化学者。昭和5年北海道に生まれる。1954年に北海道大学理学部卒業、1960年に北大で博士号を取得。1963年から1965年まで、アメリカ合衆国のパデュー大学の研究員として留学。1973年に北大工学部教授、1988年にイギリスのウェールズ大学招聘(しょうへい)教授。1994年(平成6)北大を退官、同大名誉教授となる。2種の有機化合物を結びつけて新しい化合物をつくりだすカップリングの研究開発に取り組む。2010年(平成22)に「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング」の業績により、リチャード・ヘック、根岸英一とともにノーベル化学賞を受賞した。
カップリングの研究では、化学反応を仲介する触媒と、2種の化合物の材料を効率よく結びつけることがポイントになる。ノーベル賞を共同受賞したヘックは、1972年にパラジウムを触媒として使い、カップリングを効率よく進めて意図したとおりの化合物をつくりだす方法を確立した。これをきっかけに、反応の効率を高める触媒と、2種の材料が結びつくときのつなぎ替えの目印にどのような物質を使うかで新たな研究競争が始まった。共同受賞者の根岸は、触媒にパラジウムを使い、つなぎ替えの目印にリチウムやマグネシウムを試みたが反応が強すぎてパラジウムの働きを弱めてしまうことが判明。その後、亜鉛化合物を使う方法で実験を重ねた結果、より効率よく安定した反応が得られ幅広い応用の道を切り開いた。これは「根岸カップリング」とよばれる。鈴木は、より安全で扱いやすい合成法の開発に取り組み、有機ホウ素化合物を使い、汎用性の高い「鈴木カップリング」を開発した。この方法はカップリングの傑作とされている。こうしたカップリング法の開発と発展は、薬剤の開発と創薬、農薬の製法などに多くの新商品をもたらしただけでなく、液晶材料の製法、有機ELディスプレーの製造などにも使われ、工業界に多大な貢献を果たした。2010年に文化功労者に選ばれ、文化勲章を受章した。
[馬場錬成]
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