(読み)マサカリ

デジタル大辞泉 「鉞」の意味・読み・例文・類語

まさかり【×鉞】

伐木用大形のおの。古くは武器刑具にも用いられた。
紋所の名。1図案化したもの。
[類語]手斧ておの手斧ちょうな

えつ〔ヱツ〕【×鉞】

古代中国の、青銅製の大斧おおおの罪人の首を切るのに用いた。また王権象徴ともされる。

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精選版 日本国語大辞典 「鉞」の意味・読み・例文・類語

まさかり【鉞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 木を伐るのに用いる大形の斧(おの)。中古には兵器にも用いた。
    1. [初出の実例]「天皇親ら斧鉞(マサカリ)を操(と)りて、大連に授けて曰く」(出典:日本書紀(720)継体二一年八月(寛文版訓))
    2. 「件の鉞(マサカリ)を以て開き、甲の鉢を破よ砕けよと、思様に打ける処を」(出典:太平記(14C後)三二)
  3. 歌舞伎の鬘の一つ。髷がまさかりの形をしているもの。市川家で用いる。
    1. [初出の実例]「市川家の座頭なればまさかりといふ髷に結ふこと此慣例なりしと」(出典:風俗画報‐二二四号(1901)劇場の初興行)
  4. 紋所の名。を図案化したもの。丸に違い鉞、三つ鉞などがある。
    1. 丸に違い鉞@三つ鉞
      丸に違い鉞@三つ鉞

えつヱツ【鉞】

  1. 〘 名詞 〙 中国古代の青銅製まさかり。天子親征の際の儀器。のちに天子が征討を命じる際に与える符信として用いた。
    1. 鉞〈五経図彙〉
      鉞〈五経図彙〉
    2. [初出の実例]「 エツ マサカリ 音 越」(出典:色葉字類抄(1177‐81))
    3. [その他の文献]〔書経‐顧命〕

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改訂新版 世界大百科事典 「鉞」の意味・わかりやすい解説

鉞 (えつ)
yuè

中国の殷・周時代を中心として使用された青銅利器で,斧の類の大型のものをいう。《説文(せつもん)》では〈戉〉字を使っている。現在,実物として存在するのは殷時代後期のもので,刃の幅が約30cmあり,刃と平行に柄をつける。周の武王が牧野(ぼくや)で殷の紂王(ちゆうおう)を討ったときに,左手に黄鉞を杖としていたという伝説に象徴されるごとく,鉞は王が正義をとり行う具と考えられ,刑罰において使用されたもので,鉞による斬首をかたどる図象文字が殷時代にある。《後漢書》輿服志によれば,漢時代では天子の車馬行列に黄鉞車,県令以上の役人の車馬行列には斧車を加えていることが知られるが,これは殷時代の観念がのこり,漢時代でも刑罰をとり行う大型の斧を鉞とよんでいたことを示している。殷時代後期・西周時代の遺物の中には鉄刃銅鉞といわれる,刃のところが隕鉄(いんてつ)を利用してつくられたものがみられる。鉞よりやや小さい斧は戚(せき)とよばれ,舞に使用されるが,武器としても使用されたらしい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉞」の意味・わかりやすい解説


えつ
yue

中国古代のまさかり形をした青銅製兵器。刃部と同方向に柄がつけられる。殷代に盛行したが,宝儀器化したものも多く,玉製品もある。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「鉞」の解説

まさかり【鉞】

木を切ったり、加工したりするのに用いる大型の斧(おの)。古くは武具としても用いた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【斧】より

…斧の刃を白く刃幹を黒く描くか,そのようにぬいとりした布を黼(ふ)といい,これを天子の礼服に用い,また天子はこの布をはった屛風を背にして南面して諸侯に対した。斧の大きいものを(えつ)といい,天子が将軍に征討を命ずるときそのしるしとして授けた。天子が自ら征討に赴くときは,黄金で飾ったいわゆる黄鉞を用いた(《史記》周本紀など)。…

【闘斧】より

… 石製闘斧以後も,ヨーロッパでは実用または儀仗用の,青銅あるいは鉄製の闘斧の製作使用が続けられ,中世フランク族の用いた鉄製闘斧フランシスクfransiskに連なり,さらには闘斧と槍先とが結合した形状をとる武器アラバルダalabardaは,ローマ教皇の護衛兵の儀器として現在も使われている。これら西方の闘斧に対して,中国には(えつ)がある。殷・周時代ではおもに青銅製で,武器または斬首用具として発達し,しだいに装飾を加え,王の親征または出陣を象徴する儀器と化し,漢代以後は衰退する。…

【武器】より

…ただ,斧も斤も,武器として使用されたもののほか,工具や農具として使われたものもあった。(えつ)は〈まさかり〉で,同じ形の小型のものが斧,大型のものが鉞と呼ばれた。鉞の中には高さ34cm,重さ6kg近いものがあって,実際これを戦場で振り回して闘うことは不可能であり,文献によって知られるように斬首や腰斬など刑罰の執行に使用されたものである。…

※「鉞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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