出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
鉄を炭素含有量によって分類するとき,炭素約2.0%以上のものを銑鉄,それ以下のものを鋼という。われわれの最も身近にある鉄は鋼であるが,それはおもに銑鉄からつくられている。この場合の銑鉄は製鋼用銑と呼ばれ,鋼にくらべて,とくに炭素を多く含む点に特徴がある。もともと鉄の原料は鉄鉱石であるが,現在この鉄鉱石から鉄を取り出すには,高炉を用いるのが最も容易であり,安価である。しかし,この場合はコークスを用いるため,コークス中の炭素が必ず鉄に溶けこみ鉄は銑鉄になる。高炉から出された状態の銑鉄の温度はほぼ1500℃であるが,約4.5%の炭素を含んでいるために,温度が下がっても1200℃前後までは溶けた状態にあって流れやすく,型に流しこんで鋳物にするにはすぐれている(純鉄の融点は1535℃)。しかし,固まった銑鉄は圧縮に対しては強いが,一般に曲げや引張りには弱い。したがって,延ばしたり引いたりして板状や棒状に加工することがむずかしい。この原因は炭素を多く含む点にあるので,溶けた状態の銑鉄に酸素を吹きこんで炭素を一酸化炭素の形で取り除き,より加工しやすく,使いやすい鋼に変えられる。なお,大型歯車などの鋳物に用いられる銑鉄はケイ素の含有量が高く鋳物用銑(〈ずく〉)と呼ばれるが,日本で生産される量は全銑鉄量(1996年約7570万t)の1.5%前後にすぎず,ほとんどの銑鉄が製鋼用銑である。
執筆者:槌谷 暢男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
溶鉱炉によってつくられた高炭素の鉄。現在広く行われている鉄鋼製錬の工程は、まず鉄鉱石と造滓(ぞうさい)剤である石灰石と燃料および還元剤としてのコークスを溶鉱炉に装入し熱風を吹き込んで鉄鉱石を加熱、還元し、炭素を4%前後含む溶融状態の鉄とする。これを銑鉄という。この銑鉄を転炉に移し、酸素を吹き付けて炭素やその他の不純物を酸化して除去し、これを凝固させて圧延その他の塑性加工により鋼の板や棒をつくる。銑鉄にはこのように鋼の原料に用いる製鋼用銑鉄と、酸化製錬をせずに成分を調整して鋳鉄鋳物にするための鋳物用銑鉄とがある。鋳鉄鋳物には凝固時に黒鉛結晶を形成させる必要があるので、鋳物用銑鉄は製鋼用銑鉄に比べてケイ素が多くマンガンが少なく、またその他の微量不純物も鉄鉱石を吟味して少なくしている。溶鉱炉でつくった銑鉄を高炉銑、電気炉でつくったものを電気銑、木炭を還元剤および燃料としてつくったものを木炭銑、酸性転炉用の製鋼用銑をベッセマー銑、その他とくにリンの少ない低リン銑やケイ素の多いシルバリー銑、バナジウムとチタンとを含むバンチット銑など種々の特殊銑鉄がつくられている。
[井川克也]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
溶鉱炉(高炉)内で鉄鉱石の還元により生成した鉄.銑鉄は還元剤のコークスと接触して炭素を多量に吸収し,副原料の鉄マンガン鉱からのマンガン,鉱石から還元されたケイ素,リン,また,コークスや重油からの硫黄をも吸収する.以上の成分元素を5元素とよび,鉄鋼製錬過程では非常に重要なものである.このほかにもチタン,クロム,ニッケル,銅などもごく微量入れることがある.これら成分元素の含有量は,操業条件によって多少制御することができる.銑鉄はその用途によって,鋳物用と製鋼用の二つに大別できる.鋳物用の特徴は湯流れをよくするためにケイ素量が多い.各銑鉄の組成の一例を次に示す.
鋳物用銑は,高炉から出ると小さな鋳型に鋳込まれて,鋳物原料となる.銑鉄の大部分を占める製鋼用銑は,溶けたまま製鋼工場に運ばれ,転炉などによって酸化製錬をうけて鉄以外の成分元素の少ない鋼となる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…鉄鉱石から鋼をつくる工程をいい,前段の銑鉄をつくる工程を製鉄または製銑といい,後段の銑鉄から鋼をつくる工程を製鋼という。製銑,製鋼,さらに鋼材,製品製造までを行う銑鋼一貫製鉄所の工程例は〈製鉄所〉の項の図を参照。…
…鋳鉄cast ironとは銑鋳物(ずく鋳物)用の銑鉄または銑鋳物そのものをいう。炭素3.0~3.6%,ケイ素1~2%,マンガン0.5~1.0%,リン0.3~1.0%,硫黄0.06~0.1%を含む鉄合金で,鋳造しやすく,また切削加工しやすい材料である。…
…鉄鋼業はしばしば〈産業の米〉といわれる基礎素材としての鉄鋼材を諸産業に供給する基幹産業である。鉄鋼材には純鉄,銑鉄,鋼,フェロアロイ(合金鉄)などがあるが,最も広範に使用されるのは銑鉄と鋼である。銑鉄は炭素含有量1.7%以上であり,固くてもろいので,圧延,鍛造などの加工が困難であるが,融点が低く,溶かして鋳物にするのに適している。…
※「銑鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
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