鉄鋼の変態(読み)てっこうのへんたい(その他表記)transformation of steel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄鋼の変態」の意味・わかりやすい解説

鉄鋼の変態
てっこうのへんたい
transformation of steel

鉄鋼 (すなわち鉄の合金) の相状態が,温度および合金成分の種類と量によって種々に変ること (→同素変態 ) 。純鉄は固体キュリー点 (磁気転移点) A2 (788℃) ,同素変態点 A3 (906℃,α⇔γ ) および A4 (1404℃,γ⇔δ ) をもつ。 A3 点以下および A4 点以上で安定なα相とδ相は同じ体心立方晶でフェライト,その中間温度区間で安定なγ相は面心立方晶でオーステナイトという。β相がないのは,20世紀初めまでは磁気転移と同素変態が区別されず,A2 から A3 までの常磁性鉄をβ鉄と呼んでいたが,ギリシア文字による表示を同素体に限ることになったためである。上記のほか炭素鋼ではセメンタイトのキュリー点 A0 (215℃) およびオーステナイトの共析変態点 A1 (721℃) が組成に関係なく一定温度で現れる。変態点の記号A はフランスの金属学者 F.オスモンによるもので,フランス語の acier (鋼) の頭文字である。また同素変態,共析変態は固体内変化であるため加熱時と冷却時で差があり,これもそれぞれフランス語の chauffage (加熱) ,refroidissiement (冷却) によって Ac1 ,Ar1 のように表わす。マルテンサイト変態開始・終了点は Ms ,Mf と記すが,s ,f は start ,finish の頭文字である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android