京(北京)に移し,征服王朝として中国人の上に君臨した。国粋化を図って独特の文字なども制定したが,次第に中国化が進み,固有の風俗を失って衰退に向かう。9代120年にしてモンゴル帝国に滅ぼされた。
→関連項目愛新覚羅オゴタイ・ハーン関漢卿契丹後金高麗女真語辛棄疾靖康の変チャガタイ・ハーン中華人民共和国チンギス・ハーンツングース語系諸族刀伊の入寇トゥルイ満州耶律楚材

金【きん】

元素記号はAu。原子番号79,原子量196.966569。融点1064.18℃,沸点2857℃。貴金属元素の一つ。金の使用はきわめて古く,古代エジプトでは前3000年ころすでに水簸(すいひ)法で採取。日本では《続日本紀》に749年陸奥国より初めて貢金の記事があるが,古墳時代の出土品に金象嵌細工がみられることから,より古く原始時代から利用されていたと考えられている。色は,塊状で黄金色,コロイドまたは粉末で紫,融解すると緑。金属中最も展延性が大きく厚さ0.1μmの箔(はく)にできる。化学的に安定だが,シアン化カリウム水溶液,王水,水銀には可溶。貨幣,装飾用,歯科用,電子部品などに使用。合金の純度は18金といった言い方をするが,これは純金を24金とした割合を表示したもので,正式の単位名はカラット。大部分自然金(山金(やまきん))の状態で産出,砂金としても産する。砂金では簡単な比重選鉱,山金ではアマルガム法,シアン化法などにより,その他銀,銅製錬の際の電解槽沈殿物より採取。世界の年生産量は約1901t(1992)。→金鉱

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「金」の解説

金(きん)
Jin

1115~1234

トゥングース系の女真(じょしん)人が,1115年東北アジアに統一政権を立て,やがて南下して中国華北を支配した征服王朝。太祖阿骨打(アグダ)は反遼の民族意識を巧みに用いて統一し,対内的には女真的な勃極烈(ボギレ)制(最高機関),猛安(もうあん)・謀克(ぼうこく)制(軍事・行政制)を定め,対外的にはを滅ぼした。その後,金は華北に侵入して北宋を滅ぼし,秦嶺(しんれい)‐淮水(わいすい)の線で南宋と対峙したが,華北の領有によって二重支配の必要に迫られた。海陵王時代に急進的な中国化が行われ,燕京(えんけい)に遷都し,尚書省のもとに六部(りくぶ)を置いて支配する中央集権制を樹立した。また地方統治には,19の路のもとに州県を置く州県制を採用した。これにより,華北では猛安・謀克制に組織された女真人と,州県制により統治される漢人が雑居するようになった。やがて中国化に伴う女真人の弱体化,戦争による財政危機は衰亡をもたらし,モンゴル帝国,南宋の攻撃で1234年滅亡した。金は国粋化を図って女真文字をつくったが,むしろ中国文化の影響を強く受け,漢文学が流行した。また『大蔵経』(だいぞうきょう)『道蔵』(どうぞう)が刊行され,新道教教団の全真教が興起した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金」の意味・わかりやすい解説


きん
Jin; Chin

女真満州,内モンゴル,華北に建てた王朝(1115~1234)。生女真のワンヤンアクダ(完顔阿骨打)が女真を統一,収奪の激しいと戦い,収国1(1115)年独立して帝位につき,太祖と名のって,金と号した。猛安・謀克制による軍事的・行政的制度を華北に移入し,遼に続く征服王朝としての体制を整えた。初め金は,女真文字を作成し,出身地上京会寧府を都として国粋主義に努めたが,第4代海陵王は,中国的専制国家建設を企て,行政改革や燕京遷都を断行。しかし第6代章宗以降,漢化と貧窮化が進行し,漢人による反乱が続くなかで天興3(1234)年,新興モンゴル帝国の侵入により滅亡。


きん
gold

元素記号 Au ,原子番号 79,原子量 196.96655。周期表 11族,銅族元素の1つ。天然には自然金として産出する。地殻の平均含有量 0.004ppm,海水中の存在量 0.01 μg/l 。資源は主として石英脈中に産する自然金で,母岩の風化沈積により砂金として採取される。単体は美しい黄金色の軟らかい金属で,融点 1063℃,比重 19.3。金属のなかで最も展延性に富み,厚さ 0.1μmの箔を作ることができ,1gを約 3000mの線に伸ばすことができる。化学的には安定であるが,王水に溶け,塩化金酸となる。古くから貨幣,工芸,装飾品の材料として珍重されているほか,陶器類の着色,メッキ,金箔,歯科材料などに用途がある。


きん
gold

金は財 (貨) であるとともに貨幣であり,貨幣は,交換手段,計算単位あるいはニューメレール,価値保蔵手段としての機能をもつ。計算単位あるいはニューメレールの機能を果すためには,貨幣は一方で価値尺度ないし価値標準,他方では繰延べ払いの標準でなければならない。これら諸機能は各種金属,金属以外の財によって果されたが,最終的には金がになうことになった。金が前記のような諸機能を果す理由は,貨幣用財として他の金属には求められない均質性,耐久性,不変質性,鋳造・融解の容易さ,産出量の安定性,運搬の容易さなどの特質をもつためである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「金」の解説


きん

第Ⅰ族(銅族)に属する黄金色の金属
砂金洗取による採金は原始的な技術で,日本では原始時代から室町時代まで続いた。記録の上では,701年陸奥国での冶金,749年同国からの黄金貢納が『続日本紀』にみえる。産地は陸前・陸中の本吉・気仙・磐井などの諸郡が中心で,10世紀奥州藤原氏が平泉で強勢をふるった時代には産金額も著しく増加した。16世紀になると戦国大名の金銀山開発によって,金の採掘が激増した。金銀は銅銭に比べて高い価値をもつ流通貨幣として通用し,戦国大名は軍用金・恩賞として用いたが,江戸幕府は金山を直轄とし,金座をおいて,大判・小判・一分金などを鋳造・発行した。日宋貿易の発展以来,中世,日本の中国への重要な輸出品となり,幕末の通商条約締結後の金の流出は著名である。日本では1897(明治30)年金本位制が確立した。1931年の金輸出再禁止以来,金本位制は復活していない。しかし,国際通貨としての重要性は変わらない。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典 第2版 「金」の意味・わかりやすい解説

きん【金 Jīn】

女真(じよしん)Jürchin(女直(じよちよく)Jürchi)族の完顔(かんがん)部長の阿骨打(アクダ)が中国東北地方に建てた王朝。1115‐1234年。いわゆる征服王朝の一つ。遼(契丹(きつたん)Kitai)を滅ぼし,宋を圧迫して中国北半を領有,西夏,宋,高麗を臣事させたが,のち急速に強力となったモンゴルのために滅ぼされた。国を保つこと120年。
[女真族の発展とその末路]
 女真族は,中国東北地方に住むツングースTungus族の一派である。

きん【金 gold】

周期表元素記号=Au 原子番号=79原子量=196.9665地殻中の存在度=0.004ppm安定核種存在比 197Au=100%融点=1064℃ 沸点=2966℃固体の比重=19.3(20℃)液体の比重=17(1063℃)電子配置=[Xe]4f145d106s1 おもな酸化数=I,III周期表第IB族に属する金属元素。純粋な金属として人類が最初に知った金属の一つであると考えられている。 金の原子記号Auはラテン語のaurumによるものであり,これはヘブライ語の〈光〉を意味するorまたは〈赤色〉を意味するausからきたものとされ,フランス語でもorである。

きん【金 jīn】

(1)中国の楽器分類法八音(はちおん)の一つ。金属を材料として作られた楽器をさす。唐代の楽器のうち鐘,桟鐘(さんしよう),鎛(はく),錞于(じゆんう),鐃(によう),鐲(たく),鐸(たく),方響,銅鈸(どうばつ),銅鼓がこれに属する。(2)朝鮮の雅楽器。銅鑼の一種。中国の鑼(ら)の伝来したもの。大金と小金とがあり,ひもでつり下げて槌(つち)で打ち鳴らす。大金は直径約46cm,厚さ約6cm。小金はかつて軍楽にも用いられたが,現在は農楽で重要なリズム楽器として用いられる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「金」の解説


きん

1115〜1234
中国を支配した北方民族の王朝
女真族の完顔阿骨打 (ワンヤンアグダ) (太祖)が会寧を都に建国,2代太宗は1125年遼 (りよう) を,27年北宋を滅ぼした。3代熙宗 (きそう) は南宋に臣礼をとらせ,4代海陵王は燕京(現在の北京)に都した。6代世宗は国制を整え,全盛期を迎えた。8代宣宗のとき,開封に遷都しやがて滅亡。金は猛安 (もうあん) ・謀克 (ぼうこく) 制や女真文字の創始など,民族の独自性を固守しようとしたが,中国文化に同化され,13世紀モンゴルによって滅ぼされた。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「金」の解説


きん

中国東北地方からおこった女真族のたてた王朝(1115~1234)。ハルビン南東の按出虎水(あんしゅつこすい)(現,阿什河(アースーフー))の流域を根拠地とした完顔(ワンヤン)部首長の阿骨打(アクダ)(太祖)が,1115年遼から独立して帝位につき,国号を大金と定めた。第2代太宗は遼を滅ぼし,宋の都開封を攻略して,満州・内モンゴル(内蒙古)・華北にまたがる地域を支配した。第4代海陵王は53年北京に遷都し南宋を攻撃しようとしたが,内紛がおこり失敗。1234年モンゴル軍などにより滅亡した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

占い用語集 「金」の解説

五行の一つ。金を象徴とし、陽の金「庚金」と陰の金「辛金」がある。金だけではなく、鉱物や金属、石など生の状態のものや、生成された加工品なども指す。季節では秋、方角では西をあらわす。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

世界大百科事典内のの言及

【阿骨打】より

…中国,金朝の初代皇帝,太祖。在位1115‐23年。…

【女真文字】より

…女真語はツングース・満州諸言語(ツングース諸語)の一つで,これらの言語のうちでも系統的に満州語に最も近い。女真語を使った女真族は,中国の東北地域に1115年から1234年まで存続したを建国した民族である。女真は古く〈女(じよちよく)〉(以下,便宜上〈直〉とする)とも書かれた。…

【大金国志】より

…中国,金朝の歴史を記述した書。全40巻。…

【外貨準備】より

…一国の通貨当局が国際収支の赤字を決済し,または外国為替市場へ介入するために容易に利用できる流動的な資産をいう。IMF(国際通貨基金)の統計では国際流動性international liquidity,また日本の統計では外貨準備高と呼ばれ,概念的には同じものであるが,通貨当局の金保有分の評価のしかたにより計数が異なることがある。外貨準備に含められる金融手段は,通貨当局が使用の必要を感じた際に直接的かつ効果的に管理できる現存の資産に限られ,通貨当局の保有する金および外国為替と,SDR(IMFの特別引出権)保有額ならびにIMFにおける準備ポジションを計上するのが普通である。…

【カラット】より

…語源のうえでは,マメ科の植物デイコの種子のアラビア名quirrat,またはイナゴマメの実のギリシア名kerationに由来するといわれる。 カラットは,金の純度(金相ともいう)の表現にも用いられ,純金を24として表した純度の値に記号Kを添えて示す。したがって純金は24Kであり,純度が750/1000,すなわち18/24の金は18Kであって,これを18金と呼ぶこともある。…

【黄】より

…身色がどのようにして決定されるかは必ずしも明瞭でないが,太陽との関係がとくに重要な意味をもっている。 一般に太陽は色の輝きをもつものとされ太陽に関係のある神々(エジプトのホルス,インドのビシュヌ,ギリシアのアポロン,ペルシアのミトラ,さらにキリスト)の像は多くは金色の身色をもち,金色の衣をまとい,光輪をつけ光を放つ。この金色は神的なものの栄光ないしその力を象徴するが,金色は場合によっては黄色がこれに代わる。…

【貴金属】より

…金属を分類するときの用語の一つで,卑金属に対する語。通常は,金Au,銀Ag,および白金族元素のルテニウムRu,ロジウムRh,パラジウムPd,オスミウムOs,イリジウムIr,白金Ptをいう。…

【銀】より

…周期表元素記号=Ag 原子番号=47原子量=107.8682±3地殻中の存在度=0.07ppm(67位)安定核種存在比 107Ag=51.35%,109Ag=48.65%融点=961.9℃ 沸点=2212℃固体の比重=10.49(20℃)液体の比重=9.4(961℃)水に対する溶解度=2.8×10-5g/l(25℃)電子配置=[Kr]4d105s1 おもな酸化数=I,II周期表第IB族に属する金属元素。金,銅に次いで発見されたとされている。…

【大仏開眼】より

…山間僻地の紫香楽での造像工事は,すでに翌年から火災が頻発し,地震が続発するなど不祥事件が起こり,ついに平城還都が断行された。そして大仏造立の事業は,平城京東郊の金鐘寺の寺地で再開されることになった。当寺はすでに大和国金光明寺に認定されていたが,《華厳経》の研究を行っていた寺であり,また寺地に巨像の鋳造に適した山がもとめられたからである。…

【太陽】より

…そこで太陽に比べてもっと近い惑星や小惑星までの距離を測ったり,その他いろいろなことが試みられてきた。しかし最近のレーダー測距の進歩によって,金星までの距離が,三角測量ではとうてい得られなかった高い精度で測定できるようになり,1天文単位=1億4959万7870kmと国際的に取り決められた。 地球は太陽のまわりを1年の周期で公転しているが,太陽からどのくらい離れたところを公転するかはほぼ太陽の質量だけで決まり,地球の質量にはほとんどよらない。…

【鉛】より

…周期表元素記号=Pb 原子番号=82原子量=207.2地殻中の存在度=12.5ppm(35位)安定核種存在比 204Pb=1.40%,206Pb=25.1%,207Pb=21.7%,208Pb=52.3%融点=327.5℃ 沸点=1744℃比重=11.3437(16℃)水に対する溶解度=3.1×10-4g/l(24℃)電子配置=[Xe]4f145d106s26p2おもな酸化数=II,IV周期表第IVA族に属する金属元素。太古から知られていた元素(古代七金属)の一つで,古代エジプトの遺跡から鉛のメダルなどが発見されており,鉛はおそらく有史以前から,金,銀とともに,金属の形で取り出されていたと思われる。…

※「金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

咽頭結膜熱

アデノウイルスの感染により、発熱、のどのはれと痛み、結膜炎の症状を呈する伝染性の病気。感染症予防法の5類感染症の一。学童がプールで感染して集団発生するのでプール熱ともいう。...

咽頭結膜熱の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android