釣針(読み)ちょうしん

精選版 日本国語大辞典 「釣針」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐しん テウ‥【釣針】

〘名〙 魚釣りに用いる針。つりばり。
謡曲玉井(1516頃)「まづ釣針を尋ねつつ、おん国に帰し申すべし」

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デジタル大辞泉 「釣針」の意味・読み・例文・類語

つり‐ばり【釣(り)針/釣り×鉤】

魚を釣るときに用いる先の曲がった針。はり
[類語]毛針蚊針擬餌針ルアーフライ

つりばり【釣針】[狂言]

狂言主人太郎冠者西宮えびす神社に参詣し、妻を得られるよう祈願すると、夢のお告げによって釣り針を授かる。主人には美女がかかるが、太郎冠者が釣ると醜女なので逃げだす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「釣針」の意味・わかりやすい解説

釣針
つりばり

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。大蔵流では聟女(むこおんな)狂言とする。このあたりの者が、太郎冠者(シテ)を連れて、西の宮の夷(えびす)へ申し妻(妻を得るため神仏に祈ること)に出かけ、夢のお告げによって妻を釣る釣竿(つりざお)を賜る。喜んで持ち帰り、冠者に釣らせる。冠者は「釣ろよ釣ろよ……」と謡い舞いながら橋掛りへ行き釣針を揚幕へ投げると、被衣(かずき)をかぶった奥様がかかって出てくる。ついで腰元たちを釣り、さらに自分の妻も釣り上げる。主人たちが祝言のため奥へ入ったあと、冠者が自分の妻となる女の被衣をとると、あまりの醜女(しこめ)(乙の面を着用)なので、慕い寄る女を突き倒して逃げ込む。以上は和泉(いずみ)流の内容で、大蔵流では、なんでも釣れる釣針を授かり、太刀(たち)などを釣ってから、主人の奥様と腰元・下女数人を釣り、主人夫婦が入ったあと、好きな女をよりどりにしようとするが、みな醜女だったという筋。

 本曲を歌舞伎(かぶき)舞踊化したのが常磐津(ときわず)による『戎詣恋釣針(えびすもうでこいのつりばり)』(通称「釣女(つりおんな)」)。1883年(明治16)河竹黙阿弥(もくあみ)作詞・6世岸沢式佐作曲により素(す)の演奏曲としてできていたものを、1901年(明治34)東京座で初世市川猿之助が初演した。

[小林 責]

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百科事典マイペディア 「釣針」の意味・わかりやすい解説

釣針【つりばり】

魚釣りに用いる針。古くは動物の角や骨などでつくられた。現在のものは多くは鋼製で,ときに黄銅製。丸型,角型,長型が基本型で,一般に先端近くに,かかった魚が抜けないようにした〈もどし〉の部分がある。擬餌(ぎじ)針は生餌(いきえ)に似せて鳥の羽毛(毛針),魚皮,ゴム,プラスチック等をつけたもの。→フライフィッシングルアーフィッシング
→関連項目釣道具

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世界大百科事典 第2版 「釣針」の意味・わかりやすい解説

つりばり【釣針】

狂言の曲名。大蔵,和泉両流にあるが,大蔵流では女狂言,和泉流では太郎冠者狂言に分類している。ともに独身の主従が連れ立って西宮の夷(えびす)に参籠する。夢のお告げに釣針を賜り,これで妻を釣ることになる。供の太郎冠者は〈釣ろうよ,釣ろうよ〉とフシおもしろく声をかけながら揚幕に釣針を投げ,まず主人の奥方を釣る。次に腰元数人,さらに太郎冠者自身の妻と,次々に女を釣り出す。主人たちが奥へ入ったあと,太郎冠者は自分の妻に対面しようと,その被衣(かずき)を取ってみると醜女なので,驚いて逃げ出す。

つりばり【釣針 hook】

魚を釣るための針。〈つり〉〈はり〉〈ち〉などともいう。各部の名称を図に示す。ミミズをだんご状に丸めて用いる松島湾のハゼ釣りや,南太平洋のたこ(凧)とクモの巣を使ったダツ釣りのように,釣針を使わない釣りもまれにあるが,釣針は釣りの六物(釣針,釣糸,釣りざお,餌,おもり,うき)のなかで最も重要な要素である。形によって特徴があるので,対象,目的によって使い分ける。一般に小型のものは取扱いが難しいが食いはよく,くきの長いものは食いが悪いが,餌づけ,魚の取り外しは容易である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「釣針」の意味・わかりやすい解説

釣針
つりばり

釣りに用いる針。後期旧石器時代から骨角製の釣針と思われるものが発見されている。現在用いられているものは,ほとんど鉄製で,大きさは号数で示し,1号から 30号ぐらいまである。形は丸型,角型,袖型が代表的。釣りの種類,対象魚,場所,つける餌などによって形や大きさを選び,使い分ける。

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世界大百科事典内の釣針の言及

【とげ(棘)】より

…【岩槻 邦男】(2)動物のとげspine 動物の体表などにはキチン質,角質,石灰質などでできた硬い付属突起がつくられることがあり,また殻,骨片,骨などにも付属突起が形成されることがあり,このような付属突起で先が鋭くとがっているものは一般にとげといわれる。同じような付属突起でも,形,役目,部位によっては,とくに鉤(かぎ)hook,かぎづめclawなどと呼ばれるものもある。キョクヒチュウ類,ウニ類などでは,表皮からつくられたとげが体表をおおっており,移動や防御に用いられる。…

【漁具】より

…したがって,生物体を直接,なんらかの方法(引っ掛ける,突く,挟むなど)で保持して水から揚げるか,水と生物をこし分けるかのどちらかが必要になる。後者としては網が使われることが最も多く,前者にはいろいろのものがあるが,釣針が代表的なものである。そこで,漁具を分類するのに,(1)網漁具,(2)釣漁具,(3)雑漁具とすることが多い。…

【骨角器】より

…この植刃器の知識は,中石器・新石器時代に伝えられ,狩猟・漁労用具だけでなく,栽培植物の収穫のための植刃鎌としても使われている。漁労用具の使用が盛んになる中石器時代以降になると,骨や角製の釣針ややすが作られた。とくに,中緯度以北の中石器・新石器時代の遺跡からは,巧妙に考案された各種漁労用具が発見されている。…

【釣り】より

…釣針で魚を捕ること。魚釣り,釣魚(ちようぎよ)ともいう。…

【東条[町]】より

…灘五郷の酒米の産地として知られるが,近年は野菜や花卉の栽培,イチゴなどの観光農業も導入されている。地場産業として釣針とこいのぼりの生産が盛んで,釣針は江戸時代に土佐から製造技術を移入したことに始まり,今日では全国生産高の7割を占める。中国自動車道のひょうご東条インターチェンジがあり,ゴルフ場や遊園地などのレジャー施設も多い。…

※「釣針」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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