(読み)なた

精選版 日本国語大辞典 「鉈」の意味・読み・例文・類語

なた【鉈】

〘名〙
① 短くて、刃が厚く幅の広い刃物。薪などを割るのに用いる。
書紀(720)天智六年閏一一月(北野本訓)「斧廿六釤(ナタ)六十四刀子(かたな)六十二枚を以て椽磨等に賜ふ」
相撲の手の一つ。相手のさし手を上手できめ、その腕で自分のもう一方の手をつかみ、ひじを曲げて相手の胸でおさえる形。ひじを曲げた格好がなた形をするところからこの名がある。

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デジタル大辞泉 「鉈」の意味・読み・例文・類語

なた【×鉈】

幅のある厚い刃物に柄をつけたもの。まき割り、樹木枝下ろしなどに用いる。
相撲で、立ち合いにひじを曲げて相手ののど、または胸を攻めること。
[類語]手斧ておの手斧ちょうな

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉈」の意味・わかりやすい解説


なた

鉈は、本来林業や狩猟など山仕事に適した刃物類であり、薪割(まきわ)りにも使われる。種類は、刃の形状によって、剣鉈(けんなた)、腰鉈、海老(えび)鉈、竹割鉈などがある。

 剣鉈は刃の先端がとがっているのが特徴。狩猟時の獲物の解体や、山に入ったときは枝を落としたり、藪払(やぶはら)い、木のつるを切ったりなど用途は多彩である。

 腰鉈は刃が長方形で、枝や木を切る山仕事に欠かせない。また薪割りにも使用する。

 海老鉈は、山仕事で森林の枝打ちに使用される。腰鉈に比べて少し幅広で刃の先端には、石などに当たって刃がこぼれるのを防ぐために「石突き」とよばれる突起がついている。

 竹割鉈は、竹を縦に割るために使用する細身の鉈。竹に対して刃がまっすぐ入る必要があるため、刃は「両刃」になっている。

 鉈の刃には片刃と両刃があり、両刃は右利き左利きにかかわらず扱える。薪や竹を縦割りするのに適しており、切り口はまっすぐになるが、刃が欠けやすい弱点がある。木の皮をはいだり枝を払ったりするには、両刃に比べて薄く鋭利な片刃がよい。

 鉈は、一般的に木製や皮革の鞘(さや)に入れて腰にぶら下げる。枝払いや薪割りには刃自体の重さがあると、その勢いと刃の鋭さで切断しやすくなる。

[赤尾建蔵 2021年7月16日]


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世界大百科事典 第2版 「鉈」の意味・わかりやすい解説

なた【鉈】

厚みのある短冊形鉄片の一側を刃とし,短い木柄をつけた工具総称。両刃のものや,長柄のものなどもある。鉈は草,篠などを伐り払う,薙断(なぎたち)の略といわれる。また,割る,削るということから,庖丁という地方もある。木工具であるとともに山樵具(杣(そま)具),農具でもあり,その形状,用途の種類は多い。木工用としては,桶師,屋根葺きの柿師(こけらし)用の割鉈,薄板剝(は)ぎ用の剝(へ)ぎ庖丁,山樵具または農具として枝打ち用の鉈鎌,鼻付き鉈などがある。

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